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エピローグ
0-1 ある伝説の始まり
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「遅いぞ、カルマ」
「……シグルド王」
白銀の髪の青年は、扉を開いて開口一番かけられた苦情に、神秘的な青銀瞳を嫌そうに細めた。
絶対権力で呼び出した張本人――この国の王は、広大な私室の中央に鎮座するソファに身を沈め、不満そうにふんぞり返っていた。
「王への挨拶を3日もサボるとは何事だ。それでも十二聖竜騎士の首座か」
「ダークナイトは1ヶ月以上城にも顔を出していないはずですが」
「あいつはどうでもいい」
同じ立場にあるはずの双首座の片方を切り捨てる。さっきと言っていることが矛盾する。
「申し訳ありません、色々と忙しかったもので」
どうにも機嫌を直さない主君を前に、それ以上は突っ込まず頭を下げる。
青い髪の王は、やはりムッと顔をしかめた。
「ご主人様よりも仕事が大切だというのか、お前は」
「何を訳の分からないことを。これも全てマスターのためです」
「カルマ、ここに座れ」
子供か女のようなふて腐れ方に呆れると、唐突に隣を勧められた。というか命じられた。
その目には、少年のような輝きが宿っている。何かよからぬことを考えているときの顔だ。
「王よ、私をその名で呼ぶのはお控え下さい。他のDが嫉妬しますよ。彼らも皆カルマなのですから」
「仕方がないだろう。お前が俺にとって1番最初のカルマなんだ。今更スノーホワイトなど長ったらしい名前で呼べるか」
仕方がなしに隣に座る。
王は相手の艶やかな髪を指先で弄びながら、苦言を右から左へ聞き流した。
「仕事は後だ。久しぶりに顔を見せたのだから遊べ」
「……何をして遊ぶというのですか」
「そうだなぁ。よし、お前の髪を三つ編みにしてやろう」
明らかに今思いついた様子で、腰の下まである銀髪をまとめ出す。
「王よ、私が他人に髪をいじられるのが嫌いなことをご存じでしょう」
「そう言いながらも俺には好きにさせてるじゃないか」
「……それは貴方が私のマスターだからです」
「だったら文句を言うな」
「…………」
心底嫌そうな顔をするカルマに、ククッと喉で笑い王は髪から手を離した。
「仕方がない。じゃあ膝枕で許してやる」
ごろんと膝の上に寝転がった王に毛を逆立てるDの首座。
「それこそお后様方にでもしてもらえばいいじゃないですか! だいたいそれのどこが遊びなのです!?」
「お前の嫌がる顔が見れるだろう?」
さすがに声を荒げた常は冷静沈着な白き竜を、至極満足そうな笑みで見上げ、シグルドは手元にあった髪の一房に口づける。
「……いい加減怒りますよ」
「まったくわがままな竜だ」
どっちが! と言いそうなのを飲み込む。王で主人なこの男が我が侭なのは当たり前だ。
「そうだ! 俺を乗せて空を飛べ、カルマ」
ぱっと身を起こし、ソファを飛び越えて窓辺に近づく。
勢いよく白いレースのカーテンを開けると、目映い陽光が広い室内に満ちた。
「ほら、今日は雲一つない快晴だ。こんな日はお前も飛びたくなるだろう?」
この国で1番高い場所にある部屋の、大窓から見える空は青く澄み渡っている。
確かに、これ以上ないほどの快晴だった。
「そういえば、以前悪天候の中ダークナイトを無理矢理飛ばせて墜落させたという噂を聞きましたが」
「ああ、あれはあいつの膂力だったらどこまで飛べるのか試してみたんだ。ほら、戦いの最中天候は選べないだろう?」
「……あまりいじめると、来世で恨まれますよ」
何かにつけて反抗的な黒竜の性格を面白がり、王が嫌がらせの数々を集中的に浴びせていることを知っているカルマは嘆息混じりに忠告した。
あれ以来、拗ねて顔を見せない同僚の顔を思い出す。
「ははっそれはいいな。来世でもお前達と共に在れるなら、世界は平和だってことだ」
逆に嬉しそうに笑った明るい表情に目を奪われる。逆光を受け、光に縁取られた青髪が目映く、空と同化しそうなほどに美しかった。
夏の夜のような濃紺の瞳にまっすぐ見据えられると、何も言えなくなるのだ。
「ぐだぐだ言わずとっとと竜になれ」
――こんな風に。
「お前は世界で一番美しい。お前と空を飛ぶと、民が皆見惚れて上を見上げるのだ。俺はその視線がたまらなく好きだ。この美しい生き物が俺のものだと世界に喧伝して回りたいくらいだ」
「……何を子供のようなことを」
主に誇らしく思われることは、契約を交わした竜として喜ばしいことだ。
分かってはいても、率直に向けられる心からの賛辞に赤面し、つい憎まれ口を叩いてしまう。
