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2章 亡命者は魔王の娘!?
15話 黒幕は企む
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・・・。
・・・・。
・・・・・。
・・・・・・。
静まり返ったアパートの一部屋。死人のようにピタリと動かず眠りに付いている翡翠に、暗闇に身を隠した者が近づく。
その者は、翡翠に体にかかった布団を少し持ち上げると、彼のベッドの中に侵入し、眠りに入る。
「すぅ・・・すぅ・・・」
その者は、翡翠の胸に顔を埋めると、可愛らしい寝息を立て始めた。
人間は眠っていても呼吸はする。翡翠の寝床に侵入した者は、翡翠の胸に生暖かい息をかけ続ける。
「・・・あっつ」
謎の人物の侵入により、急な温度の上昇。他人の息がかかり続けた影響で、熟睡していた翡翠も半分だが眠りから覚醒する。
暗闇の中、布団の中で寝ぼけた翡翠が見たのは────。
「すぅ・・・すぅ・・・」
可愛らしい寝息を立て、天使のような寝顔のリリック・シング・レッドシンだった。
「え・・・何でいる・・・?」
多分、トイレに行った後、寝ぼけて入ってしまったのだろう。なら、元の布団に戻してあげるのみ。
起き上がる為に、胴にしがみついているリリックを引き剥がそうと試みる。
しかし、寝ているとは思えない程に力が強く、無理に引き剥がしたら、皮膚を持っていかれそうだった。
「リリック、起きて。ちょっと起きて」
「んぅ・・・何・・・?」
仕方がないので、申し訳ないが起こして自分の布団に戻るように促す。
「布団、間違えてる。リリックのはあっちだよ・・・」
「やだぁ・・・ねるぅ・・・」
「嫌でも、退いてくれぇぇ・・・俺が社会的に死ぬぅぅぅ」
「だいじょうぶ~・・・わたし167歳だから・・・」
167歳?俺の149コ上じゃん。なら─────
「いっか・・・」
「うん~・・・ヒスイあったかい・・・」
年上なら問題なし!万が一が起きても大丈夫!
安心して眠りについた翡翠だが、翌朝一足早めに起きたモネにその様子を発見され、ボコボコにされるのであった。
★
同時刻、ザナ某国、謁見の間。
満身創痍の3人の騎士が、疲労と傷で動かなくなった身体に鞭打ち、王に謁見した。
「我が王・・・戻りました・・・」
「よく戻った。我が愛しき駒どもよ」
王は騎士達に顔をあげるように指示すると、銀の鎧や肉体に付いた傷を見て察する。
ああ、失敗したのだな、と。だが、一応任務の成功の聞くのが常識というもの。希望は無いが聞いてみる。
「お恥ずかしいながら、あと一歩という所でリオへ入国されてしまいました・・・」
「リオへは追いかけなかったのか?」
「追いかけましたが、リオ側の門番に卑怯な手を使われ、敗北しました・・・」
「我々はキャンベル騎士団の名折れです!どうか罰を・・・」
翡翠達は正攻法で戦っていた。卑怯な手を使われたというのは、騎士達が自分らの失敗を仕方ないものにする為の嘘である。
罰を求めているのは、反省していると思わせて罰を回避する為である。
しかし、心を読む事は至難の技。どんなに騎士達が嘘を付いていても心を読む力を持たない王はその言葉を信じ、偽りの情報に怒りを覚えた。
「人を守る門番が卑怯な手を使うとは・・・許さん!!」
その怒り、最もであるが、自分らが不法入国と暗殺未遂犯罪行為を棚に上げてしまっている。自分勝手という言葉を体で現したような王だ。
「団長!すぐにリオに刺客を送れ!人選はお前に任せる!今回は隠密性を重視して1人のみだ!今すぐに!」
「・・・・・はっ!」
国王の横に立つ他の騎士達よりも一際傷の酷い鎧を身に纏っていた男。国王に団長と呼ばれたこの男は、王からの命令を聞くや否や謁見の間を出て行った。
残された3人の騎士達。任務に失敗こそしたが、懸命に戦い、任務を遂げようとした3人に国王は笑みを浮かべる。
「長い期間の追跡で疲れただろう。お前達に休息を与える!英気を養ってまた騎士として戻ってこい」
「「「はい!ありがとうございます!」」」
国王の慈悲に感謝し、騎士3人は謁見の間を退出。最後に謁見の間に残ったのは国王と、腹心の大臣の2人のみ。
固い信頼関係で結ばれた2人は、身分は違えど、親友。そんな親友に国王はお願い事をする。
「あの働き者の騎士達に美酒を送っておけ。人生で一度しか味わえない美酒をな」
「仰せの通りに」
この時、国王が騎士3人に送った酒がどんな銘柄だったのか、どんな味だったのかは未だ明らかになっていない。
それを語る者が誰もいないので、仕方ないのだが。
