Dのカルマ

猫目化月

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第8章 ある皇太子の野望

19-7 悪の親玉がお目見えだ

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「見たかい? ミス・ラビリンス」
「ええ……信じられないわ。魔法騎士団長の魔法槍を見よう見まねで……」
「見たところ、完全に感覚だけで扱ってるみたいだねぇ」

 神殿の天井中央に位置する、明かり取りの窓の縁から中の様子を覗き込み、口元を押さえ驚きを露わにする女性の隣で、ミスター・スラングは階下で魔法騎士団を相手取る青年を、値踏みするように見下ろした。

 これまで自分以外の魔法士を見たことがなかった青年は、魔法騎士団の戦い方を目の当たりにし、魔方陣の新たな使い方に気付いたようだが……本当のところ、「人間にとって」の魔法則は、それほど単純なものではない。

「確かに、刻印は陣を描かなくてイイ分発動が早いけど、そういう問題じゃない」

 一つの魔方陣からは一つの術しか仕えない。
 複数の魔法を同時に行使するためには、複数の魔方陣が必要だ。

 魔方陣を描くには魔法体系を理解し、然るべき方式に則って組み立てる必要があるが、それらの儀式を省略し、かつより強い魔力を発動するのに有効な方法として、魔方陣を最も魂に近い場所――肉体に刻みつけるという方法がある。

 かのシグルドの転生は、生まれつき魔方陣を掌に刻んで産み落とされたようだが、後天的にこの刻印を焼き付けるには、非常な危険と苦痛を伴う。

  精神世界と物質世界、双方から人を蝕み、時には命を落とすこともあるその危険な強化魔法は、今はあまり使用されていない。

「その潜在能力たるや、まさに大魔法士シグルド王の再来――ってね」

 茶化すような口調で謳う。

 エルトシャンの2人は、Dディーがデュークを助け脱獄するのを見越し、2人が逃げるまでの時間を稼ぐために、城の逆側で彼らの竜を暴れさせた。

 しかし魔法騎士団も馬鹿ではなく、途中で陽動に気付き、一部を置いて本隊は大聖堂へと集結していた。

 だが、どうやら黒竜の身体を得た皇太子は、その力を覚醒する術を持たないらしく、攻撃性の高い黒竜の魂を宿した白竜の器と、魔法剣を解放したデュークであれば、ただの人間を相手にする分には後れを取ることはない。

 その上、デュークは初めて己以外の魔法士と対峙することにより、戦いながら著しい成長を遂げていた。

 形勢は、彼らに有利に傾いているように思えた。



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