異世界と繋がる不思議な門を警備する仕事に就きしました!

町島航太

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2章 亡命者は魔王の娘!?

7話 問題は1つ起きたら、また1つ生まれる。

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「おぉーい。何だか大きな音がしたけど、どうしたの~?」

 主任が目を擦りながら、爆発と飛来物ですっかり荒れ果てた門前に現れる。

 目を擦っている事から、多分寝ていたのだろう。慣れない事をするからだ。

「うぉっ!めちゃくちゃじゃーん!一体どうしたらこうなるわけ!?よく見たらザナの門番もいるし・・・けど、概ね方が付いたみたいだね~」

 倒れる3人の銀製鎧の騎士を見て納得する。流石はオレの部下達と言わんばかりに胸を張っているが、その部下達からは冷たい目で見られている。

「主任、質問よろしいでしょうか」

「いいよん♪」

「この娘が主任が言っていた亡命者なのでしょうか?」

「ん?どれどれ~?」

 俺の後ろに隠れる魔族の少女の顔を覗き込むように確認。

 数秒凝視すると、主任は少女に対して跪いた。

「お初にお目にかかります。王女リリック様。此度は長旅ご苦労様です」

 初めて見る主任の態度に驚く一同。そして、やはりこの娘は王女だったのか。

「・・・表を上げよ。そなたがこの門を守る者達の頭で良いのか?」

「作用でございます。貴女様が大変だった時に駆けつける事が出来ず申し訳ございません。お怪我等はございませんでしたか?」

「怪我に関しては大丈夫。貴方の部下の方達が助けてくれましたので」

 王女リリックは180度回転し、俺らの方を振り向くと、綺麗なお辞儀を見せつけて俺達への感謝の気持ちを伝えた。

「ありがとうございます、皆さま。皆さまがいなければ今頃私はあの騎士達に捕まっていたでしょう」

「いやいや、それほどでも・・・」

「ただの仕事よ。感謝しなくても良いわ」

「あ、あはは・・・」

 仕事であれ、特別給料がもらえるとは言え、魔族に対する嫌悪は消えないようで、王女リリックの目を見て会話したのは翡翠しかいなかった。

 王女リリックはその反応が当たり前。嫌われて当然と思われているのか、あまり気にしてはおらず、逆に何の嫌悪感も顔に出さない翡翠に興味を向けた。

「そこの緑の瞳の方。私の最初に助けてくれた門番さん。少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「はい、何でしょう?」

「何故、私の事を怖がらないんですか?」

「俺、リオ人なんで。千年戦争の事は教科書とか本の知識でしか無いんですよ。だから、魔族に対する怒りとか嫌悪とかは無いんですよねぇっ!?」

「!!??」

 脳天に固い物がぶつかってくる。何だと思い、上を見上げてみると、モネさんが俺に対して拳骨をお見舞いしていた。

「イタイ!何すんの!モネさん!」

「アンタねぇ!バカ正直に答えんな!デリカシーってもんが無い訳!?あと、アタシ達が気まずくなるから!」

「嘘言っても何にもならねぇから正直に言ったんだよ!これからしばらくこのリオで暮らすのに、ファーストコンタクトが嘘って嫌だろ!」

「アタシが言ってんのは嘘を言えって事じゃないの!千年戦争の事を口に出すのは止めなさいって言ってるわけ!魔族でも気にしてる人はいるんだから!」

 口では魔族の事をあまり良く思っていない事を語っていたモネも魔族が傷つく発言自体には気を付けている模様。

 現在の魔族の98%が共存賛成派になっている為か、千年戦争における魔族の蛮行を嫌っている者が多いのだ。なので、魔族と会話する時は千年戦争の話題を出すのはタブーとなっている。

 しかし、タブー扱いしているのはあくまでザナでの話。千年戦争が無かったリオでは、そんなタブーは存在しない。そもそも、リオに魔族があまりいないのもあるだろう。

 その為、事情を知らなかった翡翠には王女リリックを傷つけようとする意思は無かったものの、その発言が彼女を傷つけたのは事実・・・なのだが。

「いいえ、気にしないでください。リオとザナでは常識が違う事も勉強済みだし、貴方に私を傷つけるつもりがない事も分かってるから」

 王女リリックも翡翠に悪意が無い事を目で理解しており、不快さは無かった模様。シャープとモネはホッと息をついた。

「王女様。いくつかの質問をよろしいでしょうか?」

 無事を確認できたのは良い。その次の確認事項に移行しなければならない。先程の大爆発はなんだったのか?あの騎士は何者だったのか?などだ。

「えっと・・・その前に、そろそろ真面目モードを解いてもよろしいでしょうか?」

「え?あ、はい・・・どうぞ」

「ふう、良かった。一応作法として学んだけど、堅苦しいの好きじゃないのよね・・・あ、皆もそこまでかしこまらなくて良いから!」

 先程も気品高いお嬢様は何処へ行ったのやら。王女リリックは年相応の喋り方に変化する。何となく喋り方頑張ってるんだなとは思っていたが、まさかこんなにも早く通常の喋り方に戻るとは思わなかった。

「王女って言ってもわたしの場合は初代が偉いだけだから!どうか気を使わないで頂戴」

「はぁ・・・」

「それで?質問って何?」

「ええと、まずあの爆発は一体何だったんでしょうか?」

「あの爆発は・・・ごめん、わたし」

 目を反らし、大層申し訳なさそうに申告している様子から反省はしている模様。逆に別の犯人がいたらそっちもそっちで調べなければならなかったので、教えてくれて助かる。

「でも、ちゃんと理由はあるんだよ?あの騎士達に牽制する為にちょっと驚かそうと思ったのそしたら、調整できずにぶっぱはしちゃった☆」

「あーね」

 ファーストコンタクトの際、俺を吹き飛ばしたのは警戒だけでなく制御できなかったからだろう。

「それで?あの騎士は何なの?身代金目当てにしちゃあ鎧が豪華だったけど」

「・・・分からない。わたしの命を狙っているヤツラとしか言いようが無い」

「あれ?そういえば倒れてる騎士は?いないですけど、主任が持っていきました?僕は何もしてないですけど・・・」

「うんにゃ、オレは何も?」

「え?じゃあ・・・逃げた?」

 シャープの指さす先には騎士が地面でおねんねしていたはずなのだが、誰もいないし、何も無い。逃げられたようだ。

 完全に気絶させたと認識し、油断していた事もあった。

 だが、鎧という動けば音の出る物を纏いながら俺達門番の監視を掻い潜ったというのか?

 つい1分前は確かに倒れていたのでまだ、近くに潜伏しているはずだ。

「すぐに見つけ出す。モネさんとシャープは気絶してるザナの門番起こしてあげて。体調が大丈夫そうだったら手伝わせよう」

 この後、3時間に及ぶ大捜査が始まったが、満身創痍のはずの騎士3人どころか、足跡すら見つからなかった。
 
 これ以上探しても時間の無駄という主任の決断が下された為、捜査は打ち切られてしまった。
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