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3章 異世界旅行録
47話 生き藻掻く
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「おい!<災害>が落ちたぞ!!」「今だ!畳みかけろ!」「王子のように雷の魔術を使え!有効打だ!」
<災害>が落ちてきた瞬間、騎士と兵士達は槍に雷を纏わせ、投擲。<災害>に休む暇を与えないように感電させ続けていく。
核は勿論、体の中。つまり、体に電気を流せば、必然的に核にもダメージを加える事が出来るのである。
「そのまま叩きこめ!!<災害>に休む暇を与えるな!!」
少しでも、休ませた場合、<災害>は核の再生を始める。多大なる犠牲を払って手に入れた仕留めるチャンス。ナチュレ・・・いや、ザナの為にも逃すわけにはいかない!!
紫色の液体の体の中から、完璧な球体が見えてきた。球体は弱ったようにぷかぷかと液体の中で浮いており、今にも力尽くそうである。
球体の正体こそ、<災害>の心臓であり、脳みそである核。核だけじゃない。つい先程までドラゴンの姿を取っていたはずなのに、普通のスライムのような不定形な姿へと変化し始めた。
恐らく、姿を維持する事が厳しくなったのだろう。これで、しばらくは空を飛べない。毒と呪いの爆撃機にはならないわけだ。
「Bu・・・ooo・・・」
「皆さん!頑張ってください!あともう少しです!私も今、もう一度全力を────」
「2回もわたし達の全力を放てば────あれ?」
リリックが魔力を練る手を止めて、<災害>を見始める。リリの様子にまずはじめに気づいたのは翡翠だった。そして、彼女が弱り始めている<災害>を眺めているのに気付いたのも翡翠。
巨大なゲル状に変化した<災害>だったが、ゆっくりゆっくり動き始め、核と同じ球体へと変化し始めたのだ。
更に弱ったという現れか?と思ってが、そうではない模様。俺達のようにアウェイからの逆転を狙っているように見える。
<災害>は多くの生物を捕食し、己の力と知恵にしてきた生物。下手したら俺らを全滅しかけない手段を持っていたもおかしくはない。
「シャイ団長!皆に<災害>から距離を取るように指示をおねが────」
お願いしようとした時には既に手遅れだった。大勢の騎士や兵士から電気でダメージを負わされた<災害>が風船・・・否、爆弾のように爆発。毒呪液を半径100mにばら撒く。
「あ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!!」「助けて!タスk────」「聖なる大樹よ・・・」
至近距離から攻撃していた騎士と兵士は勿論毒呪液の餌食となった。騎士や兵士達の為に近くで安全地帯を形成していた魔術師と呪術師も巻き添えを喰らう形で溶け死んでいく。
「うぉわぁ!!!」
翡翠は爆発する前に気づけたおかげか、爆発直前に、近くにいたリリックとシュエリと自分が守れる程度の結界を防御魔術で緊急作成。
しかし、作って間もなかった為か、盾代わりの結界は毒呪液の激突から3人を守ると、役目を終え、砕け散ってしまう。
更に、防御魔術は、攻撃から身を守ってくれるだけで、衝撃から身は守ってはくれない。飛び散ってきた毒呪液の勢いは凄まじく、翡翠達は身を守ったと同時に吹き飛ばされてしまった。
そのまま雑草の生い茂る草原にぶつかれば、雑草がクッションとなって、大したダメージにはならなかっただろう。翡翠もそのつもりだった。
だが、吹き飛ばされた方向は指定できない。3人が吹き飛ばされた方向には、広大な草原にポツンと飛び出した岩。座り心地は良さそうではあるが、とても硬そうな岩。
粉砕機かモネの全力でしか破壊できないような、頭から激突したら確実に死ぬと分かる何処にでもありそうな岩。
何処にあっても違和感はないが、何故、俺らが着地しようとしている場所にあるんだよ。神様、俺に死ねっていうのか?
それとも、試練か?この程度の危機を乗り越えられないならば、<災害>は俺には倒せないとでも言うのか?それとも、自分の命か、リリとシュエリ王女の命を選べと言っているのか?それならば、話が早い。
吹き飛ばされる最中、翡翠は共に吹き飛ばされているリリックとシュエリを抱き寄せると、彼女達を庇い、岩に背中から激突した。
ただの戦士でしかなく、平凡な能力しか持っていない自分よりも、強力な力を有し、戦っている者の中で一番、<災害>を倒す事が出来る可能性を持った2人を生かした方が良いという合理的な理由と、友情を優先にした感情的な理由だ。
背骨が折れる感覚がした。肋骨も数本持っていかれたようだ。
激痛を通り越して、痛いという感覚がない。ただただ激突した部分が燃えるように熱い。
意識がゆらりゆらりと薄れていく。最後に見たのは、絶望の表情を浮かべたリリとシュエリ王女の顔。もっと、笑顔を見たかったのだが、状況が状況だから無理があるか。
彼女達に向かって遺言を残したかったが、口が回らない。
ごめんよ・・・不甲斐なくt────
「「治療魔術!!」」
「うおぁぁ!!」
壊れた背骨が、折れた肋骨が、止まりかけていた命が再起動する。既に止まりかけていた状態から、無理矢理修理されて動かされたような感じ。
かなり急に骨を再生されたからか、途中で、筋肉の筋と骨が雑に絡みあって滅茶苦茶痛かった。その痛みで目が覚めたので、悪い事ではなかったが・・・。
「勝手に死なないでよ!」「勝手に死なないでください!!」
「ご、ごめん・・・」
覚えていたのに、忘れていた。彼女達が魔術の天才である事を。治癒魔術も例外でない事を。
<災害>が落ちてきた瞬間、騎士と兵士達は槍に雷を纏わせ、投擲。<災害>に休む暇を与えないように感電させ続けていく。
核は勿論、体の中。つまり、体に電気を流せば、必然的に核にもダメージを加える事が出来るのである。
「そのまま叩きこめ!!<災害>に休む暇を与えるな!!」
少しでも、休ませた場合、<災害>は核の再生を始める。多大なる犠牲を払って手に入れた仕留めるチャンス。ナチュレ・・・いや、ザナの為にも逃すわけにはいかない!!
