料理人が始める最強冒険者生活。チートスキルでモンスターを瞬間調理できるようになった件

しのこ

文字の大きさ
12 / 13

第十二話

しおりを挟む
「おいおい、嘘だろ……」

「久しぶりね! 元気そうでなによりだわ!」

 マーリーを市長に面会させて俺がここに連れてきた経緯を説明すると、市長の顔が真っ青になった。
 やっぱり顔を隠してここまで来て正解だったかな?

「今まで元気だったのにお前のせいで元気がスッカラカンになったよ……。どうせ抜け出してきたんだろ?」

「良くわかったわね! 最近監視が厳しくなってきて嫌になったの! 私は王家なんて興味ないから冒険したいのにおしとやかにしろってうるさいのよ!」

 えぇ……。王家がそんな調子で大丈夫なのか?

「そりゃ、お前がおとなしくしてないからだろ。シャロとかの監視はとても緩かったし、どうせ厳しいのもマーリーだけだろ?」

「うっ。そりゃそうだけどさぁ」

 態度から想定はできていたが、やっぱりマーリーはじゃじゃ馬だったか。
 普通の姫様は護衛もつけずに1人で森に突っ込んで悪魔と闘ったりしないよな。

「とりあえず報告だけはさせてもらうぞ。マーリーを匿ってたなんて思われるとグラン王になんて言われるか分かったもんじゃねぇ」

「昔はあれだけ尖っていたのにどうしちゃったの? 私は昔のほうが好きだなぁ」

「あれは俺が冒険者だったからできただけだ! 分かっててやってるだろ!」

 市長とマーリーは相当昔からの付き合いなのかな?
 マーリーの年齢は見た目から推測するに20代前半なんだろうけど、昔の冒険者と国王の関係なんてよく覚えてるもんだ。

「良いじゃないの。それで、私は一応どんな風に動きたいのか相談があるのよ」

「分かった。話だけは聞いてやる」


 ◆

「話は分かった。戻ってくれるなら俺も協力はしよう」

「さっすがライガ! 話が分かるわね!」

 マーリーの話を聞いた市長は少しぐったりとしていた。
 色々話し合った末だが、結局マーリーの事は王国に報告するが、それ以外は王国に戻るなら自由にして良いということに落ち着いたのだ。しかも護衛なしで。

 しかし、それには別で条件があった。
 マーリーは護衛をなくすかわりに、俺のことを同伴させることで市長に許可を取ったのだ。

 なんで俺が? とは思ったが、どうやら道中俺と色々話しているうちに俺のことを気に入ってくれたようだ。ありがたい話だけどじゃじゃ馬とはいえ相手は姫君だし、無礼を働かないか不安だ。

 どうやらこれは冒険者である俺に指名依頼してくるようだ。

 本来なら新米冒険者である俺に1国の王女であるマーリーと一緒に行動することなんてありえない話だが、本人の希望ならば仕方ない。

 しかも、マーリーは俺に冒険者としての戦い方を教えてくれるらしい。これは市長がついでにマーリーにお願いをしていたが、俺にとっては願ったりかなったりだ。

 普通の姫ならそんなことは出来ないと思うが、このじゃじゃ馬はそんなことまで出来るようだ。
 一流の冒険者だった市長が出来るっていうんだから、おそらくマーリーも腕が立つんだろう。


「ハル、なんとかやってくれるか? ほんっとうに申し訳ねぇがな」

「冒険者になったんだし、こういったことも経験だと思って頑張りますよ!」

 俺が前向きな姿勢を示すと、市長は安堵の域を漏らした。
 この反応だと、もしかして断ることも出来たのかな?

「マーリー、そういうわけだからちゃんと王国には帰れよ。あとハルの面倒もちゃんと見てくれ」


「私に任せなさいよ。王国に着くころまでには一流の冒険者に仕上げてあげるわ」

 市長とは対極で、マーリーはとてもイキイキとしている。
 この街で自由な冒険も終わりかもしれなかったが、継続できるのが確定したからだ。

 マーリーの無事と、王国に帰還する約束を取り付けたから追っ手を差し向けるのは止めてあげてくれと手紙を書いたのだ。


 しばらくは辺りを警戒することなく、気ままな冒険ライフを過ごせることが確定したのでさぞかし気分が晴れているのだろう。

「俺としては色々押してくれるのはありがたいんだけど、本当に大丈夫なんだよね?」

「こと戦いに関してはかなり学べると思うぞ。こんなのだがこいつはこれでも一流の冒険者だ。紅姫、なんて大層な二つ名がついてるくらいだしな」

 その二つ名はさっきの悪魔も言ってたな。
 姫として有名なんじゃなくて、一流の冒険者として有名だったのか。

「その二つ名は恥ずかしいから勘弁して頂戴。それで、ハルは私の依頼を受けてくれるってことでいいのよね?」

「うん、それで構わないよ。正直言って今の俺は料理以外何もできないけど、よろしくお願いします」

「そういえばさっき料理人を辞めて冒険者になったって言ってたわね。道中で美味しいご飯が食べられるだけでも大満足よ! よろしくね」

 ここまで問題なしと依頼主が言ってくれるなら問題ないだろう。
 冒険者をやるならどうせ長旅もこなす必要があるだろうし、早めに経験を積めるのは良いことだ。

「それじゃ話もまとまったことだしこれだ解散にしようか……。はぁ、おっさんになんて言われるかなぁ」

「そうね! それじゃ、さっそく外ににいくわよ!」

「わわっ! 分かったからそんな引っ張るなって!」

 市長が意気消沈してるけど、ほっといて平気なんだろうか。


 マーリーに口で完全敗北した結果がこれだし、なんて声をかければ良いのかも分からない。
 昨日ルーさんと話していた時より10歳ぐらい老け込んで見える。

 ただ、そんな市長のことなど知ったことかといわんばかりにマーリーは俺を部屋から引っ張り出す。

「ファイト、市長」

 すごい力で引っ張られるので適当に声だけかけて、俺たちは市長の家を後にすることにした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...