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四章 一騎当千の拳
108話 開かぬ目蓋
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雷太とシャルロットとティナは、ジュリエットが取ってくれたタルニムのホテルに宿泊する事になった。
そこで色々と質問されることを覚悟していたのだが、事件の後処理が優先だそうで、一般人である雷太達は休んでいて良いとのことだ。
ティナの救出に成功したものの、やる事が山積みだ。
「まず港町トリスに人攫いの元凶は崩壊したって伝えにいくだろ?その次にジュリエット達に着いていくだろ?そしたら次はゴルム軍が新たな追っ手を呼ぶ前にコンパスから出るだろ?やる事が多すぎるな・・・」
しかし、今はそんな事はどうでも良い。救出してから既に半日は経っているというのにティナが一向に目を覚まさないのだ。
シャルロット曰く、死んではいないらしい。怪我も既に治しているので後は起きるのを待つのみだそうだ。
俺達と離れ離れになってからの生活は分からないが、酷いものだった事は想像に難く無い。
シャルロットが治してくれたのだが、傷を完治させるだけで一日に使える魔力の7割を消費したとのこと。
現在ティナはベッドの上で眠っている。息はしているのでいつかは目を覚ましてくれる・・・はずだ。
部屋の扉を誰かがノックしてくる。覗き穴から外を覗いてみると、ニアが立っていた。すぐに部屋に入れる。
「事後処理は終わったのか?」
「そこは専門の部下に引き継ぎましたわ。今時間良くて?」
「ああ、やっと話せるな。正直あの勇者さんじゃなくてアンタで良かったよ。俺、あの人苦手だ」
「気を害したのでしたらジュリに代わって謝罪しますわ。理由は言えませんが、彼女は今気が立っていますの。普段は年相応に可愛らしい女の子ですのよ」
「ムサシから勇者と会ったら助けを求めると助けてくれるって言われたんだけどね。今の状況じゃ難しそうだ。理由を聞かせられない理由は俺が部外者だからか?」
「申し訳ないのですが、その通りです。しかし、その事実を知っているのも上職の者のみとなっております」
「となると相当やばい事なのか・・・もう詮索はしないでおくよ。それで?何から聞きたい?」
「コンパスに到着する予定のはずがパンジグに漂着してしまった話は聞きましたわ。私が聞きたいのはそれよりもっと前の話ですわ」
「というと?」
「貴方がこの世界に呼ばれた理由ですわ。何の意味もなく呼ばれる人間はいないと考えているので」
「・・・嘘をついてもすぐにばれるだろうし、アンタ達と敵対したいわけじゃないから言うけど、あんまし良い話じゃないぞ」
「覚悟の上ですわ」
「分かった。話そう。俺は────」
これまでの出来事を全て話す。ニアは怒る事も無ければ、悲しむ事もなく眉一つ動かす事なく話を聞いてくれた。
そこで色々と質問されることを覚悟していたのだが、事件の後処理が優先だそうで、一般人である雷太達は休んでいて良いとのことだ。
ティナの救出に成功したものの、やる事が山積みだ。
「まず港町トリスに人攫いの元凶は崩壊したって伝えにいくだろ?その次にジュリエット達に着いていくだろ?そしたら次はゴルム軍が新たな追っ手を呼ぶ前にコンパスから出るだろ?やる事が多すぎるな・・・」
しかし、今はそんな事はどうでも良い。救出してから既に半日は経っているというのにティナが一向に目を覚まさないのだ。
シャルロット曰く、死んではいないらしい。怪我も既に治しているので後は起きるのを待つのみだそうだ。
俺達と離れ離れになってからの生活は分からないが、酷いものだった事は想像に難く無い。
シャルロットが治してくれたのだが、傷を完治させるだけで一日に使える魔力の7割を消費したとのこと。
現在ティナはベッドの上で眠っている。息はしているのでいつかは目を覚ましてくれる・・・はずだ。
部屋の扉を誰かがノックしてくる。覗き穴から外を覗いてみると、ニアが立っていた。すぐに部屋に入れる。
「事後処理は終わったのか?」
「そこは専門の部下に引き継ぎましたわ。今時間良くて?」
「ああ、やっと話せるな。正直あの勇者さんじゃなくてアンタで良かったよ。俺、あの人苦手だ」
「気を害したのでしたらジュリに代わって謝罪しますわ。理由は言えませんが、彼女は今気が立っていますの。普段は年相応に可愛らしい女の子ですのよ」
「ムサシから勇者と会ったら助けを求めると助けてくれるって言われたんだけどね。今の状況じゃ難しそうだ。理由を聞かせられない理由は俺が部外者だからか?」
「申し訳ないのですが、その通りです。しかし、その事実を知っているのも上職の者のみとなっております」
「となると相当やばい事なのか・・・もう詮索はしないでおくよ。それで?何から聞きたい?」
「コンパスに到着する予定のはずがパンジグに漂着してしまった話は聞きましたわ。私が聞きたいのはそれよりもっと前の話ですわ」
「というと?」
「貴方がこの世界に呼ばれた理由ですわ。何の意味もなく呼ばれる人間はいないと考えているので」
「・・・嘘をついてもすぐにばれるだろうし、アンタ達と敵対したいわけじゃないから言うけど、あんまし良い話じゃないぞ」
「覚悟の上ですわ」
「分かった。話そう。俺は────」
これまでの出来事を全て話す。ニアは怒る事も無ければ、悲しむ事もなく眉一つ動かす事なく話を聞いてくれた。
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