天才武闘家は異世界に転移しても持ち前の強さとスキル「一撃必殺」で無双を続けるそうです

町島航太

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終章 未来へ導く光

168話 優しき貴方へ

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 ティナは立ち上がり、目の前にいるディオスを睨みつける。睨み慣れていない人の睨みつけ。ディオスは鼻で笑いバカにする。

「なんだその反抗的な態度は?可愛らしくもない上に下手くそだなぁ!!」

 ディオスの煽りなんか気にせず近づき、その頬を両手で包み込むようにそっと触れる。

 私はティオボルド兵士長を知っている。半年以上前、まだ密室で隔離されていた頃、話しかけてきてくれたことがあった。

 話しかけてくれたと言ってもそのほとんどが報告だった。兄さんは私を逃がそうとした罪で王都から追放されたこと。その際に罰として目をつぶされたことを伝えてくれた。

 唯一の心の支えであった兄さんが遠くに行ってしまった。それだけで私の心はすでにボロボロ。普通なら酷く悲しむべき話だというのに、全く悲しめなかった。

 しかし、その後言ってくれた言葉のおかげで私の言葉は救われた。ライターさんと兄さんに助けられるまで人間として生きていける事ができた。今でもその言葉を一言一句覚えている。

「目を潰され、王都にも戻れなくなっちまったが死んだわけじゃない。それならいつかきっとまた会えるさ。どんな形かは保証はできないがな」

 そう言って私の肩をポンと優しく叩いてくれた事、今でも忘れていない。今だからこそわかる。ティオボルド兵士長の優しい嘘。落ち込む私を慰めるための実現するはずがなかった残酷な嘘。

 しかし、その言葉が誠になるかのように兄さんがライターさんを連れて助けに来てくれた。嘘から出た真とはまさにこの事なのだと栄養不足で回っていない頭で思った。

 そんな優しいティオボルドさんがメルグーンに体を好き勝手に使われてしまっている。許せない。怒りが湧いてくる。悲しみが滲み出てくる。

「何をしているんだ?俺の体がそんなに気に入ったのか?」

「ティオボルドさんが素体になっているなら、きっとこの声も聞こえてくるはず・・・」

「おいおい、聞いてなかったのかぁ?ティオボルドは死んだぁ!!どんなに叫んでもあいつは戻ってこない!俺はディオスである前にティオボルドだ!自分の事は1番自分が分かるんだヨォ!!」

「ティオボルドさん、本当の自分を取り戻して・・・!!」

 ティナの手のひらから眩い光が発生する。あまりにも強い光に周りに居たものは目を保護する為に目を瞑り、手で覆う。

 段々と光は弱まっていき、ゆっくりと消えていく。光が消えたのを認識して全員が目を開くとそこには────。

「はっ、今のはなんだぁ?」

 先程と全く変わらぬ光景があった。
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