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6章 アルフォース・ディナスという異端

119話 まあ良い、許す

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「アルフォース、下ろして」

「あ、うん」

 ケルビムに頼まれたのでおんぶを止めて足元に下ろすと、片膝を付いて、頭を垂れた。

「お初にお目にかかります。魔王様。わたくしは、男神ニグンにより、勇者の力を与えられ、エンデを支配しようとする魔王様を討伐する為に生まれた神造兵器。名をケルビムと申します。以後、お見知りおきを」

 どうやら、叩き込まれたのは、剣術などの戦闘技術だけではなかったらしい。王族などに対する接し方も学んだみたいだ。

「アルフォース・・・一体どういう事だ!?アビルダ・ルインは・・・勇者がいるではないか!背中に背負った剣!知っているぞ!『神の炎』だな!?魔族を一気に100人屠ったという伝説を持つ忌々しい剣!勇者にのみ扱う事を許された剣だな!背中の剣は!!」

 魔王様はやや興奮気味に魔法の発動準備をしている。僕はケルビムと魔王様の間に立ち。魔王様を諫める。

「まずは説明よろしいでしょうか!?」

「納得できる説明をせよ!でなければただではすまさん!」

「まず!彼女はアビルダ・ルインでもなければ、ルイン家の人間でもない!全く関係ない血族から生まれた勇者です!!」

「どういう事だ!?魔法属性は遺伝するのが常識なのだろう!?」

「光の魔法属性だけ事情が違うみたいなんです!魔王様だって、闇以外にも光の魔法属性を持っているではありませんか!」

「・・・確かに。という事は、勇者は神によって作られた変異体という事なのか!?」

「そうみたいです!」

「成程な・・・では、何故ここにいるのかの説明をしてもらおうか。妾は、始末しろと命令したんだが?」

「実は、勇者だと判明する前に彼女に懐かれてしまいまして・・・彼女も魔王軍に危害は加えずに忠誠を誓うと言っているので、仕方なく連れてきちゃいました」

「どのタイミングで知ったんだ?」

「アビルダが勇者でない事を知り、神の炎を回収して逃げようとした時に兵士達に囲まれてしまいまして、その時に判明しました」

「・・・そやつがお前達を助けたのか?」

「はい。彼女がいなかったら、今頃僕達は死んでいたと思います」

「そうか・・・おい、アビルダ」

「はい」

「何故、勇者であるお前が何故魔王軍に組する?それなりの理由があるんだろう?」

「アタシを愛してくれるアルフォースとシームの2人が、いるからです」

「・・・へっ?そんな理由?」

「そんな理由?何か問題でも?」

「いや!なんでもないぞ!良いんじゃないか!愛!うむ!素晴らしい!!美しい!!納得の理由だ!」

 あ、今。魔王様ビビったな?ケルビムのすごみにビビッて肯定したな?

「ようし!許可する!そして、あとはバールに任せる!!以上!!お疲れ!!」

 魔王様は、言い捨てるように労いの言葉を僕達にかけると、逃げるように謁見の間から出て行ってしまった。ウリム王コレクションの魔物達についても話したかったのだが、まあ、アスタロト様の元に配属される事は決まっているので良いだろう。

「さてと・・・帰ろうか」

「おう!」「そうですね」

「・・・?どこに?」

「僕達の家にだよ」

「じゃあ、アタシも」

「勿論!」

 ケルビムが伸ばしてくる手を取り、一緒に仲良く魔王城から出て、バール領へと向かうのであった。
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