天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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二章 漂流先は獣の国

71話 役立たずなりに

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 私は無力だ。自分には才能がないと決めつけ、今まで道具に頼ってきたボンボンだ。

 剣はもちろん振るう事はできない。魔法の才能はあるけど、無駄なプライドのせいで今まで学ばず、使うことができない。

 戦闘においてはまるで役に立たない。剣術なし、魔法なし。デクの棒の方がまだ役に立つ。ライタに訓練場で待てと言われた時、そう思ってしまった。

 ライタには私にはできないことができる。なぜなら彼は強いから。私がやりたかった事ができる。私には何もできない。

 ・・・・本当にそうか?

 自己嫌悪に陥っていた時、ふと疑問が思い浮かんだ。私は役に立たないのか?と。

 確かに戦闘面では役に立たない。使えるのはまだ翻訳の魔法だけだし、後方支援もロクにできない。

 けど、何も戦闘で役立つ方法は戦闘に参加する事だけじゃない。私には戦闘能力は無いし、鎧がないと戦闘できない騎士失格の女だが、私には歩くための足があり、言葉を伝える喉がある。

 この2つがあれば、できる事はある。

 シャルロットは走った。訓練場を抜け、城の方まで走った。幸運にも外出しようとしていたトラコに居合わせる事ができた。

「大変です!牧場のサラマンダーが暴走を始めました!雷太とムサシと兵士が止めに入ったものの、人数が少なく心許ない状況です!どうか応援お願いします!!」

「マジで!?・・・こほんっ、失礼しました」

 突然の出来事に取り乱したトラコは深呼吸をして冷静さを取り戻す。

「今すぐ城内にいる兵士と武士達をできるだけかき集めて援護に向かいなさい。良いですね?」

 別に雷太とムサシを信用していないわけではない。もしかしたら既に解決している可能性だってある。けど、人生のほとんどはハプニングで構成されている。サラマンダー脱走だって予期していない事だったのだから、まだまだ予期していない事が起こる可能性は捨てきれない。

 死と隣り合わせの戦いでは常にかもしれないという言葉を念頭に置いておけ。騎士団長から言われた言葉だ。騎士として無駄な時を過ごしていたと思っていたが、小さいながらも私の人生に良い影響を与えているみたいだ。

 町の人から皆が向かった方向を聞いて駆け付けると、サラマンダーは既にライタ達が倒していた。流石と言ったところだ。しかし、既に疲労困憊であるにも関わらず、森の方から大量の蜘蛛の魔物が押し寄せている。

 ああ、良かった。私のした事は無駄ではなかったと。役に立てたと心の底から歓喜し、叫んだ。

「ライタぁ!救援を呼んできたぞぉっ!!」

「お前最高かよ!!」

 私の中で何かが動き始めたような気がした。
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