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最終章 勝利の為なら手段は選ばず

147話 何も変わらない日常

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 結局、バール様の意向で2日間、魔王城に滞在した僕達は、馬車で魔王城からバール領へと帰還した。

「おかえり、アルフォース」

「ただいま。いい子にしてた?」

「うん。ゴップとカードゲームしてた」

「カードゲームって、僕でもルール理解できなかった奴?良く分かったね」

「戦術はアプルにいた時に習ったから、それを応用するだけで出来た。アルフォースも一緒にやる?」

「・・・勉強の為にもやった方が良いかもね。後で教えてよ」

「うん」

 最初に出迎えてくれたケルビムの頭をなで、肩車をする。数か月前と違って、しっかりとした物を食べさせている為、前よりもしっかりと重くなっている。こんなにも重くて幸せになった事は初めてだと思う。

「今日もバール様の仕事?」

「いいや、バール様は長旅でお疲れだから今日は無し。これから、シームさんに会いに行くけど、一緒に行く?」

「うん。さっきゴップに勝ってゲットしたレアカード見せびらかしにいく」

「5年プレイヤーのゴップに勝ったんだ・・・」

 この世界にも前世にもあった娯楽が存在する。トレーディングカードゲームもその中の1つだ。しかし、戦術などが組み込まれている為、とても難しい。元は、軍人が戦術能力を鍛える為に作られたのだとか。

 バール領の要塞町ゴレイムには、半年前に礼拝堂が作られた。男神ニグンにではなく、女神ダネスへ祈りをささげる礼拝堂である。

 そこの礼拝堂の管理を行っている人こそ、シームさんである。彼女は、魔王軍へと移り変わる際に、女神ダネスへ改宗したのだ。因みにかなり悩んだ末の判断である。

「アルさん、おかえりなさい。どうでしたか?会議は」

「すぐに終わったよ。帰ってくるのに2日間かかったのは、バール様が帰るのを面倒くさがったから。それよりもこれを渡したかったんだ。受け取ってくれるかな?」

「えっ?えっ!?なんですか!?もしかして!もしかして・・・!!」

 1人で盛り上がるシームにアルが渡したのは、カルー将軍が使っていた剣。かなり使いこまれているが、刀身は綺麗に磨かれている。

「えーっと・・・これはお父さんの剣ですか?」

「新しい剣を貰ったから、そろそろ返した方が良いかと思って。それが、唯一の形見だから、戦ってて壊したくなかったんだ」

「そう、ですか・・・あ、あはは・・・ありがとうございます・・・」

 なんだか、凄い勘違いをさせてしまったようだ。ケルビムが僕を見る目も痛い。

「アルフォース、アタシもそういうのには疎いから答えるのは難しいけど、そこは指輪とかじゃないかな?どうみても、シームは雌の顔してたよ」

「「ケルビム!?」」

 2人の間に気まずい空気が流れ始める。空気に耐えられなくなったアルは無言で礼拝堂を立ち去った。
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