悪役令息イアン・ラッセルは婚約破棄したい

小山有

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2巻

2-3

 ハロルドやドミニクたちともかなり詰めた話をしている。互いに忙しいためなかなか時間が取れず、打ち合わせをする時は一分一秒も無駄にできない。だというのに、少し休憩を挟むとすぐにハロルドは昔のアルフレートの可愛いエピソードをつらつら自慢げに語るのだ。
 例えば他国の王族の子どもと顔を合わせた時に顔が怒ってるみたいで怖いと泣かれ、釣られてアルフレートも泣き、ハロルドの後ろに隠れたこと。護身術として初めて剣術を習う時、先に剣術を習い始めていた兄が打ち合っている姿に憧れ、兄と同じ剣を持ちたがったが振り回せずに転んだこと。

「あんな情けない話を聞いてもか?」
「情けなくないだろ。微笑ましいというんだ、ああいうのは」

 そんな可愛い話を披露する度にアルフレートが怒るのだが、如何せんハロルドは全く気にしていない。朗らかに笑って弟自慢を止めないので、アルフレートからすれば堪ったものじゃないのだろう。
 思い出してクスクス笑うイアンに、アルフレートは口を尖らせて不服ですと訴えてくる。笑いながらアルフレートの膝に向かい合わせに乗って、鼻と鼻を擦り付け額同士をくっつけた。


「な、暫くイチャイチャできないだろ?」
「あぁ」
「旅の最中も難しいかも」
「そうだな」

 囁くようなイアンの言葉に、アルフレートの喉がゴクリと鳴った。視線を逸らさないまま、たっぷりとアルフレートを眺め、視線を唇から首筋へゆっくり流していく。アルフレートの腕が動くのを見た瞬間、イアンは口を開いた。

「風呂行くわ」
「イアンッ」

 唇をくっ付けてそう言うと、スルリとアルフレートの膝から降りた。慌てて腕を掴もうとするアルフレートを見て意味深に笑い、イアンは小さく呟く。

「準備してくる」

 瞬間的にその目に宿る熱にゾクリと体が震えた。

(アルのあの目、マジで好きだわ)


 大体イアンが煽ると翌日悲惨な目に遭うのだが、アルフレートの燃え滾るような劣情が浮かぶその瞳が好きで、ついつい煽ってしまう。その日の夜は大抵グズグズに溶かされるのだが、むしろそれが酷く心地よい。


   ◇ ◇ ◇


 鼻歌を歌いながら来客用の浴室で準備をする。流石に準備中はニールも外で待機してもらい、準備ができてから体を揉みこんでもらった。
 イアンは体を自ら洗うのだが、髪はニールに任せている。理由は気持ちがいいからだ。疲れが残らないように湯船に浸かり、長湯はせずにアルフレートの自室に戻る。
 扉の前でニールには解散してもらい、護衛たちに見守られながらアルフレートの部屋の中に入った。


「アル?」

 呼んでみるがソファにはいなかった。なぜか既に薄暗くなっている室内で奥の方へ目を凝らすと、ベッドに腰を掛けたアルフレートがジッとイアンを見つめているのが分かる。その視線が己の体を舐め回すように這っているのが分かって、抑えられない笑みが口元に浮かんだ。
 アルフレートもどうやら急いで湯を浴びたらしい。バスローブで前を隠すこともしていないため、既に興奮している様子が見て取れた。


 広い部屋の中をゆっくりと歩いて近づき、見ようによっては睨むようにしているアルフレートの前で、寝着を一つずつ落としていく。

「アル、眠い?」

 パサリパサリと寝着が床に落ちた音がする。ワザと的外れな言葉を掛けながら、裸になってアルフレートに手を伸ばせば、グッと腕を引かれてあっという間にベッドの上に組み敷かれた。

「イアン、そんなに煽って、どうなっても知らんぞ」
「いいよ。久々だし、好きにされたい気ぶ――っん」

 噛みつかれるような口づけを受け、体の力を抜いた。角度を変え、何度も口付け、息ができないくらいに苦しくて満たされる。
 アルフレートの片手がイアンの喉元に触れ、そのままジリジリと下に下がっていく。それと同時に、アルフレートの唇も下がり、喉仏に甘噛みされてビクリと体が震えた。

