Dのカルマ

猫目化月

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第3章 亀と思ったら竜だった

7-2 実はとんでもないものを拾っていた

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(いいのか?)

 胸の奥から響く声に、カルマは苦笑した。

「なぜ? 兄さんはデュークさんのこと嫌いじゃありませんでしたっけ?」

 重い足取りで街道を歩く。近くには誰もいない。カルマ1人だ。

「ああ、すみません。あの魔方陣――シグルドの血の傍に居れば、エルトシャンが動いて兄さんの身体の手がかりが見つかったかもしれないのに……」
(そんなことを言っているのではない!)

 憤った声に、『もう1人の自分』の感情が流れこんでくるようで、やはりカルマは笑みを浮かべた。

「本当に似ていますね」
(何?)
「兄さんもデュークさんも、とってもいい人ですね」

 他人であるはずの自分に優しくしてくれる人。

 そっと己の両手を胸に抱く。良い思い出というのは数が少ないので、大事に忘れずとっておきたい。

「兄さん以外に、兄さんみたいな人に会ったのは初めてだったので、ちょっと調子に乗りすぎました」

  飛行途中の悪天候と過度の疲労で意識を失ったあの日、エネルギーの浪費を抑えるため無意識に人型を取ったカルマは、汚い街の袋小路に積み上げられたゴミ山に落ちた。

 そして目が覚め、ふらふらと街の中央に出た夜、彼と出会った。

 ただ嬉しかったのだ。楽園エデンから離れるために限界まで飛んで、羽が疲れて、落ちた先で出会った優しい人が、一体『誰』なのかなど考えもしなかった。

「残念ですが仕方がありませんね。言っても、きっと信じてはもらえないでしょうから」

 この街に落ちたのも、あの雨の夜に出会ったのも、全てただの偶然だなんて――

Dディーがシグルドに出会うなんて、そんな偶然、私だって信じたくありません」

 小さくため息を吐き、いつまで経っても晴れ間を見せない空を見上げた。
 雨が降ると、羽が重くなり飛びづらいのだ。

 せめてこの空が晴れるまでは、あの街にいたかったのだが。

「仕方がありませんね。もうひとっ飛びしますか。さっきのように、また聖域の追っ手が来ないとも限りませんし」

 うんと伸びをして、なぜこの街だったのだろうと考える。

 この世には星の数ほど街があって、人がいるというのに、まるで世界にたった1つしか街がないように、掃き溜めの街このまちで出会ってしまったこと。

(カルマ……)
「どうかしましたか? 兄さん」
(なんでもない)

 大きく深呼吸をしたカルマの胸に、躊躇いの沈黙が落ちる。

(ただ……今すごく、お前を抱きしめる身体があればいいのにと思っただけだ)
「ははっ、じゃあ引き続き探しましょうか。数年ぶりの、兄弟の抱擁を交わすために」

 陽気に笑い、1人の青年が旅立った。




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