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最終章 探究者と門番
16話 真の護り手
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「pyooooo!!」
「う~ん・・・武器の相性がここまでダイレクトに戦いに影響を及ぼすなんて・・・参ったな」
シャープの使用武器は、槍に形状が限りなく近いハルバードという武器。柄が細いので、強力かつ重い一撃を防ぐのには向いていないのだ。
「Pyo!!」
「がぁっ!!」
風を切る速度のパンチをよけきるのは難しく、跳躍して避けたと思ったけど、足にぶつかってしまう。ぶつかった瞬間、絶対になってはいけない音が鳴った。激痛も走っている。これは確実に折れたな。
「Pyooooooooooo!!」
格闘ラビットも気づいたようだ。本格的に絶体絶命のピンチだ。リリックが、速攻で治癒魔術を使う準備を始めてくれているが、絶対に間に合わない。さて、どうしたものか・・・。魔術は速すぎて当たらない・・・ならば、動けないようにして、当てればよいのでは?
「ふぅ・・・負けか」
「おいバカ!諦めるんじゃねぇ!!」
「ごめん3人とも!ヒスイによろしく伝えといて!!」
「「「シャープ!!」」」
今生の別れを仲間達に伝える。親友には伝えられなかったが、天国で見守っている事にしよう。人類の勝利を・・・。
「Pyoooooo!!」
格闘ラビットの正拳突きが、真正面から飛んでくる。このまま、喰らったら確実にあの世にまっしぐらだろう。
「ま、このまま死ぬつもりなんてないんだけどね」
分かっていると思うけども、今生の別れも嘘。ここで死ぬなんて1mmも考えていない。
「『弾性魔術』!!」
ザナとリオに共通して存在するもの。生物が生きるには必要不可欠だが、決して肉眼では見る事は出来ないもの空気。見えないけど、目の前にも確かに存在する空気、酸素にゴムのような弾性を付与する。
勿論、自分の目の前の空気に付与。見えないゴムの壁の完成だ。格闘ラビットは、僕ではなく、目の前に見えないけど確かに存在する弾む壁を殴ってしまう。
「Pyo!?」
「アハハ・・・上手く拳が進まない!!って言いたそうな顔だね。ああ、このままでは進まないよ。だから、もっと力を強くしなきゃね」
「Pyoooooooooooooo!!」
「やっぱり人間の言葉が理解できるんだ。しかもしっかりと・・・」
意地になった格闘ラビットは、重心を深くし、拳に更なる体重をかけるが、中々破れない。ゴムは刃物にはめっぽう弱いが、純粋な打撃にはあり得ない程の耐久性を発揮するって翡翠が言ってたっけ。ありがとうね、ヒスイ。君にはいつも助けられてばかりだ。
「更に!!『拘束魔術』!!」
見えないゴムの壁にやけになって隙だらけの格闘ラビットをそのまま放置しておく人間は存在するだろうか?いや、存在しない。魔力で生成した鎖で、体の自由を奪うという保険をかける!!
「これで、自慢のスピードは出せなくなったわけだね。じゃあ、遠慮なくいってみようか!!」
「『セナ』!遅れてごめんシャープ!大丈夫だった?」
「うん!寧ろ、骨を無理矢理戻してる今の方がきついかも!!」
芋虫のように藻掻く格闘ラビット。僕の方は、リリックの治癒魔術で足が元に戻ったので最高のコンディションだ。足が戻る際に強烈な痛みを感じたが、痛みなんて、傷跡さえ残らなければ、忘れてしまう。
「それじゃあ、行こうか?・・・あの世に」
「PyooooPyooooooooo!!」
嫌がる格闘ラビットの頭を両手で鷲掴み、手の平に魔力を集中させる。頭に直接流すなら、やっぱりこの魔術に限る。一番残虐的に見えるけど、威力さえ、しっかりとしておけば、楽にあの世へと旅立たせる事が出来る一番人道的な方法。
「『トニトゥルーム』!!」
「Pyopyopyopyopyoooooooooooo!!」
僕の手を通して、格闘ラビットの頭に電撃が流れる。格闘ラビットはしばらく暴れたが、やがて、痙攣するだけになり、最後にはピクリとも動かなくなる。ここまでの流れでかかった時間、なんと10秒。あまりの速さに、僕も皆も驚いた。
「・・・ヒスイと一緒に観た囚人の映画で見た事がある・・・確か電気椅子ってやつだよね?」
「う、うん・・・もしかしたら、いけるかな~~と思って初めて雷の魔術をこんな使い方したけど・・・もうやらない方が良いかな?」
