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4章 最終防衛戦門
7話 ドワーフとエルフはどう頑張っても仲が悪い
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数十分後、俺達は、国民に挨拶する事なく、ナチュレを出て、シャイ団長が予め用意していた馬車に乗っていた。
馬車に揺られる事、約数時間。ザナに入った時、最初に訪れたグレイシャを通り過ぎて、門へと向かう。
「・・・・・・」
「シュエリ王女?何か気になる事でも?」
「いえ、先程の町を観光してみたかったなと思いまして・・・」
つい半年前まで監禁されていたシュエリ王女。シャイ団長の情報によると、今回が初めてのお出かけらしい。
今まで183年間、黄金の森から出た事がない・・・というよりも、出してもらえなかったらしい。
なので、馬車に乗ってからずっと、シュエリ王女は馬車から顔を出して、外を眺めている。シャープ曰く、ナチュレに行くまでの俺のようらしい。
「それと、ヒスイ様。私の事を王女と呼ぶのはやめて、シュエリとお呼び下さい。いつ何処で監視しているのか分からないので」
「分かりましたよ、シュエリ・・・・・さん」
可愛らしいブーイングが鳴る。今、シュエリさんは『末を見る者』から逃れる為、リオに避難中・・・否、亡命中。
服装も、一介の旅の魔術師のような質素かつ動きやすそうな服装へと変化している。庶民の服を着るのは初めてらしく、とても喜んでいた。
「ところで、シュエリーヌ。日本語は大丈夫?」
「ええ、勿論。この3日間で、日常会話はマスターしました。応用は後程ゆっくりと学びたいと思います」
これは決して誇張ではなく、シュエリさんは日本語で会話が可能となっている。3日という速さには、驚きを隠せなかったが、城に仕えている人はまるで驚いていなかったので、これが彼女にとって普通なのだろう。
シャイ団長も、小声で「相変わらずの脳の回転。ヒスイ様籠絡作戦は失敗しましたが」と言っていたのは、しばらく耳から離れなさそうだ。
「それと皆様も、シュエリーヌではなく、シュエリと呼んで下さい。堅苦しい上に、高貴な身分だと疑われてしまうので。勿論、ハーフドワーフさんも良いですよ?」
「いやいや、流石に申し訳ないですよ~シュエリーヌ様~でもぉ、確かにぃ、このままだと怪しまれるからぁ、愛称で呼ばせてもらぅねぇ」
「愛称!それは良いですね。私も一度はつけてもらいたかったんです」
「では、僭越ながらアタシが付けさせてもらいますぅ・・・引きこもりヤンデレ独占エルフ」
「死にたがりは戦いの時だけじゃないみたいですね・・・その喧嘩、勝ってやろうじゃないですか、ツンデレゴリラドワーフ」
シュエリさんの手の平には魔力が、モネさんの手の平にはモーニングスターが握られる。
エルフドワーフは犬猿の仲。逆に良く今まで喧嘩しなかったなと心底思う。
喧嘩はやらせておいた方がガス抜きになるので、良いのだが、今回に限っては、馬車の中なので全力でシャープと一緒に止めさせてもらう。
「ヒスイ、とりあえずアタシ達を降ろしな。決着をつけなきゃいけねぇ」
「ヒスイ様、申し訳ないのですが、馬車を止めてくださいまし。私にはこのドワーフを始末する使命があるのです」
ダメだ、目がガチだ。敵対者に向ける目つきを互いに向け合っている。ここで、余計に止めたらこちらが怪我をする。仕方ない。
「御者さん!ストップ!一旦止まって!!」
しっかり聞こえていたようで、ピタリと止まる。本当申し訳ございません。
止まると同時に、シュエリさんとモネさんは互いに殺意剥き出しで、睨みつけながら馬車を降りて、臨戦状態へと突入。
頼むからどちらかが死ぬまで戦うとかはやめてくれよ。
「ヒスイ!合図はお前に任せた」「ヒスイ様!合図はお任せします」
