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最終章 勝利の為なら手段は選ばず

145話 援軍なんかねぇよ

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 魔王軍が、着々と準備を進め、戦いへの士気を上げる中、エンデ王領は、まだ戦争が始まってもいないというのに、お通夜のような空気がアプル中に流れていた。

 四方八方見渡しても、下を俯く人ばかり。商人もまるで仕事をしていない。店もまるで活気がない。

 それもそうだろう。彼等は勇者という最後の光を奪われたのだから。しかも、正確に言うならば、奪われたのではなく、自ら手放したのだから。

 彼等の信じていた人物は勇者ではなく、彼等が虐げていた者が勇者だった。彼等は人種差別をした事を悔やんでいるのではなく、勇者を迫害していた事自体を非常に後悔していた。人種差別に関しては何も悪い事はしていないという認識である。

 やがて、民衆の絶望はやるせない怒りへと変わり、ケルビムが勇者である事を隠していたウリム王とその部下達にその怒りが向けられる事となった。怒りをぶつけるべき人間は別にいるというのにだ。

 そんな非難に晒されている中、ウリム王は私室に引きこもっていた。仕事を大臣たちに丸投げし、ベッドの上でうずくまっていた。自分の過去の行いが批判されているから?いや、違う。

「私の・・・魔物ちゃんがぁ・・・!!」

 コレクションの魔物に全て逃げられてしまったからである。

 エンデ兵の話によると、喋るゴブリンが先導していたのだとか。そして、そのゴブリンは、ゴブリンを連れてきた、青年と共に逃げたという。

 そう、全て罠だったのだ。喋るゴブリンを献上という形でコレクションの元へ送り、コレクションの魔物を奪う。それが、青年の魂胆だったのだ。

 更に、その青年はつい先月、ルイン領にて魔王軍側で戦っていたという。ヒュームという事で油断していた。魔族側についていたヒュームがいると思っていなかった故の失態である。

「援軍もやってくる気配なし・・・同盟はどうした?110年前の誓いはどうしたんだ・・・」

 110年前に同盟を組んだ国は1つとして手を差し伸べてはくれなかった。かなり昔の同盟であるというのも理由だが、エンデのヒューム至上主義を知っているが故の判断である。

 つまり、魔王ルシフェルが予想していた他国からの援軍は無しという事になる。自分達に待っているのは滅亡。ウリム王でなくても、精神的に病んでしまい、私室に引きこもってしまうだろう。

『困っているようだな・・・』

「!?誰だ!?」

 どの国も、誰も助けないとしても、

 その行為によって、どんなに重い罰を科せられようが・・・ね。
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