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2章 亡命者は魔王の娘!?
14話 無垢な少女は眠りにつく
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★
「ふぅ、美味しかった・・・」
食べ終わる頃にはリリックは泣き止み、幸せそうにお腹をさすっていた。魔族がどのくらい食べるか分からなかったので、俺らと変わらない量を提供したが、どうやら正解だった模様。
腹も満たされ、体も綺麗になり、仮ではあるものの、寝床に手に入ったのが今のリリックだ。しかし、何処か寂しいそうな・・・満足していないのは何故だろうか。
理由はリリック自身が自ら答えてくれた。
「リオに亡命するにあたって、一番近い門が二ホンだったんだけど、それでもわたしの国からはかなりの距離があったの。だから、どうしてもわたしだけじゃ門まで辿り着けなかった」
リリックはとてつもない魔力を有しているが、制御できない為、ほとんど役に立たないも同然。刺客の魔の手を回避しながら逃げるには、護衛が必要不可欠だろう。
しかし、門にやってきたのは彼女のみ。つまり護衛は死んだという事だろう。
だから、罪悪感と疑問を感じているんだ。皆が自分の命の為に死んだのにこんな幸せな思いをして良いのか?と。
そう考えしまう気持ちは少しだけわかる気がする。道徳を有しているなら尚更だ。
だけど、こう考える事も出来るはずだ。
「死んでいった人達の分まで幸せになる。使命を果たす。そう思えば良いんじゃないかな?」
「それで・・・本当に良いのかな?」
他人に言われて割り切るのは非常難しいだろう。時間をかけてゆっくりと受け入れてもらおう。
「・・・ところでリリック。君を襲った銀の鎧の騎士覚えてるよね?」
「うん!それがどうしたの?」
「今、ザナ側が懸命に探してるんだけど、一向に見つからなくて・・・何でも良いから情報をくれないかな?」
「・・・ごめんなさい。わたしもただ追われてただけだからあの人達の身分は全く知らないの」
「いやいや、そんなに申し訳なさそうにしなくて大丈夫だよ!あくまで情報持ってたら嬉しいな~ぐらいだったから!」
「そう?でも、お役に立てなかったのは事実。どうか許してちょうだい」
「許すも何も君は悪い事はしてない。してないから許しなんて乞わなくて良いのさ」
申し訳なさそうに俯くリリックの頭を撫で、慰める。
俺の質問に答える時、ほんの数秒ではあるが、目が泳ぎ、少し何かを考えていた。
思い出そうとしていたにしては、挙動不審だったし、考える時間があまりにも短かった。
憶測に過ぎないが、リリック・シング・レッドシンは俺達に何かを隠している。
更に憶測だが、その隠し事こそ彼女を追っている騎士達の正体に迫る重要な情報だと思われる。
主任に頼まれてしまった以上、彼女から聞き出さなければならない。
翡翠がリリックを預かる事が決まった時、翡翠は主任からチャットアプリで極秘の指令を受けた。
それこそがリリックの隠し事を聞き出す事。彼女との親密度を上げてら秘密を教えてもらえと指示を出したのだ。
(一体君は何を隠しているんだ?リリック・・・)
俺は君の心が読みたい。何を隠しているんだ?今、何を考えているんだ?どうか口に出して教えてほしい。
「ふわぁぁ・・・ねむい・・・」
俺の心の声が聞こえたのだろうか。思った答えとは違ったが、彼女は欠伸をしながら今やりたい事を口にした。
「ちょっと早いけど寝ようか。少し待ってて。来客用の布団出すから」
あまり使用していない為、品質は良いはずだ。王族である彼女も不満は多分言わないはず・・・。
「わたしは・・・ううん、何でもない。どこにそれはあるの?自分の使う物は自分で出せるようにしておきたい!」
「そこの押し入れに入ってるよ」
リリックに布団の場所や敷き方を教える。教えると言っても、ただ広げるだけなので、教えるとは言い難いが。
布団を敷くのを見ていると、自分も段々目蓋が重くなってきた。今日は特殊な侵入者への対応もあったから疲れていたのだろう。
「モネ。悪いけど、先に寝るね。漫画読みたいなら今のうちに取っていって」
「アタシも寝るから平気。リリック、何かあったら言いなさい。そいつも一応男だから」
「俺をそこら辺のケダモノみたいに言わないでほしいな。それに、もしそんな雰囲気になったとしても、法律が俺を止めてくれるよ」
魔族が苦手だとか言っておいて何だかんだリリックに優しいモネさん。この調子なら、しばらく3人体制でも上手くやっていけそうだ。
「それじゃ、おやすみ」
天井から部屋を照らす電球の電気を消し、ベッドに入る。長旅で疲れたのだろう。数分後にはリリックの寝息が聞こえてきた。