「分かった。いっても半殺しで済ましてよ?」
「治癒はわたしに任せて!一瞬で治してあげる!体からすんごい音鳴るけど!」
それを人は無理矢理治すという。とてつもなく早いけど、荒療治なんだよね、リリの治癒魔術って。
「それじゃあ、よぅい・・・・スターット!!」
やはり、ドワーフとエルフはどこまで行っても争わなければならない間柄なのだろうか。
2人の戦いの火蓋が切られた。まず、最初に攻撃を仕掛けたのは、予め魔力を高めていたシュエリさん。
手を前に突き出すと、バスケットボールサイズの火球を作成。迫ってくるモネさんに向かって、時速約140kmで放った。
プロ野球選手の投球と同レベルの速度で放たれたそこそこ大きな火球だったが、これもまた、野球のバッターのように、火球を天高くにめがけて吹き飛ばした。
「くっ!そのモーニングスター。ただの武器ではありませんね!」
「その通り!!魔術が使えないから、せめて対抗できるようにと、魔術をぶん殴れるようにしておいたんだよ!」
その付与は、確かに彼女にとって有効かもしれない。吹き飛ばされた火球は、青空に向かって飛んでいき、いつの間にか急接近していた強靭な爪を持つハヤブサのような魔物に激突。
「キェエエエエエエエエエエ!!」
ハヤブサのような魔物は、断末魔を上げながら、焼き鳥になって、地面へと墜落した。
鼓膜を刺激するような鋭い断末魔だったので、対決に集中していた2人も、手を止め、空を見上げる。観戦していた3人も見上げる。
ハヤブサのような魔物が飛んできた方向から複数の巨大な影が迫って来ているのを確認。
凝視して姿を確認すると、巨大なコウモリが、ミノタウロスを足で掴むように運んでいた。
ミノタウロス達はある程度俺達に近づくと、コウモリによって地面に落下。見事に着地すると、戦斧を構え、俺達の前へと立ちはだかった。
その数、4体。コウモリは8体。これは間違いなく────
「賢者ルミナの差し金か・・・」
喧嘩が敵の早期発見に役立つなんて思ってもいなかった。
数十分後、俺達は、国民に挨拶する事なく、ナチュレを出て、シャイ団長が予め用意していた馬車に乗っていた。
馬車に揺られる事、約数時間。ザナに入った時、最初に訪れたグレイシャを通り過ぎて、門へと向かう。
「・・・・・・」
「シュエリ王女?何か気になる事でも?」
「いえ、先程の町を観光してみたかったなと思いまして・・・」
つい半年前まで監禁されていたシュエリ王女。シャイ団長の情報によると、今回が初めてのお出かけらしい。
今まで183年間、黄金の森から出た事がない・・・というよりも、出してもらえなかったらしい。
なので、馬車に乗ってからずっと、シュエリ王女は馬車から顔を出して、外を眺めている。シャープ曰く、ナチュレに行くまでの俺のようらしい。
「それと、ヒスイ様。私の事を王女と呼ぶのはやめて、シュエリとお呼び下さい。いつ何処で監視しているのか分からないので」
「分かりましたよ、シュエリ・・・・・さん」
可愛らしいブーイングが鳴る。今、シュエリさんは『末を見る者』から逃れる為、リオに避難中・・・否、亡命中。
服装も、一介の旅の魔術師のような質素かつ動きやすそうな服装へと変化している。庶民の服を着るのは初めてらしく、とても喜んでいた。
「ところで、シュエリーヌ。日本語は大丈夫?」
「ええ、勿論。この3日間で、日常会話はマスターしました。応用は後程ゆっくりと学びたいと思います」
これは決して誇張ではなく、シュエリさんは日本語で会話が可能となっている。3日という速さには、驚きを隠せなかったが、城に仕えている人はまるで驚いていなかったので、これが彼女にとって普通なのだろう。
シャイ団長も、小声で「相変わらずの脳の回転。ヒスイ様籠絡作戦は失敗しましたが」と言っていたのは、しばらく耳から離れなさそうだ。
