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2章 亡命者は魔王の娘!?

33話 総力戦

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 シャイ・マスカッツのリオ撤退からきっちり1週間が経過した。

 ロット2世がシャイに頼んでおいた兵士と騎士への演説により、戦う者達の士気は最高潮。ドワーフの国との戦争以来のヤル気である。

 城前に戦士達が集まる。事前の人数チェックによると、兵士騎士傭兵含めて集まったのは3500人。小さな町を襲うにしては過剰すぎる戦力だ。

 しかし、ロット2世はこの戦力を全くもってやりすぎだと考えていなかった。3度も失敗した彼が求めているのは確実性。魔王女と門番を確実に抹殺する事である。

 戦士達を見下ろせる位置に移動したロット2世。聖なる大樹の杖に魔術で拡声機能を与え、全員に声が行き渡るようにする。全員というのは戦士だけでない。野次馬に来た国民もだ。

「よくぞ集まってくれた!勇気ある誉れ高き気高きエルフの戦士達よ!ついに!我らエルフを1000年間辱め、侮辱した魔族に復讐する時がやってきた!」

「「「「アベンジ!アベンジ!アベンジ!!」」」」

 戦士達の士気は最高潮。流石はシャイ・マスカッツ。スゴイカリスマ性だ。私には遠く及ばないが。

「では行くぞ!皆の者!石は持ったか!?」

 戦士達が小袋から取り出したのは親指の爪サイズの小さなクリスタル。それに自身の魔力を込め、光らせクリスタルに刻まれたを発動する。

「いざ行くぞ!魔王女の隠れるリオの町へ!いざ出陣!!」

 クリスタルから放たれた光が持つ者を包み込む。野次馬達は急いで目を閉じ、光の直視を避ける。

 光が弱くなってきた頃合いを感じて目を開くも、城前に大勢いた戦士達と王の姿は跡形もなく消えていた。

 ロット2世と戦士達はリオへと旅立ったのだ。しかし、旅と行ってもその旅路は一瞬。目を開けば目的地へと到着している。ただ目的地へ向かう事だけを理由とした魔術である。

 ただ今回はそれで良い。目的は旅を楽しむ事ではなく、魔王女の殺害と、エルフに3度の敗北を味合わせた門番達への復讐。

 町は壊れるだろうが、大した問題ではない。すぐに立ち去れば、災害として認識されるはずだ。

 復讐に胸を膨らませ、余裕の笑みを浮かべるロット2世。そんな彼の美しい緑の瞳に映ったのは、逃げ惑うリオ人ではなく、自分らを囲む約800人の戦士達。

 リオ人は勿論の事、オーガ、ドワーフ、獣人、ダークエルフ、まさかの魔族までも参加した多種族軍だ。

「な、な、な・・・なんだとぉぉぉぉぉ!!」

 予想の斜め上を行く状況。敵は数人だと聞いていた戦士達は動揺する。

 全く予期していなかった状況なのだが、1つだけ理解できる事がある。自分ら囲んでいる戦士達は明らかにナチュレ軍じぶんらを敵視している。

 今にも襲いかかろうとしている肉食獣のような眼つきで戦士をロット2世を睨みつけている。初めて殺意を向けられたロット2世は半べそを掻きながら頭を掻きむしり、喚きたてた。

「いいいい一体どういう事なんだぁぁぁ!」

 国王の完全なる混乱は波及し、戦い慣れた戦士達にも焦りが見え始める。

 そんな混乱の渦の中に近付く男がリオ側から1人。

 男は、ナチュレ軍を囲む戦士の1人がエルフ達を軽い跳躍で飛び越え、ロット2世の前に立つ。長身の茶髪の剣士は愉快そうな笑みを浮かべながらロット2世の前に立った。

「このオレが説明します!!」

 目の前に現れた男はシャイが、要注意人物として指定したシュニンという男だった。
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