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4章 最終防衛戦門

14話 今日はもう寝よう

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 冷蔵庫に入っていた食材だけで作ったペペロンチーノだったが、パスタ麺を少し多めに茹でた事でそこそこ満腹。

 疲れは先程よりも遥かにマシになっていたが、それでも睡眠を取らなくて良いというレベルではない。

 食材を洗い場で洗う。その隙に、リリとシュエリを風呂に入れた。互いに2人で入る事には抵抗がなかったようで、すんなりと入ってくれた。

 洗い物を終え、ナチュレの侍女から渡された薄緑のパジャマと、リリのお気に入りのパジャマを2人が取りやすい位置に置いておく。

 数分後、少し髪を濡らした2人が浴室から出てきた。庶民の家は初めてなシュエリさんが困惑するか心配だったが、よろけるような表情から察するに満足したようだ。

「リオの一般家庭にはシャワーがあるんですね。進歩の違いを感じさせます」

 ザナのシャワーは今の所、ごく一部の貴族や王族のみが使う事ができる貴重品。そんな認識の物が、ただのボロアパートにあったら、驚くのも納得だ。

「それじゃあ、俺入ってくるから」

「でしたら、私がお背中を─────」

「いやいや、大丈夫ですから」

「そうなのですか?私が読んだ本には、そうしろと・・・」

「「絶対エロ本読んだだろ」」

 誰だ。勉強用の本にエロ本紛れ込ませたのは。

「へぇ~~・・・意外とおませさんなんですねぇ~~エルフの王族って言うのは」

「おませと言われる程幼くはありません。それに、素直になれなくて、何もできないハーフドワーフの炭鉱夫にだけは言われたくありません」

「まじで風呂入ってる時に喧嘩しないでくれよ?」

「勿論です!」「するわけねーじゃん」

「何かあったら、わたしが止めるから!」

 リリに任せて風呂に入る。砂と土で汚れた体を、シャワーで洗い流す。体の汚れが洗い流されたからか、心に余裕が生まれ、考え事が出来るようになった。

「大門寺さんにお別れ言う事、できなかったな・・・」

 たった数分間の関係だったとはいえ、死んでほしくは無かった。死ぬとしても、最後に別れの言葉が言いたかった。

 頭を洗い終え、体をボディーソープで洗い始める。体を洗っていると、家に帰ってきた感じが一気に感じられる。

「体が俺の言う事を聞かなかったけど、病院行った方が良いかな?もしかしたら、毒か呪いの後遺症の可能性もあるし・・・」

 湯舟に入ると、心底日本に生まれて良かったと思うのは何故だろうか。後遺症の問題は大きい上に大変なのに、どうでもよくなってしまうのは、風呂のせいなのか、それとも俺の危機管理能力の低さのせいなのか。

「まあ、明日考えるか・・・」

 難しい事は後回し。今の所、戦闘に体が勝手に向かってしまうだけだし、日常生活に問題はない。もし、普通に生活するのに、問題が生じたら呪術師か医者に相談しに行こう。

「あっ、シュエリ王女・・・シュエリさんの布団どうしよう・・・」

 リオに来る事があまりにも急に決まった事なので、ホテルを用意する暇もなく、仕方なく俺の家に泊まる事になったが、寝る為に必要かつ肝心な布団又はベッドがない。

 今家にあるのは、リリ用の布団だけ。我慢して、2人仲良く布団で寝てもらうほかない・・・・。



「成程・・・私の寝る所が無いと・・・確かに急な事でしたものね」

「はい。本当すみません」

「ヒスイ様が謝る事ではありません。それに、解決できない問題ではないではありませんか」

 流石、王女。理解が早い。申し訳ないが、リリと仲良く布団を────

「ヒスイ様と同じベッドで寝れば済む話ですから・・・ネ?」

 やばい爆弾を投下してきたね~。リリの視線が痛いよ。

「それはダメだよーシュエリ~。ヒスイのお隣はわたしなんだからさ。新参はしっかりとあの布団で下積みをしてからだよ?」

「下積みって何?寝るのに下積みなんてあるの?」

「ヒスイ様の戸惑いっぷりから察するに・・・嘘、ですね?そんなルールはございませんよね?リリックさんが今勝手に急造したルールと見受けられますが・・・」

「勘の良いエルフは嫌い・・・いや、別に嫌いではないな。でも、寝取られだけは勘弁だし」

「別に恋人じゃないでしょ」

「一緒の墓に入るから良いじゃん」

「いきなり重いな」

 そんな話聞いてないよ。

「それでは、3人で同じベッドに寝るのはどうでしょう?それなら、安心では?」

「良いね!確かに安心だし!2人とも満足だね!」

「俺は全然安心じゃないけどね」

 家主の俺に拒否権は無かった。
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