「あれ、格闘ラビットよりも雷に耐性が無い人間だから一瞬で死んでただけだけらね。普通に心臓刺すよりも遥かに楽に死なせてあげられるでしょうけど、見ててこっちが怖くなるから二度と使わないで。少なくとも、あたしの前では」
「了解・・・さてと、これで終わりかな?」
報告によると、鉄製の蓋を開けると、遺体があるって聞いたんだけど、そんな物は何処にもない。
「皆さん、見つけましたよ!!」
「それ、マンホールの蓋。似てるけど違う。可愛い絵柄付いてるし」
「本当にあるの。間違えじゃないの?」
「いえ、確かにありますよおチビ様。この地に降りてから強い魔力を感じていましたが、この花庭に来てからは明らかに強くなりました。ここにあるのは確実です」
「わたしも感じるよ。この近くにあるよ絶対!!」
「本当かな?守ってる魔物がいたら、近くにあるって聞いたんだけど・・・」
「守ってる魔物?何言ってんのシャープ」
「どういう事?モネ」
「あの格闘ラビットが、遺体でなくても、何かを守ってた風に見えたか?」
「・・・確かに」
ついでに言うならば、警官を襲っていた。赤い格闘ラビットの様子からしてかなりの数を殺している。付着している血の量からして、絶対に花庭を出て何人か殺している。
守り手なのに、遺体がある花庭から離れるだろうか?改造された魔物という事で勘違いしていたが、別に格闘ラビットは護り手ではないのでは?
「他に護り手がいるって事?」
「そういう事。んでもって、アイツらがその護り手だろうな」
モネが指差す先、花庭に合わない暗い土の上に佇む騎士達。ある者は、骨だけの馬に乗っており、ある者は、肉体が無く鎧だけで動いており、ある者は己の首を脇に抱えている。
「屍騎士団って感じかな?」
「ざっと、30人はいるよ?捌けるかな?」
「捌けるかな?じゃない捌くんだよ」
「これ終わったら美味しい物たらふく食べよ」
嫌々ながら、4人は武器を構えた。
「う~ん・・・武器の相性がここまでダイレクトに戦いに影響を及ぼすなんて・・・参ったな」
シャープの使用武器は、槍に形状が限りなく近いハルバードという武器。柄が細いので、強力かつ重い一撃を防ぐのには向いていないのだ。
「Pyo!!」
「がぁっ!!」
風を切る速度のパンチをよけきるのは難しく、跳躍して避けたと思ったけど、足にぶつかってしまう。ぶつかった瞬間、絶対になってはいけない音が鳴った。激痛も走っている。これは確実に折れたな。
「Pyooooooooooo!!」
格闘ラビットも気づいたようだ。本格的に絶体絶命のピンチだ。リリックが、速攻で治癒魔術を使う準備を始めてくれているが、絶対に間に合わない。さて、どうしたものか・・・。魔術は速すぎて当たらない・・・ならば、動けないようにして、当てればよいのでは?
「ふぅ・・・負けか」
「おいバカ!諦めるんじゃねぇ!!」
「ごめん3人とも!ヒスイによろしく伝えといて!!」
「「「シャープ!!」」」
今生の別れを仲間達に伝える。親友には伝えられなかったが、天国で見守っている事にしよう。人類の勝利を・・・。
「Pyoooooo!!」
格闘ラビットの正拳突きが、真正面から飛んでくる。このまま、喰らったら確実にあの世にまっしぐらだろう。
「ま、このまま死ぬつもりなんてないんだけどね」
分かっていると思うけども、今生の別れも嘘。ここで死ぬなんて1mmも考えていない。
「『弾性魔術』!!」
ザナとリオに共通して存在するもの。生物が生きるには必要不可欠だが、決して肉眼では見る事は出来ないもの空気。見えないけど、目の前にも確かに存在する空気、酸素にゴムのような弾性を付与する。
勿論、自分の目の前の空気に付与。見えないゴムの壁の完成だ。格闘ラビットは、僕ではなく、目の前に見えないけど確かに存在する弾む壁を殴ってしまう。
「Pyo!?」
「アハハ・・・上手く拳が進まない!!って言いたそうな顔だね。ああ、このままでは進まないよ。だから、もっと力を強くしなきゃね」
「Pyoooooooooooooo!!」
「やっぱり人間の言葉が理解できるんだ。しかもしっかりと・・・」
意地になった格闘ラビットは、重心を深くし、拳に更なる体重をかけるが、中々破れない。ゴムは刃物にはめっぽう弱いが、純粋な打撃にはあり得ない程の耐久性を発揮するって翡翠が言ってたっけ。ありがとうね、ヒスイ。君にはいつも助けられてばかりだ。
「更に!!『拘束魔術』!!」
見えないゴムの壁にやけになって隙だらけの格闘ラビットをそのまま放置しておく人間は存在するだろうか?いや、存在しない。魔力で生成した鎖で、体の自由を奪うという保険をかける!!
