異世界と繋がる不思議な門を警備する仕事に就きしました!

町島航太

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4章 最終防衛戦門

20話 裏の仕事と行きましょうか!!

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「・・・今何時?」

「18時58分。夜勤達も来たよ」

「そっか・・・・・・晩御飯はカレーうどんで良い?」

「「「文句ないでーす」」」

 凝った食事を作る気力は残っていない。カレーは良い。色んな料理に変身させる事が出来る。

「ヒスイ・・・僕も行っても良い?」

「大丈夫・・・あるから」

 話すのは必要最低限以下の会話のみ。それでもしっかりと意図が伝わるのは、彼等の友情と付き合いの長さを物語っている。

「ひ、翡翠きゅん・・・」

「鳩山せんぱい・・・後はよろしく」

 今までは普通に会話をしていた翡翠と鳩山だが、軽い返事しか行われなくなってしまった。鳩山はショックで仕方なかったが、翡翠が疲弊している事をしっかりと理解している為、彼を引き留めるような行為はしなかった。

 鳩山が、翡翠と会い、会話できるのは昼勤と夜勤の交代の時のみ。この時を楽しみの1つとしている乙女鳩山にとっては、とても辛かった。

「翡翠きゅん・・・ひすいきゅんが冷たいよぉぉぉぉぉ!!」

「仕方ないだろ。ただでさえ昼勤は今一番大変なんだし」

「知ってるわ!んな事!実際私のマンションの一部だってゴーレムに破壊されたからなぁ!!」

「俺のマイホームの庭の花も荒らされてて最悪だよ」

 翡翠達を狙ってなのか、魔物の襲撃は昼に集中しており、夜勤は今までと変わらず通常通りの数しか魔物は襲ってこない。

 その為、今一番元気かつ健康的なのは、夜勤で門番をしている者だろう。

「ううう・・・翡翠きゅん・・・」

「おお・・・重症だねぇ~・・・」

「だって、唯一の交流の時が消えちゃったんですよ!?そりゃあ、落ち込みますよ!ただでさえ、彼の周りには私より若くて可愛い子ばっかりなのに・・・これじゃあ、翡翠きゅんにアタックできない!それ以前に過労死しちゃう!!」

 当たり前だが、体力には限界がある。睡眠と食事による栄養補給は行っているが、翡翠達の体には子供の貯金のように解消しきれなかった小さな疲れがたまってきている。

 今、どのくらい溜まっているかは分からないが、このまま溜まり続けたら、パフォーマンスは落ちていき、魔物に殺されるか、過労死の未来しか待っていない。

 魔物を送り込んでいる敵・・・『末を見る者』はそれが目当てなのだろう。翡翠達を疲弊させ、隙を生ませて、2人の王女を攫う。地道だけど、確実な方法だろう。

「って、主任!?いつの間に?」

 鳩山は机に突っ伏して泣いていたので、しばらく気づけなかったが、いつの間にか横に主任が立っていた。ここ2週間、全く姿を現さなかった人の突然の登場に里見と鳩山は驚く。

「主任。一体何処に行ってたんですか・・・」

「また、何か進めてたとか?」

 主任は意味もなくいなくなる人ではない。門番達の周知の事実と言えるだろう。今まで数日いなくなる事は何度かあったが、2週間も姿を現さない事は無かった。相当の収穫を持って現れたはず。

 そして、このタイミング。俺達が出勤してきた時間帯にやってきたという事は俺と鳩山に頼みたいからだろう。

「その顔からしてオレが何か持ってきたのは分かってるみたいだね・・・当ててみな?」

 このタイミングで俺らにお願いごとと言ったら、1つしか考えられない。

「『末を見る者』って組織関連?」

「正解♡リオにもいたからボコボコにして四肢もぎにいこう♡」

「四肢を切るのは私にやらせてください・・・翡翠きゅんを苦しめた罪、そいつらの四肢と命で払ってもらいましょうよぉぉぉぉぉぉ!!」

 語尾に変な♡を付けている主任も大概だが、平気で四肢を切り裂く気満々の鳩山の方が断然やばい。門番という職業に就いていなかったら、殺人鬼とかになっていたんじゃないか?

「それで?いつ行くんです?」

「へっ?今からだけど?」

 急すぎる!あまりにも急すぎる!!だとしたらもう少し前から教えてほしかった!当日教えるんじゃなくて!!

「ごめんごめん!実は今さっき特定したばっかりなんだよね~~つまりは、見つけたてほやほやってワケ!」

「ナルホド!ソレハ最高!!」

「でも、門は誰が守るんです?」

「ああ、大丈夫。他の連中に任せておいたから。多分そろそろ来ると思うんだけど・・・あ、来た」

 事務所の扉をスライドして入ってきたのは、別の日の夜勤の門番。既に手配済みというわけか。

「で?何処に行くんです?勿論、俺も同行します」

「里見院・・・とりあえず、銀座から行こうか~」

 反撃開始の瞬間である。
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