「は、んっ――な、んか、すごい興奮してる、かも」
「俺もだ」

 互いに興奮しているのが分かる。上ずったような声で、ヒソヒソと言葉を交わし、後はもう語らなかった。


 アルフレートの舌が乳輪を確かめるようになぞり、ピンと立った乳首をじっくりと吸い上げて甘噛む。手が鳩尾みぞおちから腹、内腿と撫でて前から会陰をマッサージをするように触れられ、モゾモゾと腰を動かした。
 ハァハァ、と荒い呼吸を繰り返す。少し強めに撫でられた時、ビクンと体が大きく動き、声にならない声が漏れる。

「――っは」

 同時にジュッと乳首を吸われて、ジワジワと体の奥から何とも言えない快感が迫り上がってきた。
 乳首を弄られ、会陰をトントンと小刻みに叩かれると、どうしようもなく腰が揺れる。

「あ……っんん」
「イアン、可愛い」

 アルフレートの掠れた声に、求められているのが分かりゾクゾクと背筋が震えた。
 いつの間にか両足は開かれ、アルフレートはバスローブを脱ぎ捨てていた。いつまで経っても少し恥ずかしい恰好だが、この羞恥心も己とアルフレートを煽るスパイスだ。イアンは口元に愉悦を浮かべつつ、恥を捨てて自ら足を抱えて小さく呟いた。

「早く、アル」
「――っ」

 アルフレートの顔が凶悪に歪んだ。いつ見ても最高に滾る表情だ。
 同じく、大きく左右に開いた足を抱えて全てを見せつけるようにして艶然と口角を上げるイアンの痴態は、何度見てもアルフレートの欲をかき立てる。それを分かった上で己を煽るイアンに、アルフレートの体温がまた上がる。
 アルフレートは口元に笑みを浮かべながらイアンの会陰に唇を寄せ、ジュルジュルと音を立てて吸うと、ビクビク震える体を押さえて尻穴に舌を這わせた。いくら綺麗にしたとはいえ、本来出すべき場所に舌が入り込み、抜き差しされて舐め回される感覚は背徳的だ。
 背を反らし、もっとと言うように腰を揺らすと、アルフレートの頭を両手で掴む。

「あ、あぁっ――ん!」


 暫く舐め回された後、アルフレートがふと顔を上げた。用意していたらしい潤滑油を手に塗り込むと、間を置かずズブズブと指が二本入ってくる。すっかり簡単に指が入るようになったそこは、チュプチュプと音を立ててアルフレートの指を食んだ。

「んぅ、は……っ」

 弱弱しく首を左右に振り薄っすら涙を浮かべて喘ぐイアンの姿を、アルフレートは鋭い視線で観察している。その口元に浮かぶ歪んだ笑みにゾクリと怖気が走り、それと同時に体が小さく痙攣した。

「あぁっあ、はぅ」
(ゃばい、ずっとイッたみたいに、なってる)

 指を抜いたアルフレートは、精液も出さず体を震わせているイアンの口元に嚙みつき、グッと陰茎をイアンの中に押し込んだ。

「んんぅ!」

 息もできず目を見開きポロリと涙を零すイアンを見て、アルフレートは目を細めた。サラリと頭を撫で、角度を変えて何度も口付ける。

「イアン、動くぞ」
「……うん、ぅごいて」

 瞬間、パンッと強く打ち付けられ背が大きく反った。そのままパンパンと激しい音が耳に響いて、イアンは強い快感の渦に呑まれていく。強く打ち付けたと思うとグルリと穴を広げるように腰を動かされ、精液が出そうになり、咄嗟に己の陰茎を握った。

「は、イアン、そういうことすると、もっと止まらない」
「あ、あぁ!」


 アルフレートの言葉が右から左に流れていく。
 強い快楽をもっと感じていたくて、イアンは陰茎を握り続けた。耳元でアルフレートの熱い吐息が繰り返される度、イアンの感度は高まり、アルフレートの絶頂の瞬間、己の手を離した。

「……ぃくっ」
「ひ、あぁぁ」

 体内に熱を感じると同時に、ジョロジョロと己の陰茎から生温かい液体が零れ出るのが分かった。
 止めようにも止められず、涙を零しながら痙攣し続けるイアンの姿に、アルフレートがゴクリと喉を鳴らした。

