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第5章 ある奇術師の忠告
14-3 首輪をつけろとせがまれた
しおりを挟むそれから1週間が経過し、カルマを家で療養させている以外は、エルトシャンの茶々入れもなくデュークは日常を取り戻したかに見えた。
カルマは徐々に回復の兆しを見せていた。相変わらずよく食べるし、よく笑う。
目立つ顔を隠すための眼鏡は、デュークが上から墜落したことで壊れたはずだが、いつの間にか元通りになっていた。
こういった服や装飾品などは、人間に変身するときに精神世界で幻視したものを具現化しているので、本体の竜に戻れば人の姿と共に物質世界から消失するという仕組みらしい。
再び、人間に変身するときに復元できるというわけだ。
――行きつけの賭場の入り口をくぐると、店内の雰囲気が変わった。
(なんだ?)
視線が集まったかと思うと、賑やかなはずの場がいきなり静まりかえる。
「何かあったのか?」
「おいデューク」
デュークの姿を認めたロッカが、声を潜め駆け寄ってくる。
「お前、今はマズイって。しばらくココに顔出すのはヤメロ。てか、今は表に出ない方が……」
「何のハナシだ?」
要領を得ない説明をするロッカが紙切れを押しつけてくる。
その表情に真剣な焦燥が浮かんでいるのを見て、ただごとではないことを悟る。
その時、戸口から女の悲鳴が聞こえた。
「なんだ!?」
固い複数の足音。武装した騎士の一団が店を占拠したかと思うと、迷いなく数名がデュークを包囲し槍を突きつける。
巻き込む前にロッカを突き飛ばし離れさせる。遠巻きに兵士を囲む店客に混じり、ロッカが苦い顔でデュークを見た。
手渡された1枚の紙に目を落とす。指名手配書だった。
「そーきたか……」
騎士団を私事で動かせる人間だ。何らかの理由をつけて手配をかけることが出来てもおかしくない。
ただでさえデューク自身、叩いたら埃の出る人生を送っている自信がある。
「デューク=フォン=ブルークラウンだな」
「そいつは10年前に死んだはずだぜ」
確認してくる騎士に答える。ここにいるのはただのデュークだ。
口を開いた騎士が、隣の別の騎士に目配せし頷いた。
「間違いない。10年前にリュミエール公爵家が三女マルグリット=フォン=ブルークラウン夫人を殺害し行方不明となっていたブルークラウン家の一人息子だ」
「なっ……」
身に覚えのない罪状に息を飲む。
「隊長! その者の住処に、もう1人の手配者が隠れていました! 銀の髪にオッドアイ、間違いないかと」
「カルマ!」
合流した別働隊に引き立てられ、カルマが姿を見せる。
縄に縛られ、ぐったりとした姿に顔色はない。
「ちっとは手厚く扱えよ、そいつは怪我人だ」
効果はないだろうが釘を刺す。
「貴様らをノイシュに連行する」
騎士の1人の宣告に、周囲の野次馬がざわめいた。
顔を伏せる者、中には裏口から逃げだそうとする者もいた。
(まずいな……)
不安そうな視線が突き刺さる。
ここにいるのは皆、脛に傷のある者ばかりだ。
アルテナ騎士団には、正当にこの街の膿を駆逐する力がある。デュークが抵抗すれば、街ごと人質に取ることも可能なのだ。
無論、そうなればこの街を根城とするマフィア達が黙ってはいないだろうが、彼らが本格的にしゃしゃり出てくるようなことになれば、それこそ取り返しのつかない事態になる。
「仕方ねぇな。どこにでも連れて行けよ」
デュークは両手を挙げた。
下手に暴れては店に迷惑がかかる。騎士団をこの街に長居させたくはなかった。
首都ノイシュへの連行は、ここから馬車で5日間の行程となった。
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