「それと皆様も、シュエリーヌではなく、シュエリと呼んで下さい。堅苦しい上に、高貴な身分だと疑われてしまうので。勿論、ハーフドワーフさんも良いですよ?」
「いやいや、流石に申し訳ないですよ~シュエリーヌ様~でもぉ、確かにぃ、このままだと怪しまれるからぁ、愛称で呼ばせてもらぅねぇ」
「愛称!それは良いですね。私も一度はつけてもらいたかったんです」
「では、僭越ながらアタシが付けさせてもらいますぅ・・・引きこもりヤンデレ独占エルフ」
「死にたがりは戦いの時だけじゃないみたいですね・・・その喧嘩、勝ってやろうじゃないですか、ツンデレゴリラドワーフ」
シュエリさんの手の平には魔力が、モネさんの手の平にはモーニングスターが握られる。
エルフドワーフは犬猿の仲。逆に良く今まで喧嘩しなかったなと心底思う。
喧嘩はやらせておいた方がガス抜きになるので、良いのだが、今回に限っては、馬車の中なので全力でシャープと一緒に止めさせてもらう。
「ヒスイ、とりあえずアタシ達を降ろしな。決着をつけなきゃいけねぇ」
「ヒスイ様、申し訳ないのですが、馬車を止めてくださいまし。私にはこのドワーフを始末する使命があるのです」
ダメだ、目がガチだ。敵対者に向ける目つきを互いに向け合っている。ここで、余計に止めたらこちらが怪我をする。仕方ない。
「御者さん!ストップ!一旦止まって!!」
しっかり聞こえていたようで、ピタリと止まる。本当申し訳ございません。
止まると同時に、シュエリさんとモネさんは互いに殺意剥き出しで、睨みつけながら馬車を降りて、臨戦状態へと突入。
頼むからどちらかが死ぬまで戦うとかはやめてくれよ。
「ヒスイ!合図はお前に任せた」「ヒスイ様!合図はお任せします」
「分かった。いっても半殺しで済ましてよ?」
「治癒はわたしに任せて!一瞬で治してあげる!体からすんごい音鳴るけど!」
それを人は無理矢理治すという。とてつもなく早いけど、荒療治なんだよね、リリの治癒魔術って。
「それじゃあ、よぅい・・・・スターット!!」
やはり、ドワーフとエルフはどこまで行っても争わなければならない間柄なのだろうか。
2人の戦いの火蓋が切られた。まず、最初に攻撃を仕掛けたのは、予め魔力を高めていたシュエリさん。
手を前に突き出すと、バスケットボールサイズの火球を作成。迫ってくるモネさんに向かって、時速約140kmで放った。
プロ野球選手の投球と同レベルの速度で放たれたそこそこ大きな火球だったが、これもまた、野球のバッターのように、火球を天高くにめがけて吹き飛ばした。
「くっ!そのモーニングスター。ただの武器ではありませんね!」
「その通り!!魔術が使えないから、せめて対抗できるようにと、魔術をぶん殴れるようにしておいたんだよ!」
その付与は、確かに彼女にとって有効かもしれない。吹き飛ばされた火球は、青空に向かって飛んでいき、いつの間にか急接近していた強靭な爪を持つハヤブサのような魔物に激突。
「キェエエエエエエエエエエ!!」
ハヤブサのような魔物は、断末魔を上げながら、焼き鳥になって、地面へと墜落した。
鼓膜を刺激するような鋭い断末魔だったので、対決に集中していた2人も、手を止め、空を見上げる。観戦していた3人も見上げる。
ハヤブサのような魔物が飛んできた方向から複数の巨大な影が迫って来ているのを確認。
凝視して姿を確認すると、巨大なコウモリが、ミノタウロスを足で掴むように運んでいた。
ミノタウロス達はある程度俺達に近づくと、コウモリによって地面に落下。見事に着地すると、戦斧を構え、俺達の前へと立ちはだかった。
その数、4体。コウモリは8体。これは間違いなく────
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喧嘩が敵の早期発見に役立つなんて思ってもいなかった。
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