「じょうずにイケたな、イアン」
「ん、ぅん。きもち、いい」
「終わらんぞ」
「ん、好き」

 掠れた声が「俺も」と囁く。死ぬほどいい声だ。イアンの体はそれだけでまた反応して腰が揺れた。
 アルフレートがいびつに笑い、またイアンの酸素を奪って、厚い舌が口内を舐め回す。

(苦しい、けど最高に幸せ)

 アルフレートはイアンの頭を撫で、髪を整えたと思うと、またすぐに髪が乱れるほど体を貪った。
 イアンは息も絶え絶えになりつつ、狂おしいほどの快楽と愛おしい感情にどっぷり浸り、ふにゃりと微笑む。何度も求めてくるアルフレートに自らも舌を絡ませ、久しぶりの肌の触れ合いを心ゆくまで楽しんだ。


   ◇ ◇ ◇


 当然のように朝方まで愛し合い、翌日は昼まで動けなかった。ただ、優秀な使用人たちは皆先を読んでおり業務に支障が出ることはなかったし、イアンたちもそのように調整していたので問題なく忙しない日々に戻る。
 現金なもので、二人とも互いを充電したことにより、疲れは吹き飛びツヤツヤした肌が戻り顔色も良くなった。ニールは笑顔を引き攣らせ、ショーンはげんなりしていたものの、主が元気になったのだからいいのだと文句は言われなかった。できた側近たちである。


「アル、首元」
「ん。ありがとう」

 そしてついに出立の時だ。アルフレートの首元を直しながら、その嬉しそうな顔を見て、額にチュッと口付けた。アルフレートも同様にイアンの額に口付ける。
 準備は万端で、万が一忘れ物があったとて現地で調達できる程度のものになるだろう。荷馬車に詰め込む時も最終確認は怠らず、憂いは無い。
 一種のイベントのようなものなので、見送りの人間も随分集まっているはずだ。長旅ではあるので、家族とは既に一度挨拶を済ませている。心配しているらしき家族たちは、イアンの正装を見て大きくなったと感涙していた。大げさで少し恥ずかしいが、家族愛が溢れており心は潤おう。

(よし、絶対成功させるぞ)

 改めてアルフレートの装いを見て、己の姿も確認して大きく頷き、エスコートされながら城から出る。
 長旅への期待と大きな使命に胸を高鳴らせ、イアンは口元に抑えきれない笑みを浮かべ、皆の待つ正門へ向かった。




   第三章 遠国の祝祭


 王都を出て早二週間。イアンたちを乗せた馬車は、悪路を越えながらエルゾディア国へと進んでいた。

「イアン、大丈夫か?」
「アルこそ……うぐぅぅ」
「馬車を止めてくれ!」

 アルフレートも少し顔色が悪いがイアンほどではないようで、偶にレモン水を飲んだりして凌いでいる。イアンは度々吐き気を催しては馬車の進行を止めていて、思った以上に体力を削られ弱っていた。


 今回はニールの同行も許されたため、別の馬車で王族付きの使用人と共に付き添ってくれている。
 逆にショーンはお留守番だ。本人は物凄くごねていたが、「まだ他国への同行を任せられるほどの信頼はない」とキッパリ近衛騎士団長に言われて少し落ち込んでいた。卒業してやっと見習いを脱したところなので妥当である。
 そのショーンが婚約者のマシューに慰められて数日で元気になり、見送りの時には妙に清々しい笑顔だったのが少々気に食わないが、概ね順調な滑り出しだった。


(なのにまさか、俺が乗り物酔いするタイプだったなんて……うぅ、かなり辛い)

 この世界、発展が中途半端で移動は馬車だ。きっと魔法や魔物が存在することと、エネルギー問題が一番の原因だろう。魔物討伐と魔法や魔術の方に発展が全振りしているので、科学的なところが未発達なのだ。
 地球と似たような世界なので探せばエネルギー源も見つかりそうだが、魔術があるのである程度は魔道具で――例えば水やランプは魔法を使えない者でもいつでも使える――どうにかなってしまう。

「馬車苦手なの、今まで全然気が付かなかった……散々乗ってたのに」
「悪路での長距離、というのが問題なんだろう」
(そもそも家から王宮とか学園ってそんなに離れてないもんな。貴族の住むエリアって城に近いし)

 アルフレートが心配そうに頭を撫でてくれている手にすり寄り、目を閉じて小さく息を吐き出す。
 イアンは切実に車が欲しいと思ったが、「もしかしたら車でも酔うかも」と想像して更に気持ち悪くなり、頭の中に浮かぶ様々な乗り物を無理矢理思考から追い出す。


