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最終章 勝利の為なら手段は選ばず

148話 何も変わらない?

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 ルシフェル領から帰ってきてから2週間が経過。未だに魔王様からの命令は無い。スパイを潜らせているはずだけども、そのスパイからまるで情報がやってこない。捕まってしまったのだろうか?

「アル?どうしたんだい?そんなにボーっとして。頭でも打ったのかい?」

「いえ、なんでも。ただ、平和すぎるなって」

「良い事じゃあ、ないかぁ。平和だと、研究もはかどる。誰も血を流す事はない。たまに、実験体として誰かが血を流すけどねぇ」

「大体が死体ですけどね。そういえば、以前回収した天使・・・エンジの遺体はどうなったんですか?」

「勿論、解剖して天使の体の構造を調べさせてもらったよ。内臓の構造はわたし達人類と変わらなかったね。ただ羽が生えているヒュームといった感じだ。別の生き物とは思えないよ」

「もしかしたら、下界に降りてくる際に、人間の肉体を手に入れる必要があったのかもしれませんね。ミシェル・・・じゃなかった。ミカエルだって、自ら力が弱まっていると言っていたじゃないですか」

「可能性としてはあり得るねぇ・・・弱かったのも納得かもしれない」

「ミカエルはそれでも強かったですけどね。あんなに強いんじゃあ、天界ではどんな猛威を振るっていたんでしょうか?」

「想像したくないねぇ・・・アル、そういえば君はもう帰る時間じゃないのか?」

 バール様に指摘されて気づく。窓から外を見ると、太陽はすっかり、落ちて、月が仕事を開始していた。

「ホントだ・・・それじゃあ、失礼します」

「ああ、お疲れ様」

 そして、いつものようにバールに向かって別れの挨拶をして、帰る。これもいつも通りだ。

「ふう・・・ちょっと中途半端だから、キリの良いところまでやるか・・・」

 中途半端が嫌いなバールは、助手のアルがいなくなっても、研究を続ける事がある。魔法はそれほどまでに奥深いという事だ。

「そういえば、要塞周辺に設置していた侵入者妨害用のトラップ魔法の効果。大丈夫だろうか?試作段階だから効果が切れている可能性があるな。ちょっと見に行ってみよう」

 約1週間ぶりに部屋の外から出て、ゴレイムを出て、暗くなった草原で、要塞の壁につけていたトラップの魔法を確認しにいく。

 トラップは、バールの予想を裏切り、しっかりと機能していた。それを確認できたバールは笑みを浮かべた・・・のだが。

「あれ?一回作動している?それに血が付着している・・・誰か侵入を試みようとした者がいるのかい?」

 要塞の壁に付着した血液は、まだ新しかった。
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