睡眠を確認した俺も目を閉じて睡眠を開始する。疲れもあってか、すぐに眠りに付くことに成功する。
「ふぅ、美味しかった・・・」
食べ終わる頃にはリリックは泣き止み、幸せそうにお腹をさすっていた。魔族がどのくらい食べるか分からなかったので、俺らと変わらない量を提供したが、どうやら正解だった模様。
腹も満たされ、体も綺麗になり、仮ではあるものの、寝床に手に入ったのが今のリリックだ。しかし、何処か寂しいそうな・・・満足していないのは何故だろうか。
理由はリリック自身が自ら答えてくれた。
「リオに亡命するにあたって、一番近い門が二ホンだったんだけど、それでもわたしの国からはかなりの距離があったの。だから、どうしてもわたしだけじゃ門まで辿り着けなかった」
リリックはとてつもない魔力を有しているが、制御できない為、ほとんど役に立たないも同然。刺客の魔の手を回避しながら逃げるには、護衛が必要不可欠だろう。
しかし、門にやってきたのは彼女のみ。つまり護衛は死んだという事だろう。
だから、罪悪感と疑問を感じているんだ。皆が自分の命の為に死んだのにこんな幸せな思いをして良いのか?と。
そう考えしまう気持ちは少しだけわかる気がする。道徳を有しているなら尚更だ。
だけど、こう考える事も出来るはずだ。
「死んでいった人達の分まで幸せになる。使命を果たす。そう思えば良いんじゃないかな?」
「それで・・・本当に良いのかな?」
他人に言われて割り切るのは非常難しいだろう。時間をかけてゆっくりと受け入れてもらおう。
「・・・ところでリリック。君を襲った銀の鎧の騎士覚えてるよね?」
「うん!それがどうしたの?」
「今、ザナ側が懸命に探してるんだけど、一向に見つからなくて・・・何でも良いから情報をくれないかな?」
「・・・ごめんなさい。わたしもただ追われてただけだからあの人達の身分は全く知らないの」
「いやいや、そんなに申し訳なさそうにしなくて大丈夫だよ!あくまで情報持ってたら嬉しいな~ぐらいだったから!」
「そう?でも、お役に立てなかったのは事実。どうか許してちょうだい」
「許すも何も君は悪い事はしてない。してないから許しなんて乞わなくて良いのさ」
申し訳なさそうに俯くリリックの頭を撫で、慰める。
俺の質問に答える時、ほんの数秒ではあるが、目が泳ぎ、少し何かを考えていた。
思い出そうとしていたにしては、挙動不審だったし、考える時間があまりにも短かった。
憶測に過ぎないが、リリック・シング・レッドシンは俺達に何かを隠している。
更に憶測だが、その隠し事こそ彼女を追っている騎士達の正体に迫る重要な情報だと思われる。
主任に頼まれてしまった以上、彼女から聞き出さなければならない。
翡翠がリリックを預かる事が決まった時、翡翠は主任からチャットアプリで極秘の指令を受けた。
それこそがリリックの隠し事を聞き出す事。彼女との親密度を上げてら秘密を教えてもらえと指示を出したのだ。
(一体君は何を隠しているんだ?リリック・・・)
俺は君の心が読みたい。何を隠しているんだ?今、何を考えているんだ?どうか口に出して教えてほしい。
「ふわぁぁ・・・ねむい・・・」
俺の心の声が聞こえたのだろうか。思った答えとは違ったが、彼女は欠伸をしながら今やりたい事を口にした。
「ちょっと早いけど寝ようか。少し待ってて。来客用の布団出すから」
あまり使用していない為、品質は良いはずだ。王族である彼女も不満は多分言わないはず・・・。
「わたしは・・・ううん、何でもない。どこにそれはあるの?自分の使う物は自分で出せるようにしておきたい!」
「そこの押し入れに入ってるよ」
リリックに布団の場所や敷き方を教える。教えると言っても、ただ広げるだけなので、教えるとは言い難いが。
布団を敷くのを見ていると、自分も段々目蓋が重くなってきた。今日は特殊な侵入者への対応もあったから疲れていたのだろう。
「モネ。悪いけど、先に寝るね。漫画読みたいなら今のうちに取っていって」
「アタシも寝るから平気。リリック、何かあったら言いなさい。そいつも一応男だから」
「俺をそこら辺のケダモノみたいに言わないでほしいな。それに、もしそんな雰囲気になったとしても、法律が俺を止めてくれるよ」
魔族が苦手だとか言っておいて何だかんだリリックに優しいモネさん。この調子なら、しばらく3人体制でも上手くやっていけそうだ。
「それじゃ、おやすみ」
天井から部屋を照らす電球の電気を消し、ベッドに入る。長旅で疲れたのだろう。数分後にはリリックの寝息が聞こえてきた。
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