紫色の液体の体の中から、完璧な球体が見えてきた。球体は弱ったようにぷかぷかと液体の中で浮いており、今にも力尽くそうである。
球体の正体こそ、<災害>の心臓であり、脳みそである核。核だけじゃない。つい先程までドラゴンの姿を取っていたはずなのに、普通のスライムのような不定形な姿へと変化し始めた。
恐らく、姿を維持する事が厳しくなったのだろう。これで、しばらくは空を飛べない。毒と呪いの爆撃機にはならないわけだ。
「Bu・・・ooo・・・」
「皆さん!頑張ってください!あともう少しです!私も今、もう一度全力を────」
「2回もわたし達の全力を放てば────あれ?」
リリックが魔力を練る手を止めて、<災害>を見始める。リリの様子にまずはじめに気づいたのは翡翠だった。そして、彼女が弱り始めている<災害>を眺めているのに気付いたのも翡翠。
巨大なゲル状に変化した<災害>だったが、ゆっくりゆっくり動き始め、核と同じ球体へと変化し始めたのだ。
更に弱ったという現れか?と思ってが、そうではない模様。俺達のようにアウェイからの逆転を狙っているように見える。
<災害>は多くの生物を捕食し、己の力と知恵にしてきた生物。下手したら俺らを全滅しかけない手段を持っていたもおかしくはない。
「シャイ団長!皆に<災害>から距離を取るように指示をおねが────」
お願いしようとした時には既に手遅れだった。大勢の騎士や兵士から電気でダメージを負わされた<災害>が風船・・・否、爆弾のように爆発。毒呪液を半径100mにばら撒く。
「あ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!!」「助けて!タスk────」「聖なる大樹よ・・・」
至近距離から攻撃していた騎士と兵士は勿論毒呪液の餌食となった。騎士や兵士達の為に近くで安全地帯を形成していた魔術師と呪術師も巻き添えを喰らう形で溶け死んでいく。
「うぉわぁ!!!」
翡翠は爆発する前に気づけたおかげか、爆発直前に、近くにいたリリックとシュエリと自分が守れる程度の結界を防御魔術で緊急作成。
しかし、作って間もなかった為か、盾代わりの結界は毒呪液の激突から3人を守ると、役目を終え、砕け散ってしまう。
更に、防御魔術は、攻撃から身を守ってくれるだけで、衝撃から身は守ってはくれない。飛び散ってきた毒呪液の勢いは凄まじく、翡翠達は身を守ったと同時に吹き飛ばされてしまった。
そのまま雑草の生い茂る草原にぶつかれば、雑草がクッションとなって、大したダメージにはならなかっただろう。翡翠もそのつもりだった。
だが、吹き飛ばされた方向は指定できない。3人が吹き飛ばされた方向には、広大な草原にポツンと飛び出した岩。座り心地は良さそうではあるが、とても硬そうな岩。
粉砕機かモネの全力でしか破壊できないような、頭から激突したら確実に死ぬと分かる何処にでもありそうな岩。
何処にあっても違和感はないが、何故、俺らが着地しようとしている場所にあるんだよ。神様、俺に死ねっていうのか?
それとも、試練か?この程度の危機を乗り越えられないならば、<災害>は俺には倒せないとでも言うのか?それとも、自分の命か、リリとシュエリ王女の命を選べと言っているのか?それならば、話が早い。
吹き飛ばされる最中、翡翠は共に吹き飛ばされているリリックとシュエリを抱き寄せると、彼女達を庇い、岩に背中から激突した。
ただの戦士でしかなく、平凡な能力しか持っていない自分よりも、強力な力を有し、戦っている者の中で一番、<災害>を倒す事が出来る可能性を持った2人を生かした方が良いという合理的な理由と、友情を優先にした感情的な理由だ。
背骨が折れる感覚がした。肋骨も数本持っていかれたようだ。
激痛を通り越して、痛いという感覚がない。ただただ激突した部分が燃えるように熱い。
意識がゆらりゆらりと薄れていく。最後に見たのは、絶望の表情を浮かべたリリとシュエリ王女の顔。もっと、笑顔を見たかったのだが、状況が状況だから無理があるか。
彼女達に向かって遺言を残したかったが、口が回らない。
ごめんよ・・・不甲斐なくt────
「「治療魔術!!」」
「うおぁぁ!!」
壊れた背骨が、折れた肋骨が、止まりかけていた命が再起動する。既に止まりかけていた状態から、無理矢理修理されて動かされたような感じ。
かなり急に骨を再生されたからか、途中で、筋肉の筋と骨が雑に絡みあって滅茶苦茶痛かった。その痛みで目が覚めたので、悪い事ではなかったが・・・。
「勝手に死なないでよ!」「勝手に死なないでください!!」
「ご、ごめん・・・」
覚えていたのに、忘れていた。彼女達が魔術の天才である事を。治癒魔術も例外でない事を。
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