異世界と繋がる不思議な門を警備する仕事に就きしました!

町島航太

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3章 異世界旅行録

32話 ニルヴァーナのキスにて

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「ヒューマンの兄ちゃんと、魔族のおねえちゃん。アンタらただの旅人じゃないだろ?」

「はい。実はリオで門番をやっていて────」

「そうか。門番をやっていたら、昨日の権力譲渡式にも呼ばれるわけか」

 どうやら、昨日の式に参加していた一般人だったようだ。

「一体どういうわけで呼ばれたんだ?」

「僕の門番の親友が、呼ばれてそのついでで呼ばれた感じです・・・」

「・・・まさか、あのニルヴァーナ王女の息子のか?」

 コクリと頷くと、チンピラ風のエルフは下唇を噛み、不穏な表情を浮かべ始めた。何かまずいのだろうか。

「ニルヴァーナ王女の息子本人じゃないから多分、大丈夫だとは思うが・・・決して自分からニルヴァーナ王女の話はしないで欲しい・・・」

「どうしてです?名前を聞くのも嫌な常連か、店員でもいるんですか?」

「その逆だ。好きすぎて面倒臭い店主がいる。アンタらはその店主に話を聞くんだ。絶対に機嫌を損ねるなよ?」

 店の名前は[ニルヴァーナのキス]。もしかして、とは思っていたが、店名はヒスイのお母さんから付けていたんだ。

 自分の店にするほどの熱量。確かに舐めてかかったら逆燐に触れてしまいそうだ。

 注意を頭に叩き込み、チンピラ風のエルフについていく。

 建物と建物の隙間に生まれた裏道を歩き続ける事4分。もしかして、僕達をハメる罠だったのか?と疑いそうになったタイミングで、目的地に到着。

 酒場と呼ぶには小さく、バーと呼ぶには少し大きな店。雰囲気は暗めで、静か。1人になりたい時は最適の場所だろう。

「マスター。帰りました」

「おう・・・客か?」

 カウンターに立つのは、屈強なパワータイプのエルフ。腕には切り傷が多く付いており、歴戦の戦士だった事が窺える。

「・・・何のようだ?」

 何処となく元気がないように見える。気になるが、黙っておこう。

「実は人を探してまして・・・」

「情報か。金を出せ、話はそれからだ」

 ザナに戻ってくる前に、ニホンエンをザナの通貨にしておいて良かった。2500リック、ニホンエンにして約5000円を渡すと、店主はこちらを向いて話を聞く体勢をとってくれた。

「ザナに入って1年間行方不明の門番を探しているんです。探している人数は8人、写真は8枚です」

 予め主任から託されていた証明写真をカウンターテーブルに広げて店主に見せる。

 流すように8枚の写真を見る屈強な店主。真顔で写真を見続ける。

 見覚えがなかったようで、次々と何も言わず写真を見ていく店主だったが、最後の写真を見た途端、眉がほんのわずかに動いた。

「7人は見たことない。だが・・・運が良いな。1人だけは知ってる」

「マジか!!」

 1人知ることができただけでも大収穫!1人でも見つければ、あとの7人を見つけるのは容易のはず。すぐに何処にいるかを尋ねる。

「何処にいるかだって?すぐ真横にいるじゃねぇか」

「「「え・・・?」」」

 店主の発言に皆首を傾げる。すると、右から肩をつつかれた。

「あのう・・・それ、俺だわ」

 申し訳なさそうに言う男の顔は、8人の行方不明者の1人大門寺優斗だいもんじゆうとその人だった。

「えっと・・・俺にどんなようで?」

 アルコールで顔を真っ赤にしながらダイモンジさんは僕らの方に顔を向けてくれた。
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