Dのカルマ

猫目化月

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第4章 竜と思ったらトカゲだった

11-5 3匹目がやってきた

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「おい! いざとなったらドラゴンになって逃げるくらいはしろよ!」

 襲い来る敵を捌きながら、デュークは形勢を分析した。

 まったくの丸腰のまま強引に連れ出されたため、最初は威嚇も兼ねて魔法剣を出したが、今は、倒した敵から奪った剣に切り替えている。

 魔法剣を使えば、ここにいる人間を全員鎧ごと輪切りにすることも可能だろうが、アルテナの騎士団を惨殺したとなれば、どのような理由があったとしても、お尋ね者から処刑台コースまっしぐらだ。

 別に魔方陣に頼らずとも、立ち回りには自信がある。一対一であれば手こずる相手ではなかったが、何しろ多勢に無勢だ。
 ここは逃げるという選択肢も視野に入れるべきだ。

 だが冷静な状況判断は、我が侭なプライドによって覆された。
 ダークナイトが、こちらも敵から奪い取った剣で応戦する中、大声で怒鳴り返してくる。

「馬鹿を言うな。なぜ私が人間ごときに尻尾を巻いて逃げねばならん!」
「俺はドラゴンと心中なんてまっぴらごめんなんだよ!」
「ふざけるな! 例え敵に背を向ける屈辱を味わおうとも、貴様など死んでも助けんぞ! というか、ついでに死んでしまえば手間が省けてこちらは助かる」
「さらっと本音を言うな、さらっと!」
「シグルドの血などさっさと途絶えてしまえばいいのだ!」
「ああその通りだよこんちくしょう!」

 物騒な口論を続けながらも共闘を続ける。このままでは消耗するばかりだ。
 前に竜に襲われたときは、カルマが助けてくれたが――

(この兄貴じゃ、本気でどさくさに紛れて俺を殺しそうだし……)

 絶望的だ。

ドラゴンが……!」

 ダークナイトが声を上げる。
 まるで騎士団を援護するように飛び出してきた灰色の竜が、近くにあった大木に体当たりを仕掛けた。根元から折れた幹が、狙い定めたようにダークナイトを襲う。

「く……っ、しま……っ」
「おい……っ」

 デュークは、相手取っていた騎士の1人を打ち倒し、すぐさま倒れた大木に巻き込まれた青年に駆け寄った。
 下敷きになったまま動かない身体に触れると、ぬるりと湿った感触が掌に貼り付いた。

「カルマ! ……くそっ、どっちでもいいから出てこい!」

 手についた血を振り払う。ぴくりともしない身体を背に護り、デュークはじりじりと周囲を詰めてくる敵と対峙した。

「マジでやべぇな……」

 この上、頭上ではドラゴンが羽ばたいている。

(殺られる前に殺る――か?)

 右手の痣が疼く。この窮地を脱するためには、手段は選んではいられない。
 デュークが覚悟を決めた、その時。

 人外の悲鳴が、森を劈いた。

 あまりの奇声に、その場にいた全員が状況を忘れ空を仰いだ。
 見ると2匹の竜が左右から灰色の竜を挟み、その首と胴に噛みついている。

「ド、ドラゴンの援護だ……!」
「何だと!? 聞いてないぞ!」

 色をなくしたのは騎士団の方だった。
 空中で悶える灰色の竜に噛みついていた青銅色の竜が、エメラルドの瞳を地上に向けた。

「ひぃっ……」

 その赤い口角が凶悪に開かれ、鉄をも噛み砕く牙が剥き出しになる。
 音を立てて吹き出した炎の螺旋が騎士団を襲った。

「に、逃げろ……! 撤退だ!」

 2匹の竜が明らかに自分たちを敵と見なしていることを悟り、騎士団が散り散りに逃げ出す。
 上空で肉弾戦を繰り広げていた灰色と赤褐色の竜は、必死の体で牙を振り切った灰竜が高速で上空に逃げ帰るのを、赤褐色の竜が見送ったことによって決着がついた。

「なんだってんだ……?」

 呆然と、デュークは曇天を支配する2匹の覇者を見上げた。
 赤煉瓦を思わせる皮膚を持つ竜が、先ほどの荒々しさが嘘のように静かに降り立つ。

 アメジストの瞳がデュークに向けられ――その上に、人が乗っていることに気付いた。

竜使いドラグーン……?」

 エルトシャン。その単語が頭を過ぎる。
 赤いシルクハットの女は、竜の頭から顔を出し妖艶な笑みを浮かべた。

「はいハニー、あなたのダーリンが助けに来たわよ♪」
「シェリル……!?」
「まったく期待はずれだねェ。シグルド王の再来なら、これくらい1人で切り抜けてもらいたいもんだ」

 厳しい意見を飛ばしたのは、シェリルの隣に降り立った青銅色の竜だ。
 正確には、その竜に跨った白い奇術師マジシャン

「あんたら、一体何なんだ……!?」


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