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3章 異世界旅行録

3話 ロット2世が残した最後の面倒事

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 時は少し遡り、4日前。シャイが翡翠の出自を教えにきた時である。

 彼の目的は、出自を伝えるではなく、翡翠の力を借りる事にあった。

 俺の力というのは一体なんなのだろうか?戦闘能力か?それなら騎士達で事足りる。それ以外に何か役に立てる事があっただろうか。

「いえ、今回は戦いではなく、政治関連の助力をお願いしたいのです」

「待って下さい!俺、ただの門番!法律!政治!学んでない!」

「落ち着いて下さい。法律改定の助言とかではなく、簡単な仕事なので!」

 法律関連で簡単な仕事など存在するのか?書類分別?そんなの俺以外の誰でもできるじゃないか!益々どんな仕事なのか分からなくなってきた。

「実は数年前、ロット2世の地位を脅かす大反乱が起きたのです」

「てっきりロット2世に支配されっぱなしかと」

「その時は私達が鎮圧しましたが、ロット2世はその一件で自分の地位が危ういのではと思い始めました。その結果、万が一に備えてこんな法律を作ってしまいました」

 
『国民が政治的な決定を行う場合、国王又は王族の同意を得なければならない。』

「うわっ、面倒くさっ!つまりは最後の防波堤ってわけですね!」

「はい。勿論、そんな法律無視して民主制を推し進めていく事も可能ですが、後になって色々と問題視され、私的されるのも面倒ですし・・・」

「かといっても、国王の席は空席。だから王族である俺に同意をお願いしにきたと?」

「理解が早くて助かります」

「確かに簡単な仕事ですけど、こんなに重要な仕事を自分なんかがして良いのでしょうか?」

 王族とは言え、俺はナチュレ外で育った部外者。しかも、純粋なエルフではない。そんな者が国の今後が決まるイベントに関わっても良いのだろうか。

「純血ではないのに関わっていいのかと思われているのならご心配なく。ナチュレの人口の4割が純血ではないので」

「そうなんですか!?」

「かなり前から他との交流が生まれましたからね。その結果ともいえます。貴方のように耳が尖がっていないエルフもいますよ」

 俺が今の今までハーフエルフだと気づけなかった理由その1。耳が尖がっていない事。ヒューマンと同じく丸い耳をしている。

 まだ、自分が部外者だという問題はあるが、これ以上悩んでもシャイ団長を悩ませるだけだ。快く彼のお願いを聞き入れよう。

「1週間後に有給を何日かとって向かいます。またザナでお会いしましょう」

「ッ・・・!ありがとうございます。ヒスイ

「あと、良かったら敬語と王子っていうのも止めてほしいです・・・」

「い、いえ!そういうわけには行きません!出生関係なく私は目上の者には敬語を使わないなんてできません!絶対に!!」

 シャイ団長は融通が効かない事も判明した。
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