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1章 就職!異世界の門日本支部!

27話 償い

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「そ、そんなのできるわけないじゃない!一瞬で敵を100分割なんて!」

「ノンノン!一瞬じゃなくて3秒!100分割じゃなくて、128分割!」

「やかましい!バケモノなのは変わりないわ!!ていうかアタシ達がピンチになるまで今までどこで油を売ってたわけ!?」

 ドッペルゲンガーが完全に死亡して安心したからか、モネは主任に対して怒りの限りをぶつけた。

「いやぁ!実はオレにも全然理由が分からなくってさ!シャープの家に向かおうとしてたら、いつの間にか同じ所をぐるぐると回ってたんだよ~」

「魔術の類ですかね?」

「いや、多分ドッペルゲンガーの能力だと思う。死んじゃった以上調べようがないけど、25体もいたなら、地形とか変えられるんじゃないのかな?」

 ドッペルゲンガーがいまだに全貌が明らかとなっていない魔物だ。そういう能力も所持しているのかもしれない。

「オレがギリギリで駆けつけれたのは、ドッペルゲンガー限界か、合体にリソースを割いちゃったからだろうね。どっちにしろ、間一髪だったよ!」

「よく合体してるって分かりましたね」

「ドッペルゲンガーは他の生物と同じで、上半身と下半身に分けられてたら普通死んでるからね。それでも死ななかったなら、合体して全体的に力を高めてるしか考えられないのさ」

 そんな事、図鑑や資料には書いていなかったし、インターネットにも掲載されていなかった。世間一般には公開されていない情報を何故、主任が知っているんだ?

「オレって顔広い上に人脈がタンポポの根っこみたいに長くて太いんだよね~。魔物を研究してる学者さんともお知り合いで、先行で未公開の知識を教えてもらう事が出来るんだ~」

 仕事以外の時間、何をしているのか分からない主任。そんな側面がなるだなんて知る由も無かった。

「・・・ん?あれ?ドッペルゲンガーは?」

 主任の説明が終わった所で、深傷を負って眠りについていた翡翠が目を覚ます。傷は既に埋まっているが、痛みは残っているらしく、右胸を押さえながら上半身だけ立ち上がった。

「あ、翡翠。おはよ~。いきなりの残業だったのによく頑張ったね~。点数で言うと90点かな?」

「100点・・・ではないですよね。完全に油断してましたし。傷は主任が治してくれたんですか?」

「せっかくの有能な部下に死なれたら門番側の損失だからね~。出血量が酷くなる前に治せて良かったよ~。まあ、今回の騒動はそんな有能かつ優秀な部下の1人が起こした騒動なんだけどね~?」

「・・・・・・」

 主任の目線がシャープの方へ向けられる。鷹のように鋭い目つきがシャープを睨みつけるが、彼は臆する事なく首を縦に振った。

「刑罰を受ける覚悟ができています。どうか裏切り者の僕を裁いて下さい」

「・・・下で警官が待ってる。そこまではオレが連れて行くよ」

 シャープの両手首に手錠をかけ、部屋から出し、階段を降りて行く。地上からはパトカーの赤色灯がマンション全体を照らしている。

 パトカーがシャープを乗せてマンションを去るまで、2人は8階からその様子を見守るようにじっと見つめていた。
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