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三章 辿り着いた先は闇
105話 光の力
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体が膿に飲み込まれていく。動こうにも膿が体の動きを阻害してきて動けない。
黒い膿は足元から登ってきて、ついに口元まで進行してくる。鼻と口は塞がれしまい、息ができなくなってしまう。
意識がゆっくりと薄れていく。今日で二度目だ。どんだけやられっぱなしなんだよ畜生。
またまた幻覚が見え始める。今度はティナの幻覚だ。先程の先生やフェイの幻覚とは違い、はっきりと見える。
(なんてツラしてやがる・・・)
幻覚のティナは今にも泣きそうな顔をしていた。涙がこぼれ落ちそうなくらい目が潤んでいるし、フルフルと震えている。まるで子犬のようだ。
『諦めないでください・・・』
今度は幻聴まで聞こえてきた。このままだとまずい!死ぬと抵抗をする力も削がれていく。
『ライターさん、諦めないで下さい!!』
ティナの幻覚は必死に雷太に諦めぬように呼びかけた。雷太が死なないように必死に必死に呼びかけた。
『ライターさん!!』
(うるせぇよ・・・俺が諦めたような事言ってんじゃねぇよ)
雷太は決して諦めてなどいなかった。死が目の前に迫っていても全く畏れていなかった。
(お前を命に変えても守って見せるって決めたんだ・・・!こんな程度で死んで────)
「たまるかあぁぁぁぁぁぁ!!」
雷太の言葉に呼応するかのごとく、雷太の全身が神々しく光り始める。発生した光はアスモの黒い膿を弾き飛ばし、発生元であるアスモにダメージを負わせた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ~死ぬかと思った」
雷太に纏わりついていた光はゆっくりと消え失せ、雷太の拳にのみ残る。その光は雷太のスキル発動時に発生する光とは似て非なるもの。そもそも雷太由来の力なのかも分からない。
唯一分かる事といえば、この力さえあれば、アスモに対抗できるという事だ。
「行くぞクソ悪魔・・・」
「ま、待ってくださいよ!その光はもしかしなくても───」
アスモの言葉を遮るように雷太の拳がアスモを穿つ。黒い膿はまるで灼熱に晒された氷のように瞬く間に溶け、雷太の拳は本体に通る。
アスモが使っているのはすでに死体の為、痛みを感じる事はない。しかし、肉体が消し飛んでいくにつれて、アスモ自身が小さくなっていく。
「今分かったぞ!アスモお前、ドルクの肉体が無いとこの世界にとどまれないんだろ?そうなんだろ!?肉体吹き飛ばせばお前を倒せるって事だよなぁ!!」
「ま、待ってください!私にはまだやる事が沢山あるんです!最低でも人を100人は殺したいんです!!だから─────」
「知るかぁ!!運が悪かったんだよお前は!!─────破ぁっ!!」
雷太のスキル『一撃必殺』が発動する。光の力をまとった衝撃波は黒い膿を吹き飛ばし、本体であるドルクの肉体を吹き飛ばす。
「くっっっそおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
アスモは後悔を叫びながら砕け散っていく。衝撃波によって爆散したドルクの肉体は血の雨となり、雷太達に降り注ぐ。
白い道着に赤い汚れができる中、雷太はどこか物悲しげに天井を仰ぐ。
雷太の拳には光はすでに宿っていなかった。
黒い膿は足元から登ってきて、ついに口元まで進行してくる。鼻と口は塞がれしまい、息ができなくなってしまう。
意識がゆっくりと薄れていく。今日で二度目だ。どんだけやられっぱなしなんだよ畜生。
またまた幻覚が見え始める。今度はティナの幻覚だ。先程の先生やフェイの幻覚とは違い、はっきりと見える。
(なんてツラしてやがる・・・)
幻覚のティナは今にも泣きそうな顔をしていた。涙がこぼれ落ちそうなくらい目が潤んでいるし、フルフルと震えている。まるで子犬のようだ。
『諦めないでください・・・』
今度は幻聴まで聞こえてきた。このままだとまずい!死ぬと抵抗をする力も削がれていく。
『ライターさん、諦めないで下さい!!』
ティナの幻覚は必死に雷太に諦めぬように呼びかけた。雷太が死なないように必死に必死に呼びかけた。
『ライターさん!!』
(うるせぇよ・・・俺が諦めたような事言ってんじゃねぇよ)
雷太は決して諦めてなどいなかった。死が目の前に迫っていても全く畏れていなかった。
(お前を命に変えても守って見せるって決めたんだ・・・!こんな程度で死んで────)
「たまるかあぁぁぁぁぁぁ!!」
雷太の言葉に呼応するかのごとく、雷太の全身が神々しく光り始める。発生した光はアスモの黒い膿を弾き飛ばし、発生元であるアスモにダメージを負わせた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ~死ぬかと思った」
雷太に纏わりついていた光はゆっくりと消え失せ、雷太の拳にのみ残る。その光は雷太のスキル発動時に発生する光とは似て非なるもの。そもそも雷太由来の力なのかも分からない。
唯一分かる事といえば、この力さえあれば、アスモに対抗できるという事だ。
「行くぞクソ悪魔・・・」
「ま、待ってくださいよ!その光はもしかしなくても───」
アスモの言葉を遮るように雷太の拳がアスモを穿つ。黒い膿はまるで灼熱に晒された氷のように瞬く間に溶け、雷太の拳は本体に通る。
アスモが使っているのはすでに死体の為、痛みを感じる事はない。しかし、肉体が消し飛んでいくにつれて、アスモ自身が小さくなっていく。
「今分かったぞ!アスモお前、ドルクの肉体が無いとこの世界にとどまれないんだろ?そうなんだろ!?肉体吹き飛ばせばお前を倒せるって事だよなぁ!!」
「ま、待ってください!私にはまだやる事が沢山あるんです!最低でも人を100人は殺したいんです!!だから─────」
「知るかぁ!!運が悪かったんだよお前は!!─────破ぁっ!!」
雷太のスキル『一撃必殺』が発動する。光の力をまとった衝撃波は黒い膿を吹き飛ばし、本体であるドルクの肉体を吹き飛ばす。
「くっっっそおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
アスモは後悔を叫びながら砕け散っていく。衝撃波によって爆散したドルクの肉体は血の雨となり、雷太達に降り注ぐ。
白い道着に赤い汚れができる中、雷太はどこか物悲しげに天井を仰ぐ。
雷太の拳には光はすでに宿っていなかった。
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