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4章 最終防衛戦門
15話 安全な睡眠、迫る危険な手
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「じゃあ、ヒスイが真ん中でわたしが左側!シュエリが右側ね!」
「分かりました。ではヒスイ様が最初に寝転がって下さい。私達は上から被さる様にベッドに寝転がるので」
「・・・はぁ。分かりましたよ」
渋々、ベッドのど真ん中に身を委ねると、ついてくるようにリリとシュエリが左右に寝転がってきた。
・・・うん、狭い。とてつもなく狭い。少しでも動いたら、2人が床に落ちてしまう程に余裕がない。元から、使っているベッドはシングル。3人も入れる余裕なんてない。
「フフ・・・どうしてでしょう?寝づらいのに、なんだかとても楽しい気分です」
「ね~~不思議だよね。寝心地は悪いのに、心地良いんだから」
近隣への迷惑を考慮してなのか、俺の耳付近で小声でささやくように会話するリリとシュエリ。
「こうやって誰かと一緒に寝るのはいつぶりでしょうか・・・150年ぶりかもしれません」
「わたしはヒスイに合うまでまるで無かったかな?寝るまで一緒にいてくれた従者の人達はいたけど、一緒には寝てくれなかったし・・・シュエリはお母さんと一緒に寝てもらえた?」
「はい。150年前に一緒に寝たというのも母です。また、一緒に寝たかったのですが・・・それは叶いませんでした」
「そっか・・・でも、お母さんがいる時に一緒に寝たり、遊んだりできて良かったね。わたしなんて、20の頃にはお母さん死んでたから」
「まさか・・・魔王はDVというのをやっていたのですか!?」
「ううん。ただの病気。まあ、でも、何も処置を施さなかったから、解釈次第でDVに見えるかも」
人間換算で、リリは2歳、シュエリさんは3歳くらいの時に母親を亡くしている事になる。母親と一緒に暮らせなかった事を踏まえると、彼女達の積極的な行動は、愛を求める行動にも見える。
そう考えると、彼女らを異性として見る事はできな・・・いや、無理だ。肉体と精神年齢が俺と同じ異性を妹のように扱うのは些か無理がある。
無邪気なリリはまだしも、少し大人びているシュエリさんはどうしても異性として意識してしまう。
だが、もしここで意識しすぎて、俺の俺が、立ち上がったら、まじで何が起こるか分からない。分かる事は今の疲れている俺にとって良くない事というだけ。
「ヒスイ様。今もしかして・・・」
「なななな何かな?俺は何も考えてないですよー。寝る事だけ考えてます!」
「・・・やっぱり。申し訳ございません。悲しい話ばかりして。まさか、リリック様とこんなにも共通する事があるとは思わなくてつい、話が盛り上がってしまいました・・・」
「へっ?いや、気にしないでください!周りが暗いと、気分も暗くなっちゃいますもんね!俺も、夜は後ろ向きな考え事しちゃうんで2人の気持ちは痛い程分かりますよ!」
「フフ・・・そういって貰えると助かります・・・おや?リリック様?」
今更だが、リリが眠っていた事に気が付く。疲労が溜まっていたのだろう。ゆっくり眠ってほしい。
「寝てしまいましたか・・・では、私達も寝ましょう。明日も早いのですし」
「そうですね。おやすみなさい」
シュエリさんは、狙われているので、四六時中俺達と行動を共にしなくてはならない。なので、俺らの門番の仕事にも巻き込む事となり、俺らと同じ時間に起きる事となる。
やっと、寝る雰囲気になって安心して、目を瞑ったのも束の間。シュエリさんが耳元でこう囁いた。
「我慢できなくなったらいつでも申し上げてください。私、準備万端ですので・・・ネ?」
「・・・・・・おやすみなさい」
やっぱり駄目だ。異性として見るなと言われる方がキツイ・・・。
結局、寝るのに2時間かかってしまった。
★
同時刻、混沌荘────翡翠の借りているアパートの外。
すっかり、外出する人もいなくなった深夜。1人の女が、電柱に隠れながら翡翠の使用している部屋を視ていた。
「チィッ・・・結界が張られてる。これじゃあ、寝ている間に攫う事はできないな・・・」
女の目的は翡翠ではなく、2人の王女。女は、末を見る者の組員であり、組織のトップであるルミナの忠実なる下僕。忠犬である。
敬愛するルミナに手土産を持っていきたかったようだが、アパート全体に魔術製の強力な結界が張られている為、中に入る事が出来ない模様。
「ただ強いだけじゃない・・・人間を識別する機能と、警報が鳴る機能までついてる。こんなにも精密な設定の結界を張れるのは、シュエリーヌ王女しかいないわね」
爆発力のリリック魔王女と、精密性のシュエリーヌ王女。2人もいれば怖い物なしという事か・・・。
「これはかなり面倒だ・・・今日の所は退散して作戦を考えよう」
「すみません・・・少しよろしいでしょうか?」
退散しようとしたのも束の間。後ろから声をかけられてしまう。声をかけてきたのは夜間巡回中の警察官。
個では大した事は無いが、組織ではかなり厄介な奴ら。ここで、殺して逃げる事もできるが、警察は、少しの証拠からでも、特定してくる。
ここは、素直に職質を受けた方が良いだろうか?否、素直に答えたら、この場所にいる事自体怪しまれる。かくなる上は────
「『睡眠魔術』」