「これで、自慢のスピードは出せなくなったわけだね。じゃあ、遠慮なくいってみようか!!」
「『セナ』!遅れてごめんシャープ!大丈夫だった?」
「うん!寧ろ、骨を無理矢理戻してる今の方がきついかも!!」
芋虫のように藻掻く格闘ラビット。僕の方は、リリックの治癒魔術で足が元に戻ったので最高のコンディションだ。足が戻る際に強烈な痛みを感じたが、痛みなんて、傷跡さえ残らなければ、忘れてしまう。
「それじゃあ、行こうか?・・・あの世に」
「PyooooPyooooooooo!!」
嫌がる格闘ラビットの頭を両手で鷲掴み、手の平に魔力を集中させる。頭に直接流すなら、やっぱりこの魔術に限る。一番残虐的に見えるけど、威力さえ、しっかりとしておけば、楽にあの世へと旅立たせる事が出来る一番人道的な方法。
「『トニトゥルーム』!!」
「Pyopyopyopyopyoooooooooooo!!」
僕の手を通して、格闘ラビットの頭に電撃が流れる。格闘ラビットはしばらく暴れたが、やがて、痙攣するだけになり、最後にはピクリとも動かなくなる。ここまでの流れでかかった時間、なんと10秒。あまりの速さに、僕も皆も驚いた。
「・・・ヒスイと一緒に観た囚人の映画で見た事がある・・・確か電気椅子ってやつだよね?」
「う、うん・・・もしかしたら、いけるかな~~と思って初めて雷の魔術をこんな使い方したけど・・・もうやらない方が良いかな?」
「あれ、格闘ラビットよりも雷に耐性が無い人間だから一瞬で死んでただけだけらね。普通に心臓刺すよりも遥かに楽に死なせてあげられるでしょうけど、見ててこっちが怖くなるから二度と使わないで。少なくとも、あたしの前では」
「了解・・・さてと、これで終わりかな?」
報告によると、鉄製の蓋を開けると、遺体があるって聞いたんだけど、そんな物は何処にもない。
「皆さん、見つけましたよ!!」
「それ、マンホールの蓋。似てるけど違う。可愛い絵柄付いてるし」
「本当にあるの。間違えじゃないの?」
「いえ、確かにありますよおチビ様。この地に降りてから強い魔力を感じていましたが、この花庭に来てからは明らかに強くなりました。ここにあるのは確実です」
「わたしも感じるよ。この近くにあるよ絶対!!」
「本当かな?守ってる魔物がいたら、近くにあるって聞いたんだけど・・・」
「守ってる魔物?何言ってんのシャープ」
「どういう事?モネ」
「あの格闘ラビットが、遺体でなくても、何かを守ってた風に見えたか?」
「・・・確かに」
ついでに言うならば、警官を襲っていた。赤い格闘ラビットの様子からしてかなりの数を殺している。付着している血の量からして、絶対に花庭を出て何人か殺している。
守り手なのに、遺体がある花庭から離れるだろうか?改造された魔物という事で勘違いしていたが、別に格闘ラビットは護り手ではないのでは?
「他に護り手がいるって事?」
「そういう事。んでもって、アイツらがその護り手だろうな」
モネが指差す先、花庭に合わない暗い土の上に佇む騎士達。ある者は、骨だけの馬に乗っており、ある者は、肉体が無く鎧だけで動いており、ある者は己の首を脇に抱えている。
「屍騎士団って感じかな?」
「ざっと、30人はいるよ?捌けるかな?」
「捌けるかな?じゃない捌くんだよ」
「これ終わったら美味しい物たらふく食べよ」
嫌々ながら、4人は武器を構えた。
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