46 / 191
2章 亡命者は魔王の娘!?
15話 黒幕は企む
しおりを挟む
・・・。
・・・・。
・・・・・。
・・・・・・。
静まり返ったアパートの一部屋。死人のようにピタリと動かず眠りに付いている翡翠に、暗闇に身を隠した者が近づく。
その者は、翡翠に体にかかった布団を少し持ち上げると、彼のベッドの中に侵入し、眠りに入る。
「すぅ・・・すぅ・・・」
その者は、翡翠の胸に顔を埋めると、可愛らしい寝息を立て始めた。
人間は眠っていても呼吸はする。翡翠の寝床に侵入した者は、翡翠の胸に生暖かい息をかけ続ける。
「・・・あっつ」
謎の人物の侵入により、急な温度の上昇。他人の息がかかり続けた影響で、熟睡していた翡翠も半分だが眠りから覚醒する。
暗闇の中、布団の中で寝ぼけた翡翠が見たのは────。
「すぅ・・・すぅ・・・」
可愛らしい寝息を立て、天使のような寝顔のリリック・シング・レッドシンだった。
「え・・・何でいる・・・?」
多分、トイレに行った後、寝ぼけて入ってしまったのだろう。なら、元の布団に戻してあげるのみ。
起き上がる為に、胴にしがみついているリリックを引き剥がそうと試みる。
しかし、寝ているとは思えない程に力が強く、無理に引き剥がしたら、皮膚を持っていかれそうだった。
「リリック、起きて。ちょっと起きて」
「んぅ・・・何・・・?」
仕方がないので、申し訳ないが起こして自分の布団に戻るように促す。
「布団、間違えてる。リリックのはあっちだよ・・・」
「やだぁ・・・ねるぅ・・・」
「嫌でも、退いてくれぇぇ・・・俺が社会的に死ぬぅぅぅ」
「だいじょうぶ~・・・わたし167歳だから・・・」
167歳?俺の149コ上じゃん。なら─────
「いっか・・・」
「うん~・・・ヒスイあったかい・・・」
年上なら問題なし!万が一が起きても大丈夫!
安心して眠りについた翡翠だが、翌朝一足早めに起きたモネにその様子を発見され、ボコボコにされるのであった。
★
同時刻、ザナ某国、謁見の間。
満身創痍の3人の騎士が、疲労と傷で動かなくなった身体に鞭打ち、王に謁見した。
「我が王・・・戻りました・・・」
「よく戻った。我が愛しき駒どもよ」
王は騎士達に顔をあげるように指示すると、銀の鎧や肉体に付いた傷を見て察する。
ああ、失敗したのだな、と。だが、一応任務の成功の聞くのが常識というもの。希望は無いが聞いてみる。
「お恥ずかしいながら、あと一歩という所でリオへ入国されてしまいました・・・」
「リオへは追いかけなかったのか?」
「追いかけましたが、リオ側の門番に卑怯な手を使われ、敗北しました・・・」
「我々はキャンベル騎士団の名折れです!どうか罰を・・・」
翡翠達は正攻法で戦っていた。卑怯な手を使われたというのは、騎士達が自分らの失敗を仕方ないものにする為の嘘である。
罰を求めているのは、反省していると思わせて罰を回避する為である。
しかし、心を読む事は至難の技。どんなに騎士達が嘘を付いていても心を読む力を持たない王はその言葉を信じ、偽りの情報に怒りを覚えた。
「人を守る門番が卑怯な手を使うとは・・・許さん!!」
その怒り、最もであるが、自分らが不法入国と暗殺未遂犯罪行為を棚に上げてしまっている。自分勝手という言葉を体で現したような王だ。
「団長!すぐにリオに刺客を送れ!人選はお前に任せる!今回は隠密性を重視して1人のみだ!今すぐに!」
「・・・・・はっ!」
国王の横に立つ他の騎士達よりも一際傷の酷い鎧を身に纏っていた男。国王に団長と呼ばれたこの男は、王からの命令を聞くや否や謁見の間を出て行った。
残された3人の騎士達。任務に失敗こそしたが、懸命に戦い、任務を遂げようとした3人に国王は笑みを浮かべる。
「長い期間の追跡で疲れただろう。お前達に休息を与える!英気を養ってまた騎士として戻ってこい」
「「「はい!ありがとうございます!」」」
国王の慈悲に感謝し、騎士3人は謁見の間を退出。最後に謁見の間に残ったのは国王と、腹心の大臣の2人のみ。
固い信頼関係で結ばれた2人は、身分は違えど、親友。そんな親友に国王はお願い事をする。
「あの働き者の騎士達に美酒を送っておけ。人生で一度しか味わえない美酒をな」
「仰せの通りに」
この時、国王が騎士3人に送った酒がどんな銘柄だったのか、どんな味だったのかは未だ明らかになっていない。
それを語る者が誰もいないので、仕方ないのだが。
・・・・。
・・・・・。
