天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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二章 漂流先は獣の国

38話 ようやく落ち着けた2人

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 期間限定の船員になった雷太とティナは船員に提供された部屋に案内される。

「ここがお前らの部屋だ。汚しても構わないが、出て行くまでには片付けろよ」

「了解っ。ところでこの船はどこに着船するんだ?」

「コンパスって国だ。着いてからはお前らの事は知らないぞ」

「分かってるよ。俺達はただ船に乗せてもらっているだけだって事は」

「それと船長からの伝言だ。仕事は与えないし、飯も提供しない。提供するのは部屋だけだそうだ」

 船の上の食料は大事である。雷太とティナは異例の存在である為、食事を提供できないのは仕方ないのだろう。

「了解。こっちもなるべく邪魔しないようにするよ」

「そうしてくれ」

 食事なしは少しきついが、こちらの事情を聞いてこないだけよしとしよう。それに今は食事じゃなくて睡眠が取りたい。

「ティナ、俺は少し寝るぞ」

「わたしをそうさせてもらいます。この部屋に入ってから急に眠くなっちゃって・・・」

 追っ手を完全に撒いたからだろう。体の緊張が解けて疲れが一気に訪れたのだろう。

「船で眠るのは初めてです。ライターさんも初めてですか?」

「いや、俺は何回かある。こう見えても世界各国を練りわたってたしな」

「・・・ライターさん。もしかして凄い人なんですか?」

「自分で言うのもナルシストみたいで嫌だけど確かにそうだな。俺は他の人よりかはすごかったと思う。世界規模の大会にも出てたからね」

「兄さんと歳は変わらないんですよね。それなのに、世界から注目されるなんて凄いですね。尚更、この世界にきてもらった事に対する罪悪感が強くなります」

「気にすんな。俺も大して気にしてないし、元の世界よりも楽しいしな」

「元の世界はこの世界よりも混沌としていたのですか?」

「いや、平和だ。部分的に戦争が起きてたりするけど、全体的に見たら平和だよ。だからだろうな。俺の気質には若干合っていない気がするんだ」

「と言うと?」

「俺は戦うのが好きなんだ。飯を食うより、本を読むよりも好きで仕方ないんだ。攻撃を受けた時にぐらつく視界、勝った時の感覚。その快楽に病みつきになっちまってんだ」

「・・・世界には戦いを好む人が一定数いると言われています。そういう人達は戦いの中で死ぬことを望むのだとか。ライターさんもそうなんですか?」

「どちらかといえばそうかもな。でも、死ぬ気は毛頭ないな。そしたら、戦えなくなるもん」

「そうですか、それはよかった・・・です・・・」

 ついに体力が切れてしまったのだろう。ティナは充電が切れたロボットのようにゆっくりと眠りについた。

 彼女がすうすうと穏やかな寝息を立てている事を確認してから雷太も眠りについた。
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