異世界と繋がる不思議な門を警備する仕事に就きしました!

町島航太

文字の大きさ
17 / 191
1章 就職!異世界の門日本支部!

16話 拍子抜け?否────

しおりを挟む
「グォォォォォォォッ!!」

 蛇口から噴き出る水のように出るブラッドベア。あまりの痛さに臨戦状態を解き、転げ回る。

 できる限りの力と、技術を使って振るった一撃。意識の中でも、断ち切ろうとはしていたが、まさかこんなにも簡単に切断できてしまうとは思いにもよらなかった。

 ブラッドベアの腕は、試し斬りを行う際に使用する巻き藁よりも遥かに柔らかくて、すんなりと刃が通った。

「やればできんじゃないの!さっさと留め刺しちゃいなさい!!」

「えっ!?あ、ああ!分かった!!」

 驚いて若干放心していた俺の背中をモネさんが叩く。ブラッドべアのあまりの柔らかさに若干の疑問を感じながらも、転げ回った末に仰向けになっているブラッドベアの腹に乗り、喉を貫き殺した。

「良し!よくやった!!リオ人にしてはお手柄じゃないの!!」

「うん・・・でも、なんかおかしくなかった?」

「何もおかしいところなんてないわ。ブラッドベアはザナの森林地帯になら大体住んでる環境に適応しやすい魔物なんだから」

「出現することに対して不思議に思ったんじゃないんだ。問題は強さだよ。人を簡単に食い殺せる魔物なのに、こんなにも簡単に斬れた。こんなにも簡単に殺せた。あまりにも弱すぎるって事だよ」

「つまり・・・アタシが弱いって言いたいのかぁ!?あぁ!?」

 何で、そういうことになるかなぁ・・・。

「弱いブラッドベアに劣勢だったアタシは弱いって言いたいのよねぇ!?そうならそうとはっきり言いなさいよこの、バカ!!」

「何で、マイナスで想像するかなぁーー!それにバカはねぇだろ!癇癪爆弾!!」

「癇癪爆弾!?こんな広い心の持ち主をアンタ今癇癪爆弾って言った!?どういう性格してたらそんな言葉がでるわけ!?」

 些細な疑問が、勘違いにより火種になり、喧嘩が勃発する。口喧嘩が少しばかり続いたが、埒が明かない為、武器を放り出し、殴り合いで結着をつけようとした瞬間、2人の頭に軽い衝撃が走る。

「くだらない事で喧嘩しないの~。まあ、仲良くなった証拠だけど」

「「仲良くはない!!!」」

「あ、はい」

 2人の頭を剣の鞘で小突いたのはシャープに呼ばれてやってきた主任だった。

「ところで、ブラッドベア殺したのは誰?」

「一応、俺です・・・」

「よく倒せたねぇ~!新人でブラッドベア倒せる子はかなりすごいよー!寄生草を一刀両断した時から思ってたけど、やっぱり才能抜群だね!!」

「あはは・・・ありがとうございます・・・」

「それで?今日の喧嘩理由は何かな?」

「ブラッドベアです・・・」

 翡翠は殺したブラッドベアが弱かった気がする事を主任に話した。話し終えると、主任は剣を抜き、既に絶命したブラッドベアの残った腕を切断して見せた。

「・・・確かにちょっと柔らかいね。筋肉というよりも贅肉・皮下脂肪って感じかな?食べ過ぎで肥えたにしても、筋肉量が少ない気がするし・・・確かに変な個体ではあるね」

 太っていると言われると、確かに腹回りがちょっとプニプニしている気がする。まるで、ロクに運動もせずに家でゲームやってお菓子を何も考えずに食べているデブのような腹だ。

 野生で、そうそう簡単には獲物にたどり着けないはずなのに、一体どうやってこんな脂肪をつけたのだろうか。冬眠準備中だったのだろうか。

「冬眠説も否めないけど、やっぱり筋肉の量が少ない・・・ワンチャン飼われてた説も考えた方がいいかもね」

「「飼われてた?」」

「どうして人を食う魔物を育てる必要があるんです?」

「金持ちの悪い趣味、親が死んでしまっているのを知った為の同情ぐらいかな?考えられるのは。後は・・・人を襲わせる為に飼ってた可能性もあるかもね」

 最後の仮説は、背筋に悪寒が走る程ゾッとしたが、あり得ない話ではない。狩人だって、仮を手伝わせる為に犬を飼うし。

「も、もし!最後の説が当たってたとしたら、何でアタシ達を襲わせたのかしら・・・」

「注意を引く為じゃないかな?門番である翡翠達の注意を引いているうちに不法入国~!とか?」

「成る程!だとしたら、今頃入口付近でどうしようか迷ってるかもしれませんね!俺があっさり倒しちゃったせいで時間稼ぎもできなかっただろうし!」

 まあ、門の近くには誰もいないが。

「おっ。よく分かったね!翡翠、大正解!!皆拍手~パチパチパチ~」

「「「えっ?」」」

「何言ってんだこのお兄さん?って顔だね~。それじゃあ、答え合わせと行きましょう!!『フランマ』!!」

 炎の魔術を叫ぶと、主任の手の平に火の玉が生まれる。野球ボールぐらいの火の玉をしっかりとフォームを決め、門に向かって投球。すると、何もない空間が燃え出した。

「アッチャァァァァァァァッ!!」

 燃えていた空間は地面に落ち、燃えていた空間からは男性が姿を現す。燃えたのは透明マント。何もない空間が燃えたのではなく、見えない布が燃えたんだ。

「君かぁ・・・デブとはいえ、人喰い魔物のブラッドベアをけしかけたのは・・・」

「ひ、ひぃ!お助けをぉぉ・・・!!」

「人を殺そうとしておいて、情けを要求してくるなんて図々しいやつだねぇー。さぁて、どうしよかっなぁ?」

 この後、ブラッドベアをけしかけたと思わしき男性は尋問室へと連れて行かれた。

 次に姿を見たのは勤務終了30分前。男性は体も服もボロボロになっていた。放心していた事から、恐らく心もボロボロになっていたと思われる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...