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2章 亡命者は魔王の娘!?
39話 国総出で謝罪を申し上げる
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「午前11時43分。殺人、器物損害、放火諸々の罪でロット・シャチム・ナチュレイズを逮捕する」
気絶したロット2世は死なない程度に治癒魔術で止血を行い、手錠で拘束され、警察官と数人の魔術使いと共に救急車に乗って現場から離れた。
死者の総合計は174人。1人の人間が出した被害では過去最悪クラスだろう。
崩壊した辺り1kmを眺めていると、事前に住民を非難させておいて良かったと心の底から思う。
素人目から見て被害総額は10億は軽く超えている。異門町の建物やアスファルトは、壊れにくかったり、燃えにくかったりする特別製ばかりなので、想像しているよりも高くつく可能性もある。
ほとんど災害が起きた後のようだが、人間がしでかした被害なので、災害保険は出るだろうか。そこだけが不安だ。
「被害・・・凄い事になっちゃいましたね」
「アインバルト兵士長・・・」
俺の肩にポンと手を置いてきたのは勇敢なる魔族の兵士長ゴドリック・アインバルトさん。
「王女リリック様を守るのは我々家臣の仕事。にも、我々はそれを果たす事ができませんでした」
「それは、確かにそうかもしれませんが・・・貴方達もベストを尽くしていたじゃないですか」
「だからこそ、我々は恥じなければなりません。全力を出しても守れなかった不甲斐なさに・・・」
「成る程。確かに課題はありますね。ですけど、今は喜びましょう。守るべき人を守れたんですから」
その過程がどうであれ、成功したのだ。今は喜び、後で反省会をしよう。
「そう、ですね・・・そうしましょう!魔族達よ!!」
駆けつけてくれた魔族の戦士達が一斉に立ち上がり、アインバルト兵士長の方を向く。
「我らが英雄ヒスイ・モリヤマを讃えよ!!」
「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
そんな大袈裟な・・・口に出してしまいそうになったが、グッと堪える。彼らからの善意を無碍にしてはならない。
1分ほどだろうか。魔族の人達の歓喜の言葉を浴びていると、武装を解除したキャンベル騎士団の生き残りがシャイ団長を筆頭にやってきたのだ。
「構えろ!英雄ヒスイを守るのだ!!」
「「「「うぉおおおおお!!」」」」
王女の命を狙われた魔族からしたらエルフは敵として認識されてもおかしくないわけで、魔族の兵士達は武器を構え、エルフに敵意を露わにする。
「落ち着いて皆!エルフの人達俺を殺そうとしにきたわけじゃないから!」
「つい数分前まで敵だった人間を信じろっていうのは流石に無理がありますね!!」
「じゃあ、わたくしの命令ならばどうです?」
魔族兵達を掻き分けてエルフ達の前に立ち塞がったのはリリック・・・いや、魔王女リリックその人。攻撃的だった魔族達も牙を抜かれた獣のように落ち着き、王女に向かって頭を垂れる。
「わたくしの命を狙い、多くの臣下を奪った罪、決して軽い罪ではありません」
「はい。その通りでございます」
「普通なら即処刑という事も理解しているな?」
「はい・・・」
「では・・・今死にますか?」
「それは・・・できません」
死ぬのが怖いからという簡単かつ情けない理由ではない模様。魔王女は驚かずに聞く。
「何故です?」
「我らが王であったロット2世はこの後、ザナへと送られ、裁きを受けるでしょう」
「当然ですね」
「悪くて死刑。良くて終身刑のどちらかです」
「それも当然です」
長寿のエルフからしたら、死刑よりも、終身刑の方が寧ろきついだろう。
「ロット2世は王の座に胡坐をかき、暴政を行い、民を家畜のように扱ってきました。しかし、同時に腐ってはいましたが、私達のトップに立ち、歪な道ではありましたが、導いていました」
「曲りなりにも王だったというわけですか・・・」
「今、彼らは指導者を失ったら、露頭に迷い、私の愛した国は滅びます」
「つまり、今はいない王の代わりに貴方がなると?」
「1年・・・いや、半年猶予を下さい。その期間内に民が露頭に迷わない様指導します。その後の私の命は貴方様に捧げます」
「あくまで、自分のためでなく、国のためですか・・・分かりました。顔をあげなさいシャイ・マスカッツよ」
顔を上げ、立ち上がらせる。厳格だった表情は優しく砕け、シャイに手を差し伸べた。
「貴方の国を思う心に免じて許します。これからもその想いを忘れないよう過ごして下さい」
リリックが科した罪は無かった。あるとすれば、シャイの自分の国に対しての奉仕だろうか。彼女は人としてではなく、復讐者としてでもなく、魔王女として判断したのだ。
彼女の慈悲深さにシャイは落涙。彼女に感謝、謝罪の言葉を述べた。
「この御恩、決して生涯忘れる事はございません・・・そして、ナチュレ代表してここに謝罪を────」
「お待ちになって、サー・マスカッツ。謝罪はまた後日。今日の所は皆御疲れですから解散いたしましょう?」
「・・・はい。ご厚意感謝致します。では────」
エルフ達が白い光に包まれると、その場から姿を消す。門を通さないリオへの侵入の件もまた後日聞くことにしよう。今はとにかく、お腹がすいて仕方がない。
「リリック、ご飯どうする?」
