続!素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー勉強が苦手な俺がスパダリに溺愛されていますー

美絢

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文化祭編

その21.…………斎賀先輩?

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 穂積と別れたあと、俺は指定された場所――昨日使った特別教室で、理人を待っていた。

(……遅くね?)

 待ち合わせの時間から、すでに10分以上が過ぎている。
 もしかして場所を間違えたかと思い、理人の教室へ向かうことにした。

 途中、人だかりを見つけた。

(なんだ、ここ……催し物か?)

 列ができていて、気になって先頭を覗き込む。

「……ごめん、連れが来たから」

 ――理人’s グリーティングの会場だったらしい。

 列から抜けてきた理人は、俺の姿を見つけて駆け寄ってくる。
 女子たちの視線がグッサグサ刺さる。

「珍しいな。いつもは囲まれる前に、うまく逃げてんのに」

「……姫野に逃げられた」

 今日は姫野と一緒に囲まれて、置いていかれたらしい。
 ざまぁみろ。

「彼も結構、負けず嫌いだからね」

 へぇ、と軽く返す。
 穏やかに見えても、あいつは一応、世界王者だ。そりゃ負けず嫌いか。

 理人がかぶっていた王冠を借りてみた。……重っ。イケメンの首筋は強い。

「てか、お前……執事やらないって言ってなかったっけ?」

「“サプライズ”したかったから」

 お茶目なプリンスめ。……まぁ、正直かっこよかったけど。

「驚いたし、よかったよ。お客さんたちも楽しそうだったし」

「桜水は?」

「もちろん、俺も。でも、なんか……あんまり他の人に見せたくなかった、かも」

 …俺だけが知ってればいいっていうか、
 ……誰かの前であんな風に笑って、機嫌とってる姿を見たくない………って、いうか?

 ……言ってから、ちょっと重かったかなと不安になって、横目で理人の様子を窺った。

「……嬉しい」

 ――そっか。嬉しいなら、いっか!

 本当は、手を繋ぎたかったけど。ここは学校だし、人目もある。
 確か理人は、まだ昼ごはんを食べてなかったはず。

「どれがいい?何食いたい?」

 屋台を見回して、指をさす。

「えっと、あれは~?……ハッ!」

 俺の大好きなーーいちご飴の屋台に、遭遇してしまった。
 けど、残念ながら今の俺は……満腹だ。

「……やっぱ、なんでもない」

 ちょっと迷って、諦めようとした、そのとき――
 理人が、すでに買っていた。

「分けようか?」

(イケメンすぎんだろ……)

 絶句した。語彙力が無事に蒸発する。

 俺が先に一口かじると、飴がジャリっと音を立てた。
 その様子を眺めながら、「もう一個いる?」と聞かれる。

 首を横に振った。

「……もういい。ホントに腹いっぱい」

 何か言いたげな顔で、理人が残りをかぶりつく。
 赤くて艶のあるいちごを咥えて、ハムスターみたいに頬を膨らませている。……無事、きゅん死♡

「……口、端っこについてるぞ」

「取って」

 これ、バカップルってやつでは……?
 にやける口元を隠しながら、指を伸ばす。

「あ、あの、西園寺さんですよね!?」

 また声をかけられた。
 急に現実に引き戻される。――渡すかよ!

「悪い、急いでるから!」

 理人の背中をぐいっと押す。
 手当たり次第に食べ物を買って、二人で人気のない特別教室へ走る。

「……なんか、機嫌よくない?」

 教室まで走り抜けて振り返ると、理人が微笑んでいた。

 ……人混みが苦手で、話しかけられるのも嫌がるのに。

「……妬いてくれたのが、嬉しくて」

 狂ったのかと思って、マスタードたっぷりのフランクフルトを口に突っ込む。
 それでも理人はニコニコしていた。

「……やめろって、照れるから」

 最近の理人は、気持ちをちゃんと言葉にしてくれる。
 ……それが、嬉しい。

「スオの露骨な態度は、珍しいから」

 --理人はモテるから、仕方ない。
 その気持ちから、彼に対するミーハーどもの反応は、ある程度割り切っていた。

(全然妬いてるけど。でも、まぁ……あまり、本人の前ではあまり出さないかも)

 ハワイの時の姫野の件も、面と向かっては相談できなかった。


「……スオが、ここまで攫ってくれたことも、嬉しかった。
 迷わず手を取ってくれたことが、……本当に」
 

 母の再婚相手と、顔合わせをした日の翌朝。
 --俺は理人の手を、取る勇気がなかった。

「……不安にさせて、ごめん。
 お前は頭がいいからさ。ーー俺の考えてることなんて、全部わかってるって思ってた」

 自分なりに、気持ちを伝えているつもりだった。
 俺は馬鹿だから、体を繋げれなくなると、心も繋ぎ止められなくなると思った。

(でも蓋をあければ、全部俺の勘違いで、空回りだったけど……)

 ……そして肝心の本人には、うまく気持ちが伝わってなかった。

(……こいつにヤンデレルートを選ばせた責任は、俺にもある)

 理人は、優しく首を振る。

「それは、僕も同じ。
 何しても、スオなら受け入れてくれる……そう、思ってた」

 --でも、そうじゃないことが分かった。

「これからは、言葉にする努力をする。スオが分かってくれるまで、何回も、何度でも。
 ……僕は、負けず嫌いだから」

 心が、震えた。
 視線が合うと、愛しさが込み上げる。

(女々しいくせに、急にかっこよくなりやがって。………キス、したい)

 我慢できず、背伸びして、……理人の顔に近づいた。

「理人……」

 ―――ガチャ。

 扉が開く音がした。

(………え?)

「…………斎賀先輩?」

 扉の向こうにいたのは―――パイ子だった。
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