「いいですよ。ただ、気が済んだらお仕事についてくださいね」
「善処しよう」
最後には折れてしまうのも、やはりいつものことだった。
「……シグルド王」
白銀の髪の青年は、扉を開いて開口一番かけられた苦情に、神秘的な青銀瞳を嫌そうに細めた。
絶対権力で呼び出した張本人――この国の王は、広大な私室の中央に鎮座するソファに身を沈め、不満そうにふんぞり返っていた。
「王への挨拶を3日もサボるとは何事だ。それでも十二聖竜騎士の首座か」
「ダークナイトは1ヶ月以上城にも顔を出していないはずですが」
「あいつはどうでもいい」
同じ立場にあるはずの双首座の片方を切り捨てる。さっきと言っていることが矛盾する。
「申し訳ありません、色々と忙しかったもので」
どうにも機嫌を直さない主君を前に、それ以上は突っ込まず頭を下げる。
青い髪の王は、やはりムッと顔をしかめた。
「ご主人様よりも仕事が大切だというのか、お前は」
「何を訳の分からないことを。これも全てマスターのためです」
「カルマ、ここに座れ」
子供か女のようなふて腐れ方に呆れると、唐突に隣を勧められた。というか命じられた。
その目には、少年のような輝きが宿っている。何かよからぬことを考えているときの顔だ。
「王よ、私をその名で呼ぶのはお控え下さい。他のDが嫉妬しますよ。彼らも皆カルマなのですから」
「仕方がないだろう。お前が俺にとって1番最初のカルマなんだ。今更スノーホワイトなど長ったらしい名前で呼べるか」
仕方がなしに隣に座る。
王は相手の艶やかな髪を指先で弄びながら、苦言を右から左へ聞き流した。
「仕事は後だ。久しぶりに顔を見せたのだから遊べ」
「……何をして遊ぶというのですか」
「そうだなぁ。よし、お前の髪を三つ編みにしてやろう」
明らかに今思いついた様子で、腰の下まである銀髪をまとめ出す。
「王よ、私が他人に髪をいじられるのが嫌いなことをご存じでしょう」
「そう言いながらも俺には好きにさせてるじゃないか」
「……それは貴方が私のマスターだからです」
「だったら文句を言うな」
「…………」
心底嫌そうな顔をするカルマに、ククッと喉で笑い王は髪から手を離した。
「仕方がない。じゃあ膝枕で許してやる」
ごろんと膝の上に寝転がった王に毛を逆立てるDの首座。
「それこそお后様方にでもしてもらえばいいじゃないですか! だいたいそれのどこが遊びなのです!?」
「お前の嫌がる顔が見れるだろう?」
さすがに声を荒げた常は冷静沈着な白き竜を、至極満足そうな笑みで見上げ、シグルドは手元にあった髪の一房に口づける。
「……いい加減怒りますよ」
「まったくわがままな竜だ」
どっちが! と言いそうなのを飲み込む。王で主人なこの男が我が侭なのは当たり前だ。
「そうだ! 俺を乗せて空を飛べ、カルマ」
ぱっと身を起こし、ソファを飛び越えて窓辺に近づく。
勢いよく白いレースのカーテンを開けると、目映い陽光が広い室内に満ちた。
「ほら、今日は雲一つない快晴だ。こんな日はお前も飛びたくなるだろう?」
この国で1番高い場所にある部屋の、大窓から見える空は青く澄み渡っている。
確かに、これ以上ないほどの快晴だった。
「そういえば、以前悪天候の中ダークナイトを無理矢理飛ばせて墜落させたという噂を聞きましたが」
「ああ、あれはあいつの膂力だったらどこまで飛べるのか試してみたんだ。ほら、戦いの最中天候は選べないだろう?」
「……あまりいじめると、来世で恨まれますよ」
何かにつけて反抗的な黒竜の性格を面白がり、王が嫌がらせの数々を集中的に浴びせていることを知っているカルマは嘆息混じりに忠告した。
あれ以来、拗ねて顔を見せない同僚の顔を思い出す。
「ははっそれはいいな。来世でもお前達と共に在れるなら、世界は平和だってことだ」
逆に嬉しそうに笑った明るい表情に目を奪われる。逆光を受け、光に縁取られた青髪が目映く、空と同化しそうなほどに美しかった。
夏の夜のような濃紺の瞳にまっすぐ見据えられると、何も言えなくなるのだ。
「ぐだぐだ言わずとっとと竜になれ」
――こんな風に。
「お前は世界で一番美しい。お前と空を飛ぶと、民が皆見惚れて上を見上げるのだ。俺はその視線がたまらなく好きだ。この美しい生き物が俺のものだと世界に喧伝して回りたいくらいだ」
「……何を子供のようなことを」
主に誇らしく思われることは、契約を交わした竜として喜ばしいことだ。
分かってはいても、率直に向けられる心からの賛辞に赤面し、つい憎まれ口を叩いてしまう。
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