魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います

4章 魔王の肩書きを持つ少女

83話 2つの属性

「理解不能・・・今放ったライトニングショットにはしっかりと殺傷能力があったのに、何故・・・」

『光の魔法属性の特徴は、強力。けれど、同じ光属性には効果がない。これで何故なのか伝わったでしょう』

「反則。人類に干渉しましたね？女神ダネス」

『間接的ですよ。貴女に比べればね？』

　今度は、悔しそうな表情を浮かべると、ミカエルは、糸の切れた操り人形のように倒れ、動かなくなった。

「女神ダネス。貴女が妾を助けてくれたのか？」

『そう言われるとそうかもしれません。貴女にその力を授けたのは私ですので』

「力？妾が知らない、妾の力という事か？」

『ええ、そうです。そこのヒュームの魔法使いさん。貴方の研究がまだ役に立つかもしれませんよ？』

「へ？・・・ああ！！そういう事ですかぁ！！ヒヒ、魔王様ぁ・・・血を一滴こちらの試験管に垂らしてもらえませんか？」

「分かったから近寄るな。口が臭い」

「酷い！？」

　皆言っていないが、クアンタさんの口は何故か臭い。普段何食べているのだろうか？

　魔王様の血液が入った試験管の液体は変色を始める。魔族の証明である闇の魔法属性の特徴が現れる・・・までは普通だった。

　紫と黒が渦巻く液体の真ん中が、黄色の半透明に変色し、淡く光り始めたのだ。その色は紛れもなく、光の魔法属性のものだった。

「どういう事だ！？何故、魔法属性の反応が２つもある？こんな事があって良いのか？」

『良いのです。私が許可したのですから』

「まさか、これが貴女が妾に与えた力・・・なのか？」

『そうです。これで、勇者の力も半減したも同然ですね』

 2つの魔法属性持ち。極稀に出現する貴重な存在。光と闇属性は初めての例ではないだろうか？

「・・・・ん？待ってくれ、女神ダネスよ。今、勇者がなんちゃらと言ったか？」

『はい♪勇者の力が半減すると言いましたよ♪』

「それはつまり・・・今、勇者がいるって事か？エンデ王国に？」

『そういう事です。ちょうどアルフォースが貴方達によって救出される3ヶ月前に誕生しました。今は訳あってエンデ王国の城下町アプルにいるようです』

　瞬間、魔王様の顔色が一気に悪くなる。まるで、食あたりを起こした時のような真っ青な顔になってしまっている。

「どどどどうしよう！！勇者が！勇者がいつの間にか生まれちゃったぁ！！どうして、教えてくれなかったのだ！！」

『本来なら教えてはいけないんです。今が例外なだけで』

「マズイマズイマズイ！！このままだと、父上と同じ末路を迎えてしまう！！幹部達よ！！急いで兵を集めよ！！これは魔王命令だ！全兵力を以ってアプルを攻め落とすのだ！！」

「落ち着いて下さい！魔王様！そんな短絡的に考えてはいけません！エンデ王国のバックには、多数の同盟国があるんですよ！？余が率いるケンタウロス軍団でも分が悪いですぞ！！」

「わたしもそれはちょっときついねぇ～いや、手を抜いてる訳じゃないんだけどね？」

　新魔王軍は以前と比べてとても大きくなった。本気を出せば、エンデ王国を堕とせるだろう。しかし、エンデ王国には同盟国が多数存在する。

　下手に手を出した場合、報復を受ける可能性がある。

　だが、魔王様は同盟国からの報復よりも、勇者の出現の方を恐れているようだ。さて、いよいよ会議らしくなってきたぞ・・・。

『落ち着きなさい、愛しい我が子達よ。適任者が貴方達の近くにいるではありませんか』

　適任者？・・・・・・まさか。

『アルフォース・ディナス、アプルへ侵入しなさい。そして、勇者と接触し、対処しなさい」

　裏切り者探しの次は、勇者探し。アルフォースとしての人生はなんとも数奇なものだ。