22 / 191
1章 就職!異世界の門日本支部!
21話 対立
しおりを挟む
「ど、どうしたの?こんな夜中に?何かあった?」
「ああ、ちょっとね・・・悪いんだけど、中に入れてもらえないかな?」
難民25人は一応透明マントで姿を隠しているが、気配が消えるわけでもなければ、物理的に消えるわけではない。密集状態の場合、すぐにバレてしまう。
しかし、ここで中に入れなければ怪しまれるだけだ。それ以前にどうしてヒスイはここに来たんだ?もしかして、バレていたのか?
「ちょっと部屋が散らかってるから、玄関前なら良いよ」
「・・・うん、ありがとう」
ヒスイの目的は部屋に入る事ではなく、あくまでも話をする事らしい。僕は胸を撫で下ろし、扉を開けた。
「それで?なんの用かな?電話じゃなくて、直接会いに来るぐらいなんだから、かなり重要な事なんでしょう?」
「そうなんだよ。今、主任から電話がかかってきてね。どうやら、俺達の勤務時間中に違法に入国した者がいるらしいんだ」
案の定、主任にはバレてしまったようだ。色々な面で有能な彼の事だから、些細な違和感で気づいたのだろう。
それは大した問題ではない。いずれバレていたのだろうから。問題は、その連絡が僕の方には来ていない事だ。
「だとしたら、大変だけど・・・僕の方には連絡が来てないよ?」
「そりゃそうだ。俺にしか連絡してないらしいからな。1人で秘密裏に済ませてほしいらしいんだ」
良かった、バレた訳では無さそうだ・・・ん?なら何故僕のところに来た?
「だとしたらその事を僕に教えちゃまずいんじゃないのかな?1人でやれって言われてんでしょ?」
「うん。でも、俺だけじゃ無理だ。難民は合計で25人。そんな数、俺には到底捕まえきれない」
「それで僕に手伝いを要請しにきたの?」
「そんな所だ。頼めるか?」
「・・・分かった!この前のB急グルメの恩もあるしね!勿論手伝うよ!待ってて、今剣持ってくるから!」
剣は居間に置いてある。取りに行くと同時に難民に待機しているように頼もう。
体を180度回転させて、居間へと向かう。しかし、それをヒスイが阻止してきた。
「何故、武器を持ってくる必要があるんだい?」
「え?だって、そりゃあ、難民の中には危険な奴や、戦闘技術を持った奴だっているだろうし、最低限の武装はしていった方が良いだろう?」
「そんな必要はないさ」
何を言っているんだ?ヒスイは?
「君がこの部屋で匿っている難民をこちらに渡してくれれば済む話だろう?」
この発言が耳に入った瞬間、背筋が凍った感覚に襲われる。脳みそが危険と察知したのだろう。体は指示もしていないのに、ヒスイの手を振り払い、居間へと走り出していた。
★
シャープと別れてから数分後、家の前に着いた時に、主任から電話がかかってきた。こんな夜更けにどうしたのだろう?と思いながらも、重要な任務の可能性があった為、すぐに出た。
結論から言うと、とても重要な話だった。難民の不法入国を許してしまったという。夜勤の門番の人達は持ち場を離れることができない為、俺に連絡が行ったという。
だが、見つけようにも場所がわからない。その旨を話すと、主任は低い声で言ってきた。
「シャープだ、シャープの家に行け。そこに残りの24人がいる」
意味が分からなかった。何で彼の家にいる?不法入国者を許してはいけない職に就く彼の家に何故不法入国者がいる?
そもそも、何故侵入を許してしまった?俺達と夜勤組の人達が入れ替わるタイミングで侵入したと主任は言っている。確かにその時間は1番警戒が薄くなっている時間だ。しかし、警戒を怠ってはいない。あの時、確かにシャープが監視を──────
「あ────」
点と点が繋がった。信じたくはない。たった1ヶ月しか共に仕事をしていないが、冗談が言い合える友を疑いたくはない。しかし、彼が誘導していた場合、難民は簡単に不法入国ができるのでは?という考えがよぎってしまう。
シャープはとても優しい男だ。とっくの昔に枯れ果てた門付近の草木を見て悲しむ程に慈悲深い男だ。彼はきっと、同情してしまったのだろう。自分と似た境遇にいる難民達に。
手を差し伸べたいと思ってしまったのだろう。俺だって、門番という立場でなければそうしてしまうかもしれない。
だが!俺は門番だ。難民に救いの手を述べる者ではなく、リオに住む者の平穏を守る門番だ。
主任の話が本当だった場合、俺は彼の蛮行を止めなければならない。
決意を固めた俺は、唾を一度飲み、主任に返答した。
「分かりました・・・すぐに向かいます」
「オレも警察を要請してからすぐに向かう。それまで持ち堪えてくれ。友人と対立するのは精神的に辛いと思う。けど、平和的解決をするには、友人である翡翠の力が必要だ・・・頼む」
「はい、勿論です。俺もそれを望んでいますので」
「ああ、ちょっとね・・・悪いんだけど、中に入れてもらえないかな?」
難民25人は一応透明マントで姿を隠しているが、気配が消えるわけでもなければ、物理的に消えるわけではない。密集状態の場合、すぐにバレてしまう。
しかし、ここで中に入れなければ怪しまれるだけだ。それ以前にどうしてヒスイはここに来たんだ?もしかして、バレていたのか?
