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1章 就職!異世界の門日本支部!
16話 拍子抜け?否────
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「グォォォォォォォッ!!」
蛇口から噴き出る水のように出るブラッドベア。あまりの痛さに臨戦状態を解き、転げ回る。
できる限りの力と、技術を使って振るった一撃。意識の中でも、断ち切ろうとはしていたが、まさかこんなにも簡単に切断できてしまうとは思いにもよらなかった。
ブラッドベアの腕は、試し斬りを行う際に使用する巻き藁よりも遥かに柔らかくて、すんなりと刃が通った。
「やればできんじゃないの!さっさと留め刺しちゃいなさい!!」
「えっ!?あ、ああ!分かった!!」
驚いて若干放心していた俺の背中をモネさんが叩く。ブラッドべアのあまりの柔らかさに若干の疑問を感じながらも、転げ回った末に仰向けになっているブラッドベアの腹に乗り、喉を貫き殺した。
「良し!よくやった!!リオ人にしてはお手柄じゃないの!!」
「うん・・・でも、なんかおかしくなかった?」
「何もおかしいところなんてないわ。ブラッドベアはザナの森林地帯になら大体住んでる環境に適応しやすい魔物なんだから」
「出現することに対して不思議に思ったんじゃないんだ。問題は強さだよ。人を簡単に食い殺せる魔物なのに、こんなにも簡単に斬れた。こんなにも簡単に殺せた。あまりにも弱すぎるって事だよ」
「つまり・・・アタシが弱いって言いたいのかぁ!?あぁ!?」
何で、そういうことになるかなぁ・・・。
「弱いブラッドベアに劣勢だったアタシは弱いって言いたいのよねぇ!?そうならそうとはっきり言いなさいよこの、バカ!!」
「何で、マイナスで想像するかなぁーー!それにバカはねぇだろ!癇癪爆弾!!」
「癇癪爆弾!?こんな広い心の持ち主をアンタ今癇癪爆弾って言った!?どういう性格してたらそんな言葉がでるわけ!?」
些細な疑問が、勘違いにより火種になり、喧嘩が勃発する。口喧嘩が少しばかり続いたが、埒が明かない為、武器を放り出し、殴り合いで結着をつけようとした瞬間、2人の頭に軽い衝撃が走る。
「くだらない事で喧嘩しないの~。まあ、仲良くなった証拠だけど」
「「仲良くはない!!!」」
「あ、はい」
2人の頭を剣の鞘で小突いたのはシャープに呼ばれてやってきた主任だった。
「ところで、ブラッドベア殺したのは誰?」
「一応、俺です・・・」
「よく倒せたねぇ~!新人でブラッドベア倒せる子はかなりすごいよー!寄生草を一刀両断した時から思ってたけど、やっぱり才能抜群だね!!」
「あはは・・・ありがとうございます・・・」
「それで?今日の喧嘩理由は何かな?」
「ブラッドベアです・・・」
翡翠は殺したブラッドベアが弱かった気がする事を主任に話した。話し終えると、主任は剣を抜き、既に絶命したブラッドベアの残った腕を切断して見せた。
「・・・確かにちょっと柔らかいね。筋肉というよりも贅肉・皮下脂肪って感じかな?食べ過ぎで肥えたにしても、筋肉量が少ない気がするし・・・確かに変な個体ではあるね」
太っていると言われると、確かに腹回りがちょっとプニプニしている気がする。まるで、ロクに運動もせずに家でゲームやってお菓子を何も考えずに食べているデブのような腹だ。
野生で、そうそう簡単には獲物にたどり着けないはずなのに、一体どうやってこんな脂肪をつけたのだろうか。冬眠準備中だったのだろうか。