「むにゃあ・・」
魔術で眠らせるしかない。
魔術で強制的に眠らせた警察官を放置して、女は闇の中へと消えていった。
「分かりました。ではヒスイ様が最初に寝転がって下さい。私達は上から被さる様にベッドに寝転がるので」
「・・・はぁ。分かりましたよ」
渋々、ベッドのど真ん中に身を委ねると、ついてくるようにリリとシュエリが左右に寝転がってきた。
・・・うん、狭い。とてつもなく狭い。少しでも動いたら、2人が床に落ちてしまう程に余裕がない。元から、使っているベッドはシングル。3人も入れる余裕なんてない。
「フフ・・・どうしてでしょう?寝づらいのに、なんだかとても楽しい気分です」
「ね~~不思議だよね。寝心地は悪いのに、心地良いんだから」
近隣への迷惑を考慮してなのか、俺の耳付近で小声でささやくように会話するリリとシュエリ。
「こうやって誰かと一緒に寝るのはいつぶりでしょうか・・・150年ぶりかもしれません」
「わたしはヒスイに合うまでまるで無かったかな?寝るまで一緒にいてくれた従者の人達はいたけど、一緒には寝てくれなかったし・・・シュエリはお母さんと一緒に寝てもらえた?」
「はい。150年前に一緒に寝たというのも母です。また、一緒に寝たかったのですが・・・それは叶いませんでした」
「そっか・・・でも、お母さんがいる時に一緒に寝たり、遊んだりできて良かったね。わたしなんて、20の頃にはお母さん死んでたから」
「まさか・・・魔王はDVというのをやっていたのですか!?」
「ううん。ただの病気。まあ、でも、何も処置を施さなかったから、解釈次第でDVに見えるかも」
人間換算で、リリは2歳、シュエリさんは3歳くらいの時に母親を亡くしている事になる。母親と一緒に暮らせなかった事を踏まえると、彼女達の積極的な行動は、愛を求める行動にも見える。
そう考えると、彼女らを異性として見る事はできな・・・いや、無理だ。肉体と精神年齢が俺と同じ異性を妹のように扱うのは些か無理がある。
無邪気なリリはまだしも、少し大人びているシュエリさんはどうしても異性として意識してしまう。
だが、もしここで意識しすぎて、俺の俺が、立ち上がったら、まじで何が起こるか分からない。分かる事は今の疲れている俺にとって良くない事というだけ。
「ヒスイ様。今もしかして・・・」
「なななな何かな?俺は何も考えてないですよー。寝る事だけ考えてます!」
「・・・やっぱり。申し訳ございません。悲しい話ばかりして。まさか、リリック様とこんなにも共通する事があるとは思わなくてつい、話が盛り上がってしまいました・・・」
「へっ?いや、気にしないでください!周りが暗いと、気分も暗くなっちゃいますもんね!俺も、夜は後ろ向きな考え事しちゃうんで2人の気持ちは痛い程分かりますよ!」
「フフ・・・そういって貰えると助かります・・・おや?リリック様?」
今更だが、リリが眠っていた事に気が付く。疲労が溜まっていたのだろう。ゆっくり眠ってほしい。
「寝てしまいましたか・・・では、私達も寝ましょう。明日も早いのですし」
「そうですね。おやすみなさい」
シュエリさんは、狙われているので、四六時中俺達と行動を共にしなくてはならない。なので、俺らの門番の仕事にも巻き込む事となり、俺らと同じ時間に起きる事となる。
やっと、寝る雰囲気になって安心して、目を瞑ったのも束の間。シュエリさんが耳元でこう囁いた。
「我慢できなくなったらいつでも申し上げてください。私、準備万端ですので・・・ネ?」
「・・・・・・おやすみなさい」
やっぱり駄目だ。異性として見るなと言われる方がキツイ・・・。
結局、寝るのに2時間かかってしまった。
★
同時刻、混沌荘────翡翠の借りているアパートの外。
すっかり、外出する人もいなくなった深夜。1人の女が、電柱に隠れながら翡翠の使用している部屋を視ていた。
「チィッ・・・結界が張られてる。これじゃあ、寝ている間に攫う事はできないな・・・」
女の目的は翡翠ではなく、2人の王女。女は、末を見る者の組員であり、組織のトップであるルミナの忠実なる下僕。忠犬である。
敬愛するルミナに手土産を持っていきたかったようだが、アパート全体に魔術製の強力な結界が張られている為、中に入る事が出来ない模様。
「ただ強いだけじゃない・・・人間を識別する機能と、警報が鳴る機能までついてる。こんなにも精密な設定の結界を張れるのは、シュエリーヌ王女しかいないわね」
爆発力のリリック魔王女と、精密性のシュエリーヌ王女。2人もいれば怖い物なしという事か・・・。
「これはかなり面倒だ・・・今日の所は退散して作戦を考えよう」
「すみません・・・少しよろしいでしょうか?」
退散しようとしたのも束の間。後ろから声をかけられてしまう。声をかけてきたのは夜間巡回中の警察官。
個では大した事は無いが、組織ではかなり厄介な奴ら。ここで、殺して逃げる事もできるが、警察は、少しの証拠からでも、特定してくる。
ここは、素直に職質を受けた方が良いだろうか?否、素直に答えたら、この場所にいる事自体怪しまれる。かくなる上は────
「『睡眠魔術』」
「むにゃあ・・」
魔術で眠らせるしかない。
魔術で強制的に眠らせた警察官を放置して、女は闇の中へと消えていった。
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