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静まり返ったアパートの一部屋。死人のようにピタリと動かず眠りに付いている翡翠に、暗闇に身を隠した者が近づく。
その者は、翡翠に体にかかった布団を少し持ち上げると、彼のベッドの中に侵入し、眠りに入る。
「すぅ・・・すぅ・・・」
その者は、翡翠の胸に顔を埋めると、可愛らしい寝息を立て始めた。
人間は眠っていても呼吸はする。翡翠の寝床に侵入した者は、翡翠の胸に生暖かい息をかけ続ける。
「・・・あっつ」
謎の人物の侵入により、急な温度の上昇。他人の息がかかり続けた影響で、熟睡していた翡翠も半分だが眠りから覚醒する。
暗闇の中、布団の中で寝ぼけた翡翠が見たのは────。
「すぅ・・・すぅ・・・」
可愛らしい寝息を立て、天使のような寝顔のリリック・シング・レッドシンだった。
「え・・・何でいる・・・?」
多分、トイレに行った後、寝ぼけて入ってしまったのだろう。なら、元の布団に戻してあげるのみ。
起き上がる為に、胴にしがみついているリリックを引き剥がそうと試みる。
しかし、寝ているとは思えない程に力が強く、無理に引き剥がしたら、皮膚を持っていかれそうだった。
「リリック、起きて。ちょっと起きて」
「んぅ・・・何・・・?」
仕方がないので、申し訳ないが起こして自分の布団に戻るように促す。
「布団、間違えてる。リリックのはあっちだよ・・・」
「やだぁ・・・ねるぅ・・・」
「嫌でも、退いてくれぇぇ・・・俺が社会的に死ぬぅぅぅ」
「だいじょうぶ~・・・わたし167歳だから・・・」
167歳?俺の149コ上じゃん。なら─────
「いっか・・・」
「うん~・・・ヒスイあったかい・・・」
年上なら問題なし!万が一が起きても大丈夫!
安心して眠りについた翡翠だが、翌朝一足早めに起きたモネにその様子を発見され、ボコボコにされるのであった。
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同時刻、ザナ某国、謁見の間。
満身創痍の3人の騎士が、疲労と傷で動かなくなった身体に鞭打ち、王に謁見した。
「我が王・・・戻りました・・・」
「よく戻った。我が愛しき駒どもよ」
王は騎士達に顔をあげるように指示すると、銀の鎧や肉体に付いた傷を見て察する。
ああ、失敗したのだな、と。だが、一応任務の成功の聞くのが常識というもの。希望は無いが聞いてみる。
「お恥ずかしいながら、あと一歩という所でリオへ入国されてしまいました・・・」
「リオへは追いかけなかったのか?」
「追いかけましたが、リオ側の門番に卑怯な手を使われ、敗北しました・・・」
「我々はキャンベル騎士団の名折れです!どうか罰を・・・」
翡翠達は正攻法で戦っていた。卑怯な手を使われたというのは、騎士達が自分らの失敗を仕方ないものにする為の嘘である。
罰を求めているのは、反省していると思わせて罰を回避する為である。
しかし、心を読む事は至難の技。どんなに騎士達が嘘を付いていても心を読む力を持たない王はその言葉を信じ、偽りの情報に怒りを覚えた。
「人を守る門番が卑怯な手を使うとは・・・許さん!!」
その怒り、最もであるが、自分らが不法入国と暗殺未遂犯罪行為を棚に上げてしまっている。自分勝手という言葉を体で現したような王だ。
「団長!すぐにリオに刺客を送れ!人選はお前に任せる!今回は隠密性を重視して1人のみだ!今すぐに!」
「・・・・・はっ!」
国王の横に立つ他の騎士達よりも一際傷の酷い鎧を身に纏っていた男。国王に団長と呼ばれたこの男は、王からの命令を聞くや否や謁見の間を出て行った。
残された3人の騎士達。任務に失敗こそしたが、懸命に戦い、任務を遂げようとした3人に国王は笑みを浮かべる。
「長い期間の追跡で疲れただろう。お前達に休息を与える!英気を養ってまた騎士として戻ってこい」
「「「はい!ありがとうございます!」」」
国王の慈悲に感謝し、騎士3人は謁見の間を退出。最後に謁見の間に残ったのは国王と、腹心の大臣の2人のみ。
固い信頼関係で結ばれた2人は、身分は違えど、親友。そんな親友に国王はお願い事をする。
「あの働き者の騎士達に美酒を送っておけ。人生で一度しか味わえない美酒をな」
「仰せの通りに」
この時、国王が騎士3人に送った酒がどんな銘柄だったのか、どんな味だったのかは未だ明らかになっていない。
それを語る者が誰もいないので、仕方ないのだが。
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