・・・・・・。
静まり返ったアパートの一部屋。死人のようにピタリと動かず眠りに付いている翡翠に、暗闇に身を隠した者が近づく。
その者は、翡翠に体にかかった布団を少し持ち上げると、彼のベッドの中に侵入し、眠りに入る。
「すぅ・・・すぅ・・・」
その者は、翡翠の胸に顔を埋めると、可愛らしい寝息を立て始めた。
人間は眠っていても呼吸はする。翡翠の寝床に侵入した者は、翡翠の胸に生暖かい息をかけ続ける。
「・・・あっつ」
謎の人物の侵入により、急な温度の上昇。他人の息がかかり続けた影響で、熟睡していた翡翠も半分だが眠りから覚醒する。
暗闇の中、布団の中で寝ぼけた翡翠が見たのは────。
「すぅ・・・すぅ・・・」
可愛らしい寝息を立て、天使のような寝顔のリリック・シング・レッドシンだった。
「え・・・何でいる・・・?」
多分、トイレに行った後、寝ぼけて入ってしまったのだろう。なら、元の布団に戻してあげるのみ。
起き上がる為に、胴にしがみついているリリックを引き剥がそうと試みる。
しかし、寝ているとは思えない程に力が強く、無理に引き剥がしたら、皮膚を持っていかれそうだった。
「リリック、起きて。ちょっと起きて」
「んぅ・・・何・・・?」
仕方がないので、申し訳ないが起こして自分の布団に戻るように促す。
「布団、間違えてる。リリックのはあっちだよ・・・」
「やだぁ・・・ねるぅ・・・」
「嫌でも、退いてくれぇぇ・・・俺が社会的に死ぬぅぅぅ」
「だいじょうぶ~・・・わたし167歳だから・・・」
167歳?俺の149コ上じゃん。なら─────
「いっか・・・」
「うん~・・・ヒスイあったかい・・・」
年上なら問題なし!万が一が起きても大丈夫!
安心して眠りについた翡翠だが、翌朝一足早めに起きたモネにその様子を発見され、ボコボコにされるのであった。
★
同時刻、ザナ某国、謁見の間。
満身創痍の3人の騎士が、疲労と傷で動かなくなった身体に鞭打ち、王に謁見した。
「我が王・・・戻りました・・・」
「よく戻った。我が愛しき駒どもよ」
王は騎士達に顔をあげるように指示すると、銀の鎧や肉体に付いた傷を見て察する。
ああ、失敗したのだな、と。だが、一応任務の成功の聞くのが常識というもの。希望は無いが聞いてみる。
「お恥ずかしいながら、あと一歩という所でリオへ入国されてしまいました・・・」
「リオへは追いかけなかったのか?」
「追いかけましたが、リオ側の門番に卑怯な手を使われ、敗北しました・・・」
「我々はキャンベル騎士団の名折れです!どうか罰を・・・」
翡翠達は正攻法で戦っていた。卑怯な手を使われたというのは、騎士達が自分らの失敗を仕方ないものにする為の嘘である。
罰を求めているのは、反省していると思わせて罰を回避する為である。
しかし、心を読む事は至難の技。どんなに騎士達が嘘を付いていても心を読む力を持たない王はその言葉を信じ、偽りの情報に怒りを覚えた。
「人を守る門番が卑怯な手を使うとは・・・許さん!!」
その怒り、最もであるが、自分らが不法入国と暗殺未遂犯罪行為を棚に上げてしまっている。自分勝手という言葉を体で現したような王だ。
「団長!すぐにリオに刺客を送れ!人選はお前に任せる!今回は隠密性を重視して1人のみだ!今すぐに!」
「・・・・・はっ!」
国王の横に立つ他の騎士達よりも一際傷の酷い鎧を身に纏っていた男。国王に団長と呼ばれたこの男は、王からの命令を聞くや否や謁見の間を出て行った。
残された3人の騎士達。任務に失敗こそしたが、懸命に戦い、任務を遂げようとした3人に国王は笑みを浮かべる。
「長い期間の追跡で疲れただろう。お前達に休息を与える!英気を養ってまた騎士として戻ってこい」
「「「はい!ありがとうございます!」」」
国王の慈悲に感謝し、騎士3人は謁見の間を退出。最後に謁見の間に残ったのは国王と、腹心の大臣の2人のみ。
固い信頼関係で結ばれた2人は、身分は違えど、親友。そんな親友に国王はお願い事をする。
「あの働き者の騎士達に美酒を送っておけ。人生で一度しか味わえない美酒をな」
「仰せの通りに」
この時、国王が騎士3人に送った酒がどんな銘柄だったのか、どんな味だったのかは未だ明らかになっていない。
それを語る者が誰もいないので、仕方ないのだが。
0
あなたにおすすめの小説
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる