素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー平凡で勉強が苦手な子が王子様みたいなイケメンと恋する話ー

美絢

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1. あの二人は別。BLっての?

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『………俺は、リトのことが好きかも、………結婚したいくらい…』

 つい、言ってしまった。久しぶりの通話だった。理人が女の子に告白された…という流れで、俺の好きな人の話になった。本人には言わないつもりだったのに魔が差してしまった。でも、現実は少女漫画のように甘くはない。

『……僕はちょっと、』

 スマホを落としてしまった。全部は聞き取れなかったけど『ちょっと』と言った。その後に来るのは『好きじゃないから…』か『無理だから…』だろう。背筋が凍った。友情を壊したくない。慌ててスマホを拾う。

『ーーー……受験もあるしね。じゃあスオ、また明日』

 急いで話そうとしたのに言葉が紡げなかった。通話の履歴に目を落とす。俺たちは何もかもが近すぎるから普段電話なんてしなかった。こんなことなら直接家まで行けばよかった。心臓がバクバクしたまま画面を見つめる。

 その日、俺ーーー斎賀桜水さいがすおみは失恋した。

 ***

 気づいたら二度寝していた。いつもより早く登校しようと思ったのに…、最低限の準備を終えて玄関に走り込む。かかとを潰したままドアへと手をかけた。

「…え、理人!?」

 勢い良くドアを開けて、何かにぶつかる。急いで覗くとそこには人間がいた。……それは今、一番会いたくないヤツだった。走って逃げようかと思ったが、階段は遠く一番近いエレベーターはすぐそこ。行き先は一緒だからどのみち逃げ場は無い。小さく咳払いをした。

「もしかして先に行こうとした?」
「なんで?」
「いつもより早いから。スオは朝弱いのに」

 バレている。平然を装ったが疑うような瞳がじぃ…とこっちを見ていた。澄ましているが絶対ドアを体をぶつけた。軽く謝ってから会話を始める。

「日直。授業前に日誌取りに行かなきゃだし」
「…昨日はそんなこと言ってなかったよね」
「佐伯と変わってあげた。コーヒー牛乳で」

 理人の腕に掴まって靴を履き直す。体勢を崩さないように体を支えてくれた。

「タクシー呼ぼうか?」
「定期を使え、定期を」

 こいつはすぐにタクシーを使おうとする。小さくため息をついた。どうせ捕まってしまったのだ、いつも通りにしよう。気づかれないように盗み見する、…理人もいつも通りで、変わった様子はない。

 西園寺理人さいおんじりひとーー彼を一言で表すなら、ハイスペックな王子様系の負けず嫌い。ついでに幼馴染。

 少し歩いて、いつも通り電車に乗った。乗るのは一駅だけで満員になる程は乗客がいない。
 理人は席が空いているとすぐに座らせようとする。歩道を歩くといつの間にか車道側を歩いてくれて、くだらない冗談にも笑いながら反応してくれる。
 結局学校に着いたのはいつもと同じ時間だった。職員室へ行くため急いで靴を履き替える。ふと、顔を上げた。

「はぁ!?佐伯!?」

 見覚えのある背中に足を止める。昨日、佐伯から連絡が来たのは本当だ。部活の朝練が入ったから日直を変わってほしいと言われた。俺はコーヒー牛乳と引き換えに了承した。どうしてお前がここにいる?

「あ、斎賀じゃん!おはよ~」
「おはよ~じゃないし!朝練は?」
「寝坊した…これからコーチのところに謝りにいく……」
「ドンマイじゃん。え、日直は?」

 佐伯はクラスメイトの一人だ。入学式の時に苗字の関係で隣にいたから話しかけた。それ以来尽きず離れずの関係を続けている。

「あ…、理人!またな!」

 佐伯と合流して話し込んでしまった。理人が待っていたことを思い出す。振り返って手を振った。理人は軽く手を上げると背中を向けてしまった。………そして、あいつと合流する。

「西園寺と姫野ってお似合いだよな~」

 すんでのところで耐えたのに、佐伯が崖から突き落とした。静かに目を向ける。少し下品な笑みを浮かべていた。

「男同士だけどあの二人は別。BLっての?」
「はぁ?ないない。聞いたことないし」
「そりゃ普通言わないだろ。黙ってるに決まってんじゃん」

 佐伯がバカにしたように笑う。理人の隣を歩く人物に視線を向けた。

 ーー姫野柚騎ひめのゆずき。学年きっての美少年にしてテニスのインターハイ出場経験者、そして某スポーツメーカーの御曹司である。もちろんそれだけではない。
 姫野は理人ーー西園寺理人さいおんじりひとと同じ理系進学クラスだ。
 うちの学校は偏差値が高い。理進はその中でも屈指の頭脳を持つ者が集められている。ちなみに主席が理人で、次席が姫野。つまり死ぬほど頭がいい。そして、見た目もすごく……いい。

「変なこと言うなよ、理人と気まずくなるだろ!」

 もしも理人と付き合えても、嘲笑の対象になるのか…
 少しの間目を伏せた。嫌な空気を払拭するように佐伯の背中を叩いた。痛ッ!と声を上げながらやり返してくる。結局どっちが日直をやるか口論しながら教室へと急いだ。

 その様子を理人が見ていたとも知らずに。
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