異世界と繋がる不思議な門を警備する仕事に就きしました!

町島航太

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3章 異世界旅行録

48話 盲点

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「ヒ、ヒスイ・・・大丈夫?」

「うぇぇ・・・気持ち悪い・・・」

 モネさんもシャープも無事なようだが、なんだか体調が悪いようだ。

 モネさんは腕が曲がってはいけない方向に曲がっているし、シャープは右足の脛骨が飛び出ている。生きていて本当に良かったが、とても戦える状態ではない。

 俺も、骨自体は直してもらえたが、動かすのはかなりきつい。しかし、一番動けるだろう。

「う、うぅ・・・」

「良かった。シャイ団長も無事みたいです」

「がっつり、足溶かされてるけどね」

 頼みの綱だったシャイ団長も既に、戦闘が出来ない状態のようだ。

「それにしてもなんだかダルイな・・・体が鉛みたいに重いヨ・・・」

「アタシも・・・痛いのもあるけど、体を動かす気になれないわ」

 俺もである。何だか、体に重りが付いているような体調不良が発生している。

 何故だろうと思っていると、足元に魔術師隊の人の死体が転がっているのをみてようやく気づいた。

「安全地帯が崩壊したからか・・・」

 生き残った魔術師隊と呪術師は開戦前の一割。生き残った人達も怪我が酷くて、とてもじゃないが魔術に集中は不可能。

 つまり、俺達の体調がよろしく無いのは、〈災害〉の呪いと毒のせいである。

 文字だけを見ると、ただの絶望に捉えられるかもしれないが、そんな事はない。

 〈災害〉の開戦時の毒と呪いは凄まじく、一呼吸しただけで嘔吐する程だった。

 しかし、今は嘔吐まではいっておらず、風邪をひいた時のような状態で済んでいる。

「〈災害〉が弱ってるお陰か・・・」

「もう、虫の息みたいだしね」

 理由は〈災害〉の衰弱。あともうひと押しと言ったところだろうか?

 体も最初と比べて随分と小さくなっており、推定10mぐらいになっている。

 ドラゴンの形をとっていた時はまるで見えなかった核も、薄っすらと見えている。核は直径40cmぐらいか?スライムの核にしては段違いレベルで大きい。

「じゃあ、もう一発いっちゃおっか!」

「そうですね──あれ?」

「どうしたの?シュエリーヌ王女?」

「ま、魔力が練れない・・・魔力が無い・・・」

「え!?もしかしてさっきの治癒魔術で使い果たした!?もしかしてわたしも!?」

 シュエリ王女の発言通り、先程までは健在だった溢れるような魔力を感じない。リリからも全く感じない。

 使い果たしたと2人は思っているが、恐らく違う。確かに魔術師隊と一緒になって、雷の魔術を容赦なく撃っていたが、それでも魔力は4割程残っていた。

 それなのに、今は何故か全く残っていない。ただの治癒魔術ですっからかんになる程消耗するはずがない。

 残された原因は1つ、〈災害〉だ。

「多分だけど、〈災害〉は魔力吸収魔術マジケエフージオを覚えているんだと思う・・・」

「ロット2世に使った時から若干思ってたけど、厄介だね・・・」

「ま、魔力無い私なんて・・・ただの役立たずの木偶の坊です・・・」

「ここまで貢献してきたんですからそんな事思ってる奴なんていませんよ。少なくても俺達はね」

 滅国の魔物カースドラゴンスライムをここまで弱らせる事ができたのは、他でもないリリとシュエリ王女の魔術のおかげだ。

 彼女らがいなかったら俺達はとっくのとうに全滅していただろう。

 俺もシャープもモネもそう思っているのだが、本人は全くそう思っていないようで、項垂れて涙している。

「気にしないで下さい。あとはほとんど何もやってない俺が何とかするんで!」

「て言ってもどうやって戦うの?僕とモネはもう戦えないし、魔力も自分の身を守るためにほとんど使っちゃった・・・手段がないよ?」

「ゲホッ!・・・それにタイムリミットもあるしな」

 呪いと毒は弱まったが、それでも体を蝕んでいる。早いとこ決着つけないとこちらが参ってしまう。

 弓矢で貫くか?いや、核には届かない。だとしたら、死ぬ覚悟で体内に突っ込んで直接叩くしかないか?

「ヒスイ!〈災害〉が近づいて来てる!」

「トニトゥ────ゲホッ!ゴホッ!」

 肺に毒が蔓延して、上手く魔術が唱えられない。咳を吐けば吐くほど、血が出てくる。マシになった程度で、全然効いている。

今の弱った状態で、雷の魔術を打ち込めば、確実に仕留められる。なのに、それが出せない。もどかしい気分だった。

 慌てて、抜刀するが、体が痛くて力が入らない。

 情けなくふらついている敵を見て、〈災害〉はどう思うだろうか?チャンスだと思うだろう。

 残りわずかな毒呪液を俺達に向かって吐いてくる。先程の爆撃機モードと比べたらとても遅い。吐き出した後で防御魔術を唱えても防げるぐらいには遅い。

 しかし、肝心の魔術が唱える事ができない。避ける事はできるが、後ろには動けない仲間達がいる。

 血反吐を吐いてでも、防御魔術を唱えなくては・・・!!

「ヒスイ様!失礼します!『マジケエフージオ』!!」

 体内に僅かに残っていた魔力が、跡形も無く消える。一瞬何事かと驚いたが、すぐ横にシュエリ王女がいたので、すぐに彼女の仕業だと気がついた。

「間に合いました!!───防御魔術トゥエレ!!」

 俺から奪った魔力を使い、彼女は防御魔術を唱えて、小さな結界を作り、毒呪液から俺達を守ったのだ。

「ハァ・・・ハァ・・・シュエリ王女、大丈夫なんですか?」

 俺達が毒と呪いで苦しみ、魔術も唱えられない中、彼女はスラスラと唱えた。

 咳払いもしていなければ、吐血もしていない。全く異常の無い健康体。

 この過酷な環境下でも正常な王女の腰には、見覚えのある宝剣が携えられていた。
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