「冬眠説も否めないけど、やっぱり筋肉の量が少ない・・・ワンチャン飼われてた説も考えた方がいいかもね」
「「飼われてた?」」
「どうして人を食う魔物を育てる必要があるんです?」
「金持ちの悪い趣味、親が死んでしまっているのを知った為の同情ぐらいかな?考えられるのは。後は・・・人を襲わせる為に飼ってた可能性もあるかもね」
最後の仮説は、背筋に悪寒が走る程ゾッとしたが、あり得ない話ではない。狩人だって、仮を手伝わせる為に犬を飼うし。
「も、もし!最後の説が当たってたとしたら、何でアタシ達を襲わせたのかしら・・・」
「注意を引く為じゃないかな?門番である翡翠達の注意を引いているうちに不法入国~!とか?」
「成る程!だとしたら、今頃入口付近でどうしようか迷ってるかもしれませんね!俺があっさり倒しちゃったせいで時間稼ぎもできなかっただろうし!」
まあ、門の近くには誰もいないが。
「おっ。よく分かったね!翡翠、大正解!!皆拍手~パチパチパチ~」
「「「えっ?」」」
「何言ってんだこのお兄さん?って顔だね~。それじゃあ、答え合わせと行きましょう!!『フランマ』!!」
炎の魔術を叫ぶと、主任の手の平に火の玉が生まれる。野球ボールぐらいの火の玉をしっかりとフォームを決め、門に向かって投球。すると、何もない空間が燃え出した。
「アッチャァァァァァァァッ!!」
燃えていた空間は地面に落ち、燃えていた空間からは男性が姿を現す。燃えたのは透明マント。何もない空間が燃えたのではなく、見えない布が燃えたんだ。
「君かぁ・・・デブとはいえ、人喰い魔物のブラッドベアをけしかけたのは・・・」
「ひ、ひぃ!お助けをぉぉ・・・!!」
「人を殺そうとしておいて、情けを要求してくるなんて図々しいやつだねぇー。さぁて、どうしよかっなぁ?」
この後、ブラッドベアをけしかけたと思わしき男性は尋問室へと連れて行かれた。
次に姿を見たのは勤務終了30分前。男性は体も服もボロボロになっていた。放心していた事から、恐らく心もボロボロになっていたと思われる。
蛇口から噴き出る水のように出るブラッドベア。あまりの痛さに臨戦状態を解き、転げ回る。
できる限りの力と、技術を使って振るった一撃。意識の中でも、断ち切ろうとはしていたが、まさかこんなにも簡単に切断できてしまうとは思いにもよらなかった。
ブラッドベアの腕は、試し斬りを行う際に使用する巻き藁よりも遥かに柔らかくて、すんなりと刃が通った。
「やればできんじゃないの!さっさと留め刺しちゃいなさい!!」
「えっ!?あ、ああ!分かった!!」
驚いて若干放心していた俺の背中をモネさんが叩く。ブラッドべアのあまりの柔らかさに若干の疑問を感じながらも、転げ回った末に仰向けになっているブラッドベアの腹に乗り、喉を貫き殺した。
「良し!よくやった!!リオ人にしてはお手柄じゃないの!!」
「うん・・・でも、なんかおかしくなかった?」
「何もおかしいところなんてないわ。ブラッドベアはザナの森林地帯になら大体住んでる環境に適応しやすい魔物なんだから」
「出現することに対して不思議に思ったんじゃないんだ。問題は強さだよ。人を簡単に食い殺せる魔物なのに、こんなにも簡単に斬れた。こんなにも簡単に殺せた。あまりにも弱すぎるって事だよ」
「つまり・・・アタシが弱いって言いたいのかぁ!?あぁ!?」
何で、そういうことになるかなぁ・・・。
「弱いブラッドベアに劣勢だったアタシは弱いって言いたいのよねぇ!?そうならそうとはっきり言いなさいよこの、バカ!!」
「何で、マイナスで想像するかなぁーー!それにバカはねぇだろ!癇癪爆弾!!」
