大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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一章 クソみたいな女神とクソみたいな異世界転移

第三十五話 幸助の思い

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 魔術師君に目を覚まさせてもらった俺は、その足で彼女が怪我を治しているというアモーラ教の教会へとやってきた。外の花壇に水を与えていた修道女にお願いしてメアリーに会おうとしたのだが──────

「すみません、冒険者様。たった今、メアリーさんが部屋から飛び出して何処かへ行ってしまいました」

「・・・もしかして、俺と会いたくないからかな・・・?」

「いえ、違うと思います。メアリーさんが貴方が来るまでずっと貴方の事を気にしていました。気にして気にして気にし過ぎて・・・ついにはメアリーさん自身が心を病まれてしまい、食事を取らなくなってしまいました。逃げたのも恐らく貴方に罪悪感を抱いているからかと・・・」

 罪悪感・・・何故、全くの被害者である彼女がそんな感情を抱かなくてはいけないのだ。彼女は全く悪くないのに、悪いのは俺なのに。

 そういえば、魔術師君も言っていた。メアリーはあまり心が強くない、と。疑っていたわけではないが、彼のいうう通りだったらしい。そして、彼女の心の病を治せるのは俺だけらしい。

「すぐに見つけだして見せる・・・修道女さん!少し教会を歩きまわりますが、よろしいでしょうか?」

「ええ、是非そうして下さい。私も一緒に探しますので」

 俺が来たと知ってから逃げたと言っていたからまだ遠くには行っていないはず。教会にまだいる可能性が高い。しかし、いつまでも教会にいるとは限らないのですぐに見つけ出さなくてはならない。

「メアリー!いるんだろう?いるなら返事をしてくれ!!」

 ・・・ほとんど無人の教会に俺の声が響く。教会にメアリーがいるのなら確実に聴こえているはずだが、返事はない。

 一番奥の荷物部屋もくまなく探したが、美しい銀髪はどこにも見当たらなかった。

「私が探した場所にはどこにもいませんでした。お力になれずすみません・・・」

「いえ、お気になさらず。ちょっと外の人に話を聞いてみましょう」

 教会を出て、外で遊んでいた子供、ベンチで黄昏ていた老人、子供と散歩をしている夫婦にメアリーの事を聞いてみたが、誰も首を縦には振らなかった。教会の近くには住宅街や、老若男女問わず遊べる広場があり、毎日のように賑わっている。そんな場所を誰にも見られないで通り抜けるのはほぼ不可能。つまり、まだ教会の中にいるのだろう。

 しかし、机の下や、ピアノの下、樽の中を調べてもメアリーは見つかる事は無かった。隅々まで探したが、結メアリーの姿は見当たらず、探すのに体力をかなり使ってしまった幸助は礼拝堂の椅子に座り込んでしまう。

 椅子に座って、前を見ると祈りを捧げる女神アモーラを模した石像が視界に入る。正直言って美しいと思う。とてもじゃないが、俺をパンツ一丁で魔の森に落とした神とは思えないぐらい神々しいし、生きとし生きる者達を見守っているようだ。

「まさか貴女の仕業ではありませんよね?・・・いや、それは流石にあてつけか・・・」

 ラコルト教の証のある右肩を擦りながら、独り言を呟く。

「なあ・・・お願いだ。出てきてくれ。俺は君に謝りたいんだ。君は受ける必要のない痛みを俺のせいで受けてしまった。その事を謝りたいんだ。俺は君に怒りや殺意なんて全く覚えていない。純粋に君に謝罪したい気持ちでいっぱいなんだ」

 目の前には何も変化はない。強いてあるとするなら、ホコリ舞っている事ぐらいか。

「俺は縛られるのは嫌いだ。物理的にも思想的にもそして、精神的にも縛られるのは大嫌いだ・・・まあ、これは前にも話した事あるから知ってるか。じゃあ、まだ言って無い事を教えるよ。俺は自分の自由を制限される事と同じくらい他人の自由を制限するのが大嫌いなんだ。修道女さんから聞いたよ、俺に罪悪感を抱いているんだってな。それってつまり、俺が君を縛ってるって事だよな」

 かなり昔の話になるが、俺は少人数の友達グループのリーダー的な存在だった。何をして遊ぶのかは俺に決定権があったし、誰も俺には反対意見を出してこなかった。ある日、俺は小学校からの下校途中、公園に生えている大きな木を使った木登り大会を実施した。ビリは全員のランドセルを運ぶという可愛らしい罰ゲームを添えて。そしたら皆焦って木をよじ登り始めた。俺は木登りが得意だったから何にも苦労する事なく、ゴールまで昇り終えて高みの見物をしていた。

 その時だった。1人が手を滑らせて地面に落ちてしまったのだ。幸いな事に死ぬ事は無かったが、右腕の骨を折ってしまい、その友達はしばらく遊ぶ事が出来なかった。

 俺は心の底から後悔した。俺が木登りなんて誘わなければこんな事にはならなかったと骨折してしまった友達に死ぬほど謝った。自分が滑らせたせいだからお前は悪くないと言ってくれたが、俺自身が俺を許す事は出来なくなった。

 それ以降、俺はリーダー振るのはやめて、人を縛るのも嫌うようになった。その思いは今でも変わらないし、今後一生変わる事はない。

「頼む。出てきてくれ・・・俺は人を・・・増してや仲間を自分のせいで縛りたくはないんだ。どうか君を解放させてくれないか?」

 心に思っていた気持ちを全て吐き出す。今放った言葉に嘘偽りはなく、全て俺の本心である。これで彼女が姿を現さなかったらもう打つ手はないだろう。

 それから何分経っただろうか?メアリーは結局姿を現さなかった。もう彼女と会う事は出来ないのか・・・。

「遅すぎたか・・・うわぁ!何だ?」

 立ち上がるや否や鼻の先にぴちょんと液体が当たる。雨漏りだろうか?しかし、外は雨は降っておらず、俺の気分とは裏腹に快晴。雨漏りなんてほど遠い天候だった。それに垂れてきた水滴を舐めてみたのだが、少し塩っぽい。屋根裏に塩水でも保管しているのだろうか?

 疑問を抱きながら上を向き、硬直する。だって、天井を見上げたらそこには──────

「ひぐっ・・・えぐっ・・・コウスケさん・・・コウスケさぁん」

 鼻水と涙を真っ赤な顔でボロボロと流す銀髪の美少女が張り付いていたのだから。
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