「ちょっと部屋が散らかってるから、玄関前なら良いよ」
「・・・うん、ありがとう」
ヒスイの目的は部屋に入る事ではなく、あくまでも話をする事らしい。僕は胸を撫で下ろし、扉を開けた。
「それで?なんの用かな?電話じゃなくて、直接会いに来るぐらいなんだから、かなり重要な事なんでしょう?」
「そうなんだよ。今、主任から電話がかかってきてね。どうやら、俺達の勤務時間中に違法に入国した者がいるらしいんだ」
案の定、主任にはバレてしまったようだ。色々な面で有能な彼の事だから、些細な違和感で気づいたのだろう。
それは大した問題ではない。いずれバレていたのだろうから。問題は、その連絡が僕の方には来ていない事だ。
「だとしたら、大変だけど・・・僕の方には連絡が来てないよ?」
「そりゃそうだ。俺にしか連絡してないらしいからな。1人で秘密裏に済ませてほしいらしいんだ」
良かった、バレた訳では無さそうだ・・・ん?なら何故僕のところに来た?
「だとしたらその事を僕に教えちゃまずいんじゃないのかな?1人でやれって言われてんでしょ?」
「うん。でも、俺だけじゃ無理だ。難民は合計で25人。そんな数、俺には到底捕まえきれない」
「それで僕に手伝いを要請しにきたの?」
「そんな所だ。頼めるか?」
「・・・分かった!この前のB急グルメの恩もあるしね!勿論手伝うよ!待ってて、今剣持ってくるから!」
剣は居間に置いてある。取りに行くと同時に難民に待機しているように頼もう。
体を180度回転させて、居間へと向かう。しかし、それをヒスイが阻止してきた。
「何故、武器を持ってくる必要があるんだい?」
「え?だって、そりゃあ、難民の中には危険な奴や、戦闘技術を持った奴だっているだろうし、最低限の武装はしていった方が良いだろう?」
「そんな必要はないさ」
何を言っているんだ?ヒスイは?
「君がこの部屋で匿っている難民をこちらに渡してくれれば済む話だろう?」
この発言が耳に入った瞬間、背筋が凍った感覚に襲われる。脳みそが危険と察知したのだろう。体は指示もしていないのに、ヒスイの手を振り払い、居間へと走り出していた。
★
シャープと別れてから数分後、家の前に着いた時に、主任から電話がかかってきた。こんな夜更けにどうしたのだろう?と思いながらも、重要な任務の可能性があった為、すぐに出た。
結論から言うと、とても重要な話だった。難民の不法入国を許してしまったという。夜勤の門番の人達は持ち場を離れることができない為、俺に連絡が行ったという。
だが、見つけようにも場所がわからない。その旨を話すと、主任は低い声で言ってきた。
「シャープだ、シャープの家に行け。そこに残りの24人がいる」
意味が分からなかった。何で彼の家にいる?不法入国者を許してはいけない職に就く彼の家に何故不法入国者がいる?
そもそも、何故侵入を許してしまった?俺達と夜勤組の人達が入れ替わるタイミングで侵入したと主任は言っている。確かにその時間は1番警戒が薄くなっている時間だ。しかし、警戒を怠ってはいない。あの時、確かにシャープが監視を──────
「あ────」
点と点が繋がった。信じたくはない。たった1ヶ月しか共に仕事をしていないが、冗談が言い合える友を疑いたくはない。しかし、彼が誘導していた場合、難民は簡単に不法入国ができるのでは?という考えがよぎってしまう。
シャープはとても優しい男だ。とっくの昔に枯れ果てた門付近の草木を見て悲しむ程に慈悲深い男だ。彼はきっと、同情してしまったのだろう。自分と似た境遇にいる難民達に。
手を差し伸べたいと思ってしまったのだろう。俺だって、門番という立場でなければそうしてしまうかもしれない。
だが!俺は門番だ。難民に救いの手を述べる者ではなく、リオに住む者の平穏を守る門番だ。
主任の話が本当だった場合、俺は彼の蛮行を止めなければならない。
決意を固めた俺は、唾を一度飲み、主任に返答した。
「分かりました・・・すぐに向かいます」
「オレも警察を要請してからすぐに向かう。それまで持ち堪えてくれ。友人と対立するのは精神的に辛いと思う。けど、平和的解決をするには、友人である翡翠の力が必要だ・・・頼む」
「はい、勿論です。俺もそれを望んでいますので」
3
あなたにおすすめの小説
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる