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第十二話
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「おいおい、嘘だろ……」
「久しぶりね! 元気そうでなによりだわ!」
マーリーを市長に面会させて俺がここに連れてきた経緯を説明すると、市長の顔が真っ青になった。
やっぱり顔を隠してここまで来て正解だったかな?
「今まで元気だったのにお前のせいで元気がスッカラカンになったよ……。どうせ抜け出してきたんだろ?」
「良くわかったわね! 最近監視が厳しくなってきて嫌になったの! 私は王家なんて興味ないから冒険したいのにおしとやかにしろってうるさいのよ!」
えぇ……。王家がそんな調子で大丈夫なのか?
「そりゃ、お前がおとなしくしてないからだろ。シャロとかの監視はとても緩かったし、どうせ厳しいのもマーリーだけだろ?」
「うっ。そりゃそうだけどさぁ」
態度から想定はできていたが、やっぱりマーリーはじゃじゃ馬だったか。
普通の姫様は護衛もつけずに1人で森に突っ込んで悪魔と闘ったりしないよな。
「とりあえず報告だけはさせてもらうぞ。マーリーを匿ってたなんて思われるとグラン王になんて言われるか分かったもんじゃねぇ」
「昔はあれだけ尖っていたのにどうしちゃったの? 私は昔のほうが好きだなぁ」
「あれは俺が冒険者だったからできただけだ! 分かっててやってるだろ!」
市長とマーリーは相当昔からの付き合いなのかな?
マーリーの年齢は見た目から推測するに20代前半なんだろうけど、昔の冒険者と国王の関係なんてよく覚えてるもんだ。
「良いじゃないの。それで、私は一応どんな風に動きたいのか相談があるのよ」
「分かった。話だけは聞いてやる」
◆
「話は分かった。戻ってくれるなら俺も協力はしよう」
「さっすがライガ! 話が分かるわね!」
マーリーの話を聞いた市長は少しぐったりとしていた。
色々話し合った末だが、結局マーリーの事は王国に報告するが、それ以外は王国に戻るなら自由にして良いということに落ち着いたのだ。しかも護衛なしで。
しかし、それには別で条件があった。
マーリーは護衛をなくすかわりに、俺のことを同伴させることで市長に許可を取ったのだ。
なんで俺が? とは思ったが、どうやら道中俺と色々話しているうちに俺のことを気に入ってくれたようだ。ありがたい話だけどじゃじゃ馬とはいえ相手は姫君だし、無礼を働かないか不安だ。
どうやらこれは冒険者である俺に指名依頼してくるようだ。
本来なら新米冒険者である俺に1国の王女であるマーリーと一緒に行動することなんてありえない話だが、本人の希望ならば仕方ない。
しかも、マーリーは俺に冒険者としての戦い方を教えてくれるらしい。これは市長がついでにマーリーにお願いをしていたが、俺にとっては願ったりかなったりだ。
普通の姫ならそんなことは出来ないと思うが、このじゃじゃ馬はそんなことまで出来るようだ。
一流の冒険者だった市長が出来るっていうんだから、おそらくマーリーも腕が立つんだろう。
「ハル、なんとかやってくれるか? ほんっとうに申し訳ねぇがな」
「冒険者になったんだし、こういったことも経験だと思って頑張りますよ!」
俺が前向きな姿勢を示すと、市長は安堵の域を漏らした。
この反応だと、もしかして断ることも出来たのかな?
「マーリー、そういうわけだからちゃんと王国には帰れよ。あとハルの面倒もちゃんと見てくれ」
「私に任せなさいよ。王国に着くころまでには一流の冒険者に仕上げてあげるわ」
市長とは対極で、マーリーはとてもイキイキとしている。
この街で自由な冒険も終わりかもしれなかったが、継続できるのが確定したからだ。
マーリーの無事と、王国に帰還する約束を取り付けたから追っ手を差し向けるのは止めてあげてくれと手紙を書いたのだ。
しばらくは辺りを警戒することなく、気ままな冒険ライフを過ごせることが確定したのでさぞかし気分が晴れているのだろう。
「俺としては色々押してくれるのはありがたいんだけど、本当に大丈夫なんだよね?」
「こと戦いに関してはかなり学べると思うぞ。こんなのだがこいつはこれでも一流の冒険者だ。紅姫、なんて大層な二つ名がついてるくらいだしな」
その二つ名はさっきの悪魔も言ってたな。
姫として有名なんじゃなくて、一流の冒険者として有名だったのか。
「その二つ名は恥ずかしいから勘弁して頂戴。それで、ハルは私の依頼を受けてくれるってことでいいのよね?」
「うん、それで構わないよ。正直言って今の俺は料理以外何もできないけど、よろしくお願いします」
「そういえばさっき料理人を辞めて冒険者になったって言ってたわね。道中で美味しいご飯が食べられるだけでも大満足よ! よろしくね」
ここまで問題なしと依頼主が言ってくれるなら問題ないだろう。
冒険者をやるならどうせ長旅もこなす必要があるだろうし、早めに経験を積めるのは良いことだ。
「それじゃ話もまとまったことだしこれだ解散にしようか……。はぁ、おっさんになんて言われるかなぁ」
「そうね! それじゃ、さっそく外ににいくわよ!」
「わわっ! 分かったからそんな引っ張るなって!」
市長が意気消沈してるけど、ほっといて平気なんだろうか。
マーリーに口で完全敗北した結果がこれだし、なんて声をかければ良いのかも分からない。
昨日ルーさんと話していた時より10歳ぐらい老け込んで見える。
ただ、そんな市長のことなど知ったことかといわんばかりにマーリーは俺を部屋から引っ張り出す。
「ファイト、市長」
すごい力で引っ張られるので適当に声だけかけて、俺たちは市長の家を後にすることにした。
「久しぶりね! 元気そうでなによりだわ!」
マーリーを市長に面会させて俺がここに連れてきた経緯を説明すると、市長の顔が真っ青になった。
やっぱり顔を隠してここまで来て正解だったかな?
「今まで元気だったのにお前のせいで元気がスッカラカンになったよ……。どうせ抜け出してきたんだろ?」
「良くわかったわね! 最近監視が厳しくなってきて嫌になったの! 私は王家なんて興味ないから冒険したいのにおしとやかにしろってうるさいのよ!」
えぇ……。王家がそんな調子で大丈夫なのか?
「そりゃ、お前がおとなしくしてないからだろ。シャロとかの監視はとても緩かったし、どうせ厳しいのもマーリーだけだろ?」
「うっ。そりゃそうだけどさぁ」
態度から想定はできていたが、やっぱりマーリーはじゃじゃ馬だったか。
普通の姫様は護衛もつけずに1人で森に突っ込んで悪魔と闘ったりしないよな。
「とりあえず報告だけはさせてもらうぞ。マーリーを匿ってたなんて思われるとグラン王になんて言われるか分かったもんじゃねぇ」
「昔はあれだけ尖っていたのにどうしちゃったの? 私は昔のほうが好きだなぁ」
「あれは俺が冒険者だったからできただけだ! 分かっててやってるだろ!」
市長とマーリーは相当昔からの付き合いなのかな?
マーリーの年齢は見た目から推測するに20代前半なんだろうけど、昔の冒険者と国王の関係なんてよく覚えてるもんだ。
「良いじゃないの。それで、私は一応どんな風に動きたいのか相談があるのよ」
「分かった。話だけは聞いてやる」
◆
「話は分かった。戻ってくれるなら俺も協力はしよう」
「さっすがライガ! 話が分かるわね!」
マーリーの話を聞いた市長は少しぐったりとしていた。
色々話し合った末だが、結局マーリーの事は王国に報告するが、それ以外は王国に戻るなら自由にして良いということに落ち着いたのだ。しかも護衛なしで。
しかし、それには別で条件があった。
マーリーは護衛をなくすかわりに、俺のことを同伴させることで市長に許可を取ったのだ。
なんで俺が? とは思ったが、どうやら道中俺と色々話しているうちに俺のことを気に入ってくれたようだ。ありがたい話だけどじゃじゃ馬とはいえ相手は姫君だし、無礼を働かないか不安だ。
どうやらこれは冒険者である俺に指名依頼してくるようだ。
本来なら新米冒険者である俺に1国の王女であるマーリーと一緒に行動することなんてありえない話だが、本人の希望ならば仕方ない。
しかも、マーリーは俺に冒険者としての戦い方を教えてくれるらしい。これは市長がついでにマーリーにお願いをしていたが、俺にとっては願ったりかなったりだ。
普通の姫ならそんなことは出来ないと思うが、このじゃじゃ馬はそんなことまで出来るようだ。
一流の冒険者だった市長が出来るっていうんだから、おそらくマーリーも腕が立つんだろう。
「ハル、なんとかやってくれるか? ほんっとうに申し訳ねぇがな」
「冒険者になったんだし、こういったことも経験だと思って頑張りますよ!」
俺が前向きな姿勢を示すと、市長は安堵の域を漏らした。
この反応だと、もしかして断ることも出来たのかな?
「マーリー、そういうわけだからちゃんと王国には帰れよ。あとハルの面倒もちゃんと見てくれ」
「私に任せなさいよ。王国に着くころまでには一流の冒険者に仕上げてあげるわ」
市長とは対極で、マーリーはとてもイキイキとしている。
この街で自由な冒険も終わりかもしれなかったが、継続できるのが確定したからだ。
マーリーの無事と、王国に帰還する約束を取り付けたから追っ手を差し向けるのは止めてあげてくれと手紙を書いたのだ。
しばらくは辺りを警戒することなく、気ままな冒険ライフを過ごせることが確定したのでさぞかし気分が晴れているのだろう。
「俺としては色々押してくれるのはありがたいんだけど、本当に大丈夫なんだよね?」
「こと戦いに関してはかなり学べると思うぞ。こんなのだがこいつはこれでも一流の冒険者だ。紅姫、なんて大層な二つ名がついてるくらいだしな」
その二つ名はさっきの悪魔も言ってたな。
姫として有名なんじゃなくて、一流の冒険者として有名だったのか。
「その二つ名は恥ずかしいから勘弁して頂戴。それで、ハルは私の依頼を受けてくれるってことでいいのよね?」
「うん、それで構わないよ。正直言って今の俺は料理以外何もできないけど、よろしくお願いします」
「そういえばさっき料理人を辞めて冒険者になったって言ってたわね。道中で美味しいご飯が食べられるだけでも大満足よ! よろしくね」
ここまで問題なしと依頼主が言ってくれるなら問題ないだろう。
冒険者をやるならどうせ長旅もこなす必要があるだろうし、早めに経験を積めるのは良いことだ。
「それじゃ話もまとまったことだしこれだ解散にしようか……。はぁ、おっさんになんて言われるかなぁ」
「そうね! それじゃ、さっそく外ににいくわよ!」
「わわっ! 分かったからそんな引っ張るなって!」
市長が意気消沈してるけど、ほっといて平気なんだろうか。
マーリーに口で完全敗北した結果がこれだし、なんて声をかければ良いのかも分からない。
昨日ルーさんと話していた時より10歳ぐらい老け込んで見える。
ただ、そんな市長のことなど知ったことかといわんばかりにマーリーは俺を部屋から引っ張り出す。
「ファイト、市長」
すごい力で引っ張られるので適当に声だけかけて、俺たちは市長の家を後にすることにした。
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