「えっ!あれじゅないの?皆で食べようって言ってたやつ!」
「ああ、そっか。すき焼きか!」
「午前11時43分。殺人、器物損害、放火諸々の罪でロット・シャチム・ナチュレイズを逮捕する」
気絶したロット2世は死なない程度に治癒魔術で止血を行い、手錠で拘束され、警察官と数人の魔術使いと共に救急車に乗って現場から離れた。
死者の総合計は174人。1人の人間が出した被害では過去最悪クラスだろう。
崩壊した辺り1kmを眺めていると、事前に住民を非難させておいて良かったと心の底から思う。
素人目から見て被害総額は10億は軽く超えている。異門町の建物やアスファルトは、壊れにくかったり、燃えにくかったりする特別製ばかりなので、想像しているよりも高くつく可能性もある。
ほとんど災害が起きた後のようだが、人間がしでかした被害なので、災害保険は出るだろうか。そこだけが不安だ。
「被害・・・凄い事になっちゃいましたね」
「アインバルト兵士長・・・」
俺の肩にポンと手を置いてきたのは勇敢なる魔族の兵士長ゴドリック・アインバルトさん。
「王女リリック様を守るのは我々家臣の仕事。にも、我々はそれを果たす事ができませんでした」
「それは、確かにそうかもしれませんが・・・貴方達もベストを尽くしていたじゃないですか」
「だからこそ、我々は恥じなければなりません。全力を出しても守れなかった不甲斐なさに・・・」
「成る程。確かに課題はありますね。ですけど、今は喜びましょう。守るべき人を守れたんですから」
その過程がどうであれ、成功したのだ。今は喜び、後で反省会をしよう。
「そう、ですね・・・そうしましょう!魔族達よ!!」
駆けつけてくれた魔族の戦士達が一斉に立ち上がり、アインバルト兵士長の方を向く。
「我らが英雄ヒスイ・モリヤマを讃えよ!!」
「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
そんな大袈裟な・・・口に出してしまいそうになったが、グッと堪える。彼らからの善意を無碍にしてはならない。
1分ほどだろうか。魔族の人達の歓喜の言葉を浴びていると、武装を解除したキャンベル騎士団の生き残りがシャイ団長を筆頭にやってきたのだ。
「構えろ!英雄ヒスイを守るのだ!!」
「「「「うぉおおおおお!!」」」」
王女の命を狙われた魔族からしたらエルフは敵として認識されてもおかしくないわけで、魔族の兵士達は武器を構え、エルフに敵意を露わにする。
「落ち着いて皆!エルフの人達俺を殺そうとしにきたわけじゃないから!」
「つい数分前まで敵だった人間を信じろっていうのは流石に無理がありますね!!」
「じゃあ、わたくしの命令ならばどうです?」
魔族兵達を掻き分けてエルフ達の前に立ち塞がったのはリリック・・・いや、魔王女リリックその人。攻撃的だった魔族達も牙を抜かれた獣のように落ち着き、王女に向かって頭を垂れる。
「わたくしの命を狙い、多くの臣下を奪った罪、決して軽い罪ではありません」
「はい。その通りでございます」
「普通なら即処刑という事も理解しているな?」
「はい・・・」
「では・・・今死にますか?」
「それは・・・できません」
死ぬのが怖いからという簡単かつ情けない理由ではない模様。魔王女は驚かずに聞く。
「何故です?」
「我らが王であったロット2世はこの後、ザナへと送られ、裁きを受けるでしょう」
「当然ですね」
「悪くて死刑。良くて終身刑のどちらかです」
「それも当然です」
長寿のエルフからしたら、死刑よりも、終身刑の方が寧ろきついだろう。
「ロット2世は王の座に胡坐をかき、暴政を行い、民を家畜のように扱ってきました。しかし、同時に腐ってはいましたが、私達のトップに立ち、歪な道ではありましたが、導いていました」
「曲りなりにも王だったというわけですか・・・」
「今、彼らは指導者を失ったら、露頭に迷い、私の愛した国は滅びます」
「つまり、今はいない王の代わりに貴方がなると?」
「1年・・・いや、半年猶予を下さい。その期間内に民が露頭に迷わない様指導します。その後の私の命は貴方様に捧げます」
「あくまで、自分のためでなく、国のためですか・・・分かりました。顔をあげなさいシャイ・マスカッツよ」
顔を上げ、立ち上がらせる。厳格だった表情は優しく砕け、シャイに手を差し伸べた。
「貴方の国を思う心に免じて許します。これからもその想いを忘れないよう過ごして下さい」
リリックが科した罪は無かった。あるとすれば、シャイの自分の国に対しての奉仕だろうか。彼女は人としてではなく、復讐者としてでもなく、魔王女として判断したのだ。
彼女の慈悲深さにシャイは落涙。彼女に感謝、謝罪の言葉を述べた。
「この御恩、決して生涯忘れる事はございません・・・そして、ナチュレ代表してここに謝罪を────」
「お待ちになって、サー・マスカッツ。謝罪はまた後日。今日の所は皆御疲れですから解散いたしましょう?」
「・・・はい。ご厚意感謝致します。では────」
エルフ達が白い光に包まれると、その場から姿を消す。門を通さないリオへの侵入の件もまた後日聞くことにしよう。今はとにかく、お腹がすいて仕方がない。
「リリック、ご飯どうする?」
「えっ!あれじゅないの?皆で食べようって言ってたやつ!」
「ああ、そっか。すき焼きか!」
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