魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います

町島航太

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1章　不幸な死と2度目の不幸な人生

2話　この世界の常識

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　目がまるで見えないので、耳で聞いた情報だけで、この世界の理を整理していきたいと思う。

　まず、言われた通り、この世界には魔法が存在する。前世で良く遊んでいたファンタジーRPGでおなじみのあの魔法だ。

　それぞれ人には、魔法属性というのが存在するらしい。その魔法属性がどんなものかはまだ分からないが。

　ある日の夜、母さんに絵本を読んでもらった。内容は、勇者が魔王を倒すという物語。女神様が言っていた。この世界は魔族と人間の戦争が終わった平和な世界だと。そして、絵本の元ネタはその戦争だと。

　絵本の内容になるくらい、相当昔の出来事らしい。

　僕が生まれたディナス家は、エンデ王国という国の最西端に位置する領地の領主の家らしい。農業が盛んな田舎らしい。都会暮らしで、田舎に憧れていた僕にとっては夢のような暮らしかもしれない。

「アル、お前は由緒正しきディナス家の息子だ。決して、家の名前を汚さないように」

　と、父さんは僕の頭に言葉で何度も叩き込んできた。どうやら。ディナス家は昔、魔王を倒した勇者の仲間だったらしい。田舎だけど、とても広い土地の領主をやれているのは、それが大きな理由らしい。

　そして、視力が良くなるまでの2か月間、思った事がある。何故、僕はこの世界の言葉を理解しているのだろうか？父さんや母さんが喋っているのは、明らかに日本語ではない。かと言って、僕が大の得意だった英語でもない。なのに、理解が出来る。何故だろう？

『貴方には、この世界でコミュニケーションの支障が出ないようにこの世界の標準言語であるエンデ語の知識を頭の中に刻み込ませていただきました。一部の国を除いて幅広く使われている言語です』

　ここで、約半年ぶりの女神様からの交信がやってきた。成程、理解した。

　僕が母さんのお腹の中から生まれて3ヶ月が経った。この頃になると、はっきりと物や人が見えるようになった。僕が、住んでいるディナス領もはっきりとこの目で見る事が出来た。

　耳で聞いていた通り、そこら中に畑がある。育てているのは穀物だったり、野菜だったりと様々だ。前世の野菜に良く似た野菜もある。農薬を使っていないせいで、虫に食べられまくっているが、とても美味しそうだ。

　また、ディナス邸の周りは森に囲まれている。というよりも、ディナス邸が森の真ん中に屋敷を建てていると言った方が正しいだろう。森には魔物が生息しているらしい。今、僕は父さんに抱きかかえられて、庭を歩いているのだが、目の前に狼の魔物が飛び出してきた。

「生命を支える水よ、敵を射抜け！『ウォーターショット』！！」

　父さんの指先に集まった水が、水鉄砲のように飛んでいき、狼の魔物に直撃する。死ぬことは無かったが、攻撃を喰らった魔物はすっかり、戦う気を失って逃げてしまった。

「この、ルヴァン・ディナスを舐めるんじゃない！！」

　初めて見た魔法。本当にアニメやゲームのようだ。どうやって出しているのだろうか？僕にもできるだろうか？1秒でも早くやってみたい！！そう思ってしまった僕は思わず。

「父さん、どうやってやったの？」

　と、聞いてしまった。生後半年の赤ん坊がだ。まだ、一言だけなら分かる。しかし、今僕ははっきりと言葉と言葉を繋ぎ合わせて喋ってしまった。これには、父さんもびっくり。僕自身も喋ってしまった事に驚いた。

「アル・・・お前もしかして・・・天才なのか？」

　僕が、別世界からの転生者なんて、父さんには知る由もない。だから、一言の会話ではなく、しっかりと会話ができる僕を見て天才と思ったのだろう。

「流石は我が息子だ！！これはもしかしたら、大物になるかもしれない！」

　まあ、怪しまれないので良いかな？

「でも、すまない！魔法は3歳になるまで使えないんだ！！適齢期ってやつだな！！」

　どうやら、魔法を使える年齢というものが存在するらしい。僕が魔法に興味を持ったことが相当嬉しかったのだろうか？父さんは、魔法がまだ使えないなりに色んな事を教えてくれた。

「魔法にはな、属性が存在するんだ。火・水・土・風・光・闇・癒しの6つが存在するんだ。生き物にはそのどれか１つの属性が生まれながらに与えられるんだ」

「お父さんは、みず？」

　まだ、幼児だからだろうか？呂律があまり回らない。けれども、父さんは僕の言葉を理解してくれたみたいだ。

「おおっ！その通りだ！俺は水の魔法属性！そして、アルも水の属性だ」

「何で分かるの？」

「魔法属性は受け継がれるからさ！俺と母さんはどちらも水属性！たまに祖父母の属性を受け継ぐ事もあるらしいが、うちは誰も水だ！水で間違いないだろう！」

　魔法属性は基本1人１つまで。更に、属性は遺伝するらしい。托卵とかもすぐに分かってしまいそうでとても怖いな。

「水しか使えないの？」

「そんな事はない！勉強と訓練さえすれば、他の魔術も使えるようになる！まあ、その属性を保有した者が放った威力よりは劣るけどね」

　ここまでの、話を整理すると、魔法属性は原則、1人につき１つ付いていて、どんな属性が付くかは父母で決まる。

　自分の保有する属性の魔法も使えるけど、威力は下がってしまう。

　それにしても、僕の魔法属性はほぼ水で確定か。判定する前に分かってしまうというのは何とも面白味が感じられない。

　でも、まあ良いかな？

「フハハハハハ！！これで、ディナス家の将来は安定だ！！」

　父さんもこんなに喜んでいる事だし、ね？

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