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2章 亡命者は魔王の娘!?

プロローグⅡ

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 豪雨により、視界が阻害され、地面がぬかるみ歩きづらい山道で2人の魔族が足取りを止め、倒木に寄りかかっていた。

「い、良いですか?姫、貴女さえ・・・貴女様さえ生き残れば、我々の勝ちです・・・私の事は気にせず、へ向かって下さい・・・」

 1人は男の兵士で、もう1人は外套で身を隠した少女。兵士の方は戦いの影響か、左腕は曲がってはいけない方向に曲がり、右足は欠損している。

 少女の方はそんな兵士を何とか持ち上げようと努力するが、疲労と足場の悪さで苦戦している。

「あと少しなんでしょ!それなら、わたしが背負うから!!」

「も、門までは残り50キロ・・・。私を背負ってなんかいたらに捕まってしまいます。ですから、貴女1人で・・・」

「問題ないわ!だって、わたしは魔王の娘!貴方1人ぐらい楽勝──────」

「現実を見てください!!心苦しいのは分かります!ですが、ここで私を捨てなければ!貴女だけじゃない!魔族のほとんどがまた、他種族の敵になります。ですから・・・お逃げ下さい・・・貴女様は我々の希望なのです・・・」

 兵士の目には涙が浮かんでいた。恐怖が垣間見えた。捨てていけと言っているが、死が怖いのだろう。

「私達が通ってきた道・・・後ろを見てください。白い光が見えるでしょう?」

 振り返ると、白くて丸い光が3つゆらゆらと揺れている。

「キャンベル騎士団のランプの光です。もう既に追いつかれているのです・・・」

 雨が地面を打つ音の奥から、金属の鋭い音が聞こえてくる。剣を抜く音だ。気づいた兵士は持っていた槍を杖にし、一本の足と一本の腕の力で立ち上がった。

「ここが、私の・・・最後の花道です。邪魔をするなら、姫だろうが許しません・・・」

 自分をおいて活かせる口実作りである。少女も涙を流し、拒否を意を示したが、兵士の意思は揺らがず。

 少女は雨にも負けないほどの涙を流しながら、山を下り、門を目指した。

「リオ・・・一体どんな世界なんでしょうね?キャンベル騎士団の皆さん?」
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