結 ~むすび~

依空

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悲壮

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 乃々にも謝らないと。
 目覚めた日の夜、僕は軋む体を起こし、乃々の病室に向かった。
 すると、そこには見た事のない顔が沢山あった。
 乃々の家族だ。
 お父さんにお母さん、妹、弟。
 妹と弟はお兄ちゃんがいるということに、今日、気づいたのだろう。
 お父さんとお母さんは、面倒くさそうな顔をして乃々を見ている。
 珍しいな。乃々の家族が見舞いに来るなんて。だけど、何か嫌な感じがする。
 僕は乃々の病室を入って行った。

 僕は急いで自分の病院に戻った。まだ体が軋むが、早足で戻った。
 乃々も羽ばたいた。
 乃々も僕の羽ばたきを拒んだ。僕を生かした。
 僕が空へ羽ばたけなかったのは、お姉ちゃんと琴理と乃々のおかげなのか。おかげとはしっかりとは言い難い。
 僕はみんなを犠牲にしてまで生きたくなかった。
 もし、僕が少しでも踏みとどまって考えを変えていたら。
 今は違っていたかもしれない。
 考えれば考える程、虚無感が襲ってくる。でも、今、また空へ羽ばたこうとしても、みんなが拒むに決まってる。
 僕がお姉ちゃんと乃々を殺したんだ。僕は人殺しだ。
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