 この世界は乗り物の発達より、転移魔法を移動手段として確立することに躍起になっている。
「なんでだよ!」と突っ込んだのは、王宮で本格的に仕事の指南を受け始めてからだ。移動手段についての情報提供者は、偶々新しい魔術に関しての用事があり、アルフレートの執務室に訪れていたダニエルである。

(あの時もっと移動手段について真剣に掛け合えばよかった……)


「うっ、アルごめん、まさかこんなに三半規管が弱いとは……」
「さんはん……? とにかく気にするな。全部吐けたか?」
「うん……」

 王家の馬車なので改良された最新式ではあるのだが、それでも道が悪ければガッタンゴットンとすごい音と共に酷く揺れる。アルフレートは馬車の長旅を何度かしたことがあり少しは慣れているようだが、それでも元気百倍とはいかない。イアンは最早、都心部を離れてからずっと気持ちが悪い状態が続いている。

「うぅ、成婚式、間に合うかな」
「大丈夫だ。間に合う程度には調整している」
「まだ酔い止め飲めないよね?」
「あと一刻ほどある」
「だよなぁ」

 段々と慣れてきたような気もするが、それでも酔い止めや睡眠薬を活用している。教会作の酔い止めはとてもよく効くのだが、持続時間が短く頻繁に服用できるものでもないので、一日二回しか飲めない。使いどころを間違えると大変なのだ。

「折角の旅行なのに全然見て回れないぃ」
「俺も初めての長旅は同じ状況だった」
「そうだったんだ……今も少し気持ち悪いみたいだけど、大丈夫?」
「あぁ、随分慣れたものだ。イアンも無理はするな」

 アルフレートはイアンの背中をゆったりと撫でながら、レモン水を口元に持ってきてくれる。ゴクゴク飲み干すと少しはマシになった。
 ここ数日はとにかくアッサリしたものしか口にできない。少しでも油っ気があると吐きそうになるのだ。イアンの好みを熟知しているニールがいてくれて本当に助かっていた。


「イアン、そろそろ新しい町だ。ここを超えるとエルゾディア国まで残り二日ほどになる予定だ。まだ宿屋まで時間があるから少し眠らないか?」
「うん、ちょっと眠ろうかな」
「睡眠薬飲むか?」
「いや、夜眠れなくなるとキツイから目瞑っとく」
「分かった。さ、横になってくれ」

 そう言っていつもアルフレートは膝を貸してくれる。そうして髪の毛をサラサラ撫でられると、とても安心するので助かっていた。

「ごめん、痛くなったら起こして」
「気にするな」

 町に近づけば悪路も随分マシになってくる。ガタガタという音を聞きながら目を瞑っていれば、眠気が襲ってきた。吐いたので、かなり体力を使ったのだろう。気づけば、イアンはスッと眠りに入っていた。


   ◇ ◇ ◇


「ん、ぅ……アル⁉」
「イアン、気分はどうだ?」
「あ、いた。うん、気分はいいよ」

 ふと目が覚めると知らない場所のベッドで寝ていたので驚いた。慌てて体を起こすと、アルフレートはすぐ傍で見守ってくれていたようで、ホッと息を吐き出す。

「熟睡できてたのは半刻ほどだぞ。宿屋には着いたから安心してくれ」
「うわぁ、また運んでくれたのか。ごめんな」
「俺の特権だ。そのくらいさせてくれ」
「アル~!」

 いつでも献身的なアルフレートにガバリと抱き着く。よしよしと頭を撫でてくれるアルフレートに頬擦りしながら、辺りを見回し四方八方に壁があることに安堵する。野宿をすることもあったので、宿屋で休めてベッドがあることがとてつもなく嬉しい。
 野宿と言っても、アルフレートとイアンは広い馬車の中で過ごしていた。王族の利用する馬車なので、座る部分がベッドに変化するようにできているのだ。
 そのあたりは随分楽をさせてもらったと自覚している。何せ護衛や従者たちは完全野営で簡易テントを張っていたので、ありがたいやら申し訳ないやらだ。


「イアン、食事はできそうか?」
「んーだいぶいいよ。折角の一張羅が体型が変わるとユルユルになるし食べる」
「よかった。ニールがしっかり宿屋の料理人に注文を伝えてたから安心しろ」
「さすがニール! ってあれ? ニールは?」

