47 / 181
二章 資金不足と過酷な戦争
46話 高額なので、後払いで
しおりを挟む
「おーい、そこに誰かいるならもう一回返事をしておくれ」
もしかしたら空耳かもしれない。まだ魔獣人はいるのでなるべく小さな声で返事をするように促すと、声が確かに聴こえてきた。ガレキの下だ。
「助けて・・・」
声の張り方からしてまだ元気だ。物音で気づかれない様に丁寧にがれきを退かして救助する。出てきたのは、腰に剣を帯びた見習い騎士の少女だった。
「ありがとうございます・・・貴方達は?」
「通りすがりの商人だ。この村を目指していたら、家事が起きていたので慌ててきたんだけど・・・」
「知っています。私以外は全滅ですよね」
少女は既に理解していた。目元をよく見ると泣き腫らしたような跡がある。既に泣いた後のようだ。
「見ず知らずの人、今日あったばかりの人にお願いする事ではありませんが、どうかわたしのお願いを聞いてはもらえないでしょうか?」
「そのお願いって言うのは?」
「わたしをここから脱出させてください。わたしはここで死ぬわけには行かないんです。皆の為にも」
「皆の為にも・・・君は一体何者なんだい?」
「すみません、それは言う事が出来ません。言ったら貴方達にまで被害が及ぶ事になる」
俺を見る少女騎士の目はまっすぐだった。思わず魅入ってしまう程に美しかった。
そして何故だかは分からない。理由は分からないが、彼女は大成する。そう思ってしまった。
「ここから簡単に逃げ出せる方法を君に与える事が出来るけど、少額のお金を貰うよ」
スキル『買取』と、『透明』について説明すると、彼女はポケットから小さな石を取り出した。
「現金は持っていませんが、母の形見であるこの宝石を担保にしていただく事は可能でしょうか?5000イン程度ですが」
「ほほう、これは宝石の原石ですね。加工して指輪にすれば、2万インにはなりそうですが・・・」
『金額が足りていません』
「やはりそうなりますか」
透明のスキルは7万インで購入した高級品だ。最低販売価格も定められているようだ。これだと彼女にスキルを与える事が出来ない。どうしたものか・・・。
しかしスキルはアイデア次第。工夫次第で彼女にただで透明を与える事が出来るはずだ。
元の世界での生活を思い出せ。俺は会計の時に所持金が無かった場合、何を使う?バーコード決済、クレジットカード・・・それだ!!
「OK!それじゃあ、後払いだ!2か月間支払いが無かった場合は返してもらう!いいね!」
「は、はい!」
瞬間、俺の体から1つの光が飛び出していき、少女騎士の体の中に宿る。彼女の体はみるみるうちに透けていった。
「ありがとうございます優しい商人さん。このお礼はいつか必ず。そして、すぐに逃げてください。魔獣人が行っていました。将軍が到着するって」
最後の忠告はハガネさんの顔色を一気に悪くさせた。
もしかしたら空耳かもしれない。まだ魔獣人はいるのでなるべく小さな声で返事をするように促すと、声が確かに聴こえてきた。ガレキの下だ。
「助けて・・・」
声の張り方からしてまだ元気だ。物音で気づかれない様に丁寧にがれきを退かして救助する。出てきたのは、腰に剣を帯びた見習い騎士の少女だった。
「ありがとうございます・・・貴方達は?」
「通りすがりの商人だ。この村を目指していたら、家事が起きていたので慌ててきたんだけど・・・」
「知っています。私以外は全滅ですよね」
少女は既に理解していた。目元をよく見ると泣き腫らしたような跡がある。既に泣いた後のようだ。
「見ず知らずの人、今日あったばかりの人にお願いする事ではありませんが、どうかわたしのお願いを聞いてはもらえないでしょうか?」
「そのお願いって言うのは?」
「わたしをここから脱出させてください。わたしはここで死ぬわけには行かないんです。皆の為にも」
「皆の為にも・・・君は一体何者なんだい?」
「すみません、それは言う事が出来ません。言ったら貴方達にまで被害が及ぶ事になる」
俺を見る少女騎士の目はまっすぐだった。思わず魅入ってしまう程に美しかった。
そして何故だかは分からない。理由は分からないが、彼女は大成する。そう思ってしまった。
「ここから簡単に逃げ出せる方法を君に与える事が出来るけど、少額のお金を貰うよ」
スキル『買取』と、『透明』について説明すると、彼女はポケットから小さな石を取り出した。
「現金は持っていませんが、母の形見であるこの宝石を担保にしていただく事は可能でしょうか?5000イン程度ですが」
「ほほう、これは宝石の原石ですね。加工して指輪にすれば、2万インにはなりそうですが・・・」
『金額が足りていません』
「やはりそうなりますか」
透明のスキルは7万インで購入した高級品だ。最低販売価格も定められているようだ。これだと彼女にスキルを与える事が出来ない。どうしたものか・・・。
しかしスキルはアイデア次第。工夫次第で彼女にただで透明を与える事が出来るはずだ。
元の世界での生活を思い出せ。俺は会計の時に所持金が無かった場合、何を使う?バーコード決済、クレジットカード・・・それだ!!
「OK!それじゃあ、後払いだ!2か月間支払いが無かった場合は返してもらう!いいね!」
「は、はい!」
瞬間、俺の体から1つの光が飛び出していき、少女騎士の体の中に宿る。彼女の体はみるみるうちに透けていった。
「ありがとうございます優しい商人さん。このお礼はいつか必ず。そして、すぐに逃げてください。魔獣人が行っていました。将軍が到着するって」
最後の忠告はハガネさんの顔色を一気に悪くさせた。
290
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる