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見るに堪えない絶景 (絶望の景色)
無念
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side黒島
「衆樹に伝えて、って、梨佳さんが自分で伝えないといけないだろ?衆樹のためにも、梨佳さんは生きないといけないんだよ…!梨佳さん、梨佳さん」
無意識に叫んでしまう。
衆樹のことを考えるとどうしても無念の気持ちでいっぱいになる。
梨佳さんは救急隊によって、病院に運ばれた。
佐狐直哉は先程呼んだ応援の警察官によって、警察署まで連れていかれた。
色々とやらなければならない事がある。
まずは佐狐直哉について、もう一度洗い流すか。
佐狐直哉は半年間、この家で暮らしていたそうだ。衆樹の家がある市の隣。近すぎず、遠すぎず、と言ったところであろうか。
数ヶ月前、梨佳さんをこの家に連れて来て日々暴力を奮っていたという。
そもそも、この家を所有するのが佐狐直哉の父親。
佐狐の父親が佐狐に対して無料で家を貸していたという。
なぜなら、佐狐直哉が母親に暴力を奮っているのに気が付き、流石に近所で悪い評判が流されると思い、この家を貸したのだそう。
佐狐の父親は、自分自身の妻や梨佳さんが佐狐直哉の暴力で悩まされていたことを知りつつ、黙っていたのだそう。
自分の仕事での地位を脅かしたくないから。
そんな自分勝手な言い訳が、佐狐直哉の殺人未遂を作りあげてしまった。
警察沙汰になった以上、父親の会社での噂はむごいことになるに違いない。
自分の地位を守るがため、何も言い出さなかった佐狐の父親は、酷い刑に服すことはないと思うが、とても裁きたい人間になった。
そして、佐狐の母親。
佐狐の母親は半年前まで息子から暴力を受け続け、ぼろぼろになった。精神も、身体も。
息子と夫の関係を見て怪しげに思っていたが、言及する事は無かった。
もう、自分を傷つけたくなかったから。
そういう理由により、梨佳さんの発見が遅れた。
腹を痛めて産んだ息子から暴力を奮われるほど惨いことはないが、まさか他人まで暴力を奮うなんて、惨すぎるだろう。
この事件が明るみになり、世間の目が変わった日から、この家族は、どう生きていくのだと言うのだろう。
言い出すのは難しい。
他人から大きな非難をもらうかもしれないから。
でも、言い出すことによって、何かが変わる。
ほんの些細なことかもしれない。
しかし、確実に変わる。
この家族も、誰かが言い出すことによって、変わっていたのかもしれない。
起きた事件に仮定形を使っても、被害を被った人や被害を加えてしまった人が元の人生を歩める訳ではないのに。
直接的にその事件に関わっていなくても、又は少し関わっただけの人も、その後の人生を大きく変えてしまうかもしれない。
きっと、事件を起こした側の人間は、そんな事に、全く気が付かないだろうが。
「衆樹に伝えて、って、梨佳さんが自分で伝えないといけないだろ?衆樹のためにも、梨佳さんは生きないといけないんだよ…!梨佳さん、梨佳さん」
無意識に叫んでしまう。
衆樹のことを考えるとどうしても無念の気持ちでいっぱいになる。
梨佳さんは救急隊によって、病院に運ばれた。
佐狐直哉は先程呼んだ応援の警察官によって、警察署まで連れていかれた。
色々とやらなければならない事がある。
まずは佐狐直哉について、もう一度洗い流すか。
佐狐直哉は半年間、この家で暮らしていたそうだ。衆樹の家がある市の隣。近すぎず、遠すぎず、と言ったところであろうか。
数ヶ月前、梨佳さんをこの家に連れて来て日々暴力を奮っていたという。
そもそも、この家を所有するのが佐狐直哉の父親。
佐狐の父親が佐狐に対して無料で家を貸していたという。
なぜなら、佐狐直哉が母親に暴力を奮っているのに気が付き、流石に近所で悪い評判が流されると思い、この家を貸したのだそう。
佐狐の父親は、自分自身の妻や梨佳さんが佐狐直哉の暴力で悩まされていたことを知りつつ、黙っていたのだそう。
自分の仕事での地位を脅かしたくないから。
そんな自分勝手な言い訳が、佐狐直哉の殺人未遂を作りあげてしまった。
警察沙汰になった以上、父親の会社での噂はむごいことになるに違いない。
自分の地位を守るがため、何も言い出さなかった佐狐の父親は、酷い刑に服すことはないと思うが、とても裁きたい人間になった。
そして、佐狐の母親。
佐狐の母親は半年前まで息子から暴力を受け続け、ぼろぼろになった。精神も、身体も。
息子と夫の関係を見て怪しげに思っていたが、言及する事は無かった。
もう、自分を傷つけたくなかったから。
そういう理由により、梨佳さんの発見が遅れた。
腹を痛めて産んだ息子から暴力を奮われるほど惨いことはないが、まさか他人まで暴力を奮うなんて、惨すぎるだろう。
この事件が明るみになり、世間の目が変わった日から、この家族は、どう生きていくのだと言うのだろう。
言い出すのは難しい。
他人から大きな非難をもらうかもしれないから。
でも、言い出すことによって、何かが変わる。
ほんの些細なことかもしれない。
しかし、確実に変わる。
この家族も、誰かが言い出すことによって、変わっていたのかもしれない。
起きた事件に仮定形を使っても、被害を被った人や被害を加えてしまった人が元の人生を歩める訳ではないのに。
直接的にその事件に関わっていなくても、又は少し関わっただけの人も、その後の人生を大きく変えてしまうかもしれない。
きっと、事件を起こした側の人間は、そんな事に、全く気が付かないだろうが。
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