 キョロキョロ見回すも、ニールは滞在する部屋の中にはいない様子だった。
 アルフレート曰く、ニールは先にイアンの荷ほどきをした後、使用人の部屋へ向かい己の荷解きをすると共に、他の使用人たちと仕事の連携についての打ち合わせを行っているらしい。流石、自慢のできる従者だ。

「そういえばニールは全然酔わないよな」
「訓練してるそうだ」
「それ俺も帰国したらするわ」

 そう言うと、アルフレートは珍しく眉を下げて心配げにイアンの頬にソッと触れた。

「イアン、無理はしてほしくない」
「無理はする。俺は絶対アルについて回るからな!」
「はぁ、好きだ」

 ギュウギュウと抱きしめられてクスクス笑う。
 酔いも収まったことだし、とニールを呼んで風呂に入ったり食事をしたりと寝る準備を済ませる。
 ニールはイアン以上に死にそうな顔をして心配していたが、回復したイアンを見て一安心したようだ。一通り準備を手伝ってもらうと、ゆっくり休むように伝えて部屋に戻らせた。


「はぁ、早く慣れたいな。帰りだったらもう少し俺も慣れてるかも」
「そうだな、帰りであればもう少しゆったり動いてもいいし、観光ができる」
「それもある。あとさ……したいなぁ」

 日中ずっと馬車酔いが酷いイアンと、多少なりとも気持ちの悪さを感じているアルフレートは、公務中ということもあり流石に夜の触れ合いはしていない。唇を合わせて抱きしめ合って寝るばかりの日々が続いている。
 ムラッとすることはあるのだが、ベッドに入る頃にはヘトヘトになっているので全然そういうことができない。アルフレートもイアンを慮ってくれていて、勃起していることはあれど手は出してこない。
 二人してベッドに横になっていると、少しの眠気を感じつつも沸々と湧き上がる欲望が胎の奥を切なくさせた。

「イアン、我慢してるのにっ」
「かわいい」
「可愛いのはイアンだ」

 抱き着いてきて腰を少し揺するアルフレートのそれは確かに固くなっていた。もちろんイアンもだ。


 五日に一回は一日中どっぷり営んでいた若い二人だ。準備期間を含めると触れ合えた時間が極端に少なく、欲望がどうしたって出てきてしまう。久しぶりの宿屋で安心した、というのも大きい。

「抜き合いっこしよ」
「ぐっ……今の言葉だけで出そうだった」
「かーわいんだから」

 ぷくくと笑えば、ムッとした顔をしたアルフレートが少し体を起こしてイアンに覆いかぶさり、イアンの唇をその唇で塞ぐ。角度を変えて何度も啄んだかと思うと、ぬるりと厚い舌が口内へ入り込み、触れてない場所が無いと思えるほど身勝手に動いて酸素を奪っていく。

「ん、ふ――んぁっ」
「可愛いのはイアンだ」

 ハフハフと呼吸を乱すイアンを見てニヤリと笑ったアルフレートは、そのままジュルリと唾液を吸って首筋に舌を這わせていく。待っていたとも言える快楽を呼び覚ます触れ方にゾクゾクと背筋に怖気が走り、それがまた心地よかった。

「は、あぅ」
「イアン足、ほら」

 促されて足を開く。その間にスルリと下半身を滑り込ませたアルフレートが、イアンの体に負担が無いようにゆったりと腰を揺すり、胸元へねっとり舌を滑らせていく。既に興奮からイアンの陰茎も勃ちあがり、乳首もピンと立ってその存在を主張していた。


「乳首が可愛く立ってる」
「かわいい、とかあ、る?」
「前に比べてもぷっくりした」
「あっ、しゃべりながら舐めるなぁっ」

 思わず、胸を突き出すように背筋が少しだけ反った。それをにんまりしながら眺めているアルフレートは、寝間着を押し上げて触ってと主張する乳首を、薄い布の上からねっとり舐めて舌で押し潰す。そのままレロレロと舐めて吸って、歯を軽く当てれば、イアンの体は素直にぴくぴくと跳ねた。

「イアン、もっと乱れろ」
「んんぅ、は、アルも、もっと擦って」

 腰をゆらりと揺らせばグッとアルフレートの硬いモノが押し付けられ、ゆさゆさと体が揺れた。

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