「癇癪爆弾!?こんな広い心の持ち主をアンタ今癇癪爆弾って言った!?どういう性格してたらそんな言葉がでるわけ!?」
些細な疑問が、勘違いにより火種になり、喧嘩が勃発する。口喧嘩が少しばかり続いたが、埒が明かない為、武器を放り出し、殴り合いで結着をつけようとした瞬間、2人の頭に軽い衝撃が走る。
「くだらない事で喧嘩しないの~。まあ、仲良くなった証拠だけど」
「「仲良くはない!!!」」
「あ、はい」
2人の頭を剣の鞘で小突いたのはシャープに呼ばれてやってきた主任だった。
「ところで、ブラッドベア殺したのは誰?」
「一応、俺です・・・」
「よく倒せたねぇ~!新人でブラッドベア倒せる子はかなりすごいよー!寄生草を一刀両断した時から思ってたけど、やっぱり才能抜群だね!!」
「あはは・・・ありがとうございます・・・」
「それで?今日の喧嘩理由は何かな?」
「ブラッドベアです・・・」
翡翠は殺したブラッドベアが弱かった気がする事を主任に話した。話し終えると、主任は剣を抜き、既に絶命したブラッドベアの残った腕を切断して見せた。
「・・・確かにちょっと柔らかいね。筋肉というよりも贅肉・皮下脂肪って感じかな?食べ過ぎで肥えたにしても、筋肉量が少ない気がするし・・・確かに変な個体ではあるね」
太っていると言われると、確かに腹回りがちょっとプニプニしている気がする。まるで、ロクに運動もせずに家でゲームやってお菓子を何も考えずに食べているデブのような腹だ。
野生で、そうそう簡単には獲物にたどり着けないはずなのに、一体どうやってこんな脂肪をつけたのだろうか。冬眠準備中だったのだろうか。
「冬眠説も否めないけど、やっぱり筋肉の量が少ない・・・ワンチャン飼われてた説も考えた方がいいかもね」
「「飼われてた?」」
「どうして人を食う魔物を育てる必要があるんです?」
「金持ちの悪い趣味、親が死んでしまっているのを知った為の同情ぐらいかな?考えられるのは。後は・・・人を襲わせる為に飼ってた可能性もあるかもね」
最後の仮説は、背筋に悪寒が走る程ゾッとしたが、あり得ない話ではない。狩人だって、仮を手伝わせる為に犬を飼うし。
「も、もし!最後の説が当たってたとしたら、何でアタシ達を襲わせたのかしら・・・」
「注意を引く為じゃないかな?門番である翡翠達の注意を引いているうちに不法入国~!とか?」
「成る程!だとしたら、今頃入口付近でどうしようか迷ってるかもしれませんね!俺があっさり倒しちゃったせいで時間稼ぎもできなかっただろうし!」
まあ、門の近くには誰もいないが。
「おっ。よく分かったね!翡翠、大正解!!皆拍手~パチパチパチ~」
「「「えっ?」」」
「何言ってんだこのお兄さん?って顔だね~。それじゃあ、答え合わせと行きましょう!!『フランマ』!!」
炎の魔術を叫ぶと、主任の手の平に火の玉が生まれる。野球ボールぐらいの火の玉をしっかりとフォームを決め、門に向かって投球。すると、何もない空間が燃え出した。
「アッチャァァァァァァァッ!!」
燃えていた空間は地面に落ち、燃えていた空間からは男性が姿を現す。燃えたのは透明マント。何もない空間が燃えたのではなく、見えない布が燃えたんだ。
「君かぁ・・・デブとはいえ、人喰い魔物のブラッドベアをけしかけたのは・・・」
「ひ、ひぃ!お助けをぉぉ・・・!!」
「人を殺そうとしておいて、情けを要求してくるなんて図々しいやつだねぇー。さぁて、どうしよかっなぁ?」
この後、ブラッドベアをけしかけたと思わしき男性は尋問室へと連れて行かれた。
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