素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー平凡で勉強が苦手な子が王子様みたいなイケメンと恋する話ー

美絢

文字の大きさ
7 / 42

7. えっ……っっっっち

しおりを挟む
 マンションに着くと、理人はパネルを操作した。最上階へのボタンを押す。買ってすぐのお菓子の話をしていると一瞬でエレベーターが来た。理人と一緒にいると時間が過ぎるのが早い。

「理人、カーテンしめて!」
「はいはい」

 この階はワンフロアしかない。エレベーターを降りてすぐのドアを手早く開ける。そしていつも通り理人に声をかけた。さっさと窓の方へ行きカーテンを閉める。俺は高所恐怖症だ。理人の部屋は窓が大きいから空を背景にビルが見える。なんとなく腰が抜けてしまうのだ。
 ちなみに俺の家は低層階だ。それでもビクビクしながらカーテンを閉めている。ちなみに理人と姫野の対決も震えながら見ている。見なきゃいいのに…と穂積に言われながら。

「課題やる?それともお菓子を食べる?」

 俺の家の倍くらいある大きなテレビの電源を入れる。すぐにアニメや映画のラインナップが並んだ。チャンネルを寄越すので適当にいじる。

「お!これ見たいやつだ!」
「2時間だけど大丈夫?」
「今日は母さんいないから平気~」

 ハッとする。やられた。理人が勝ち誇ったように笑う。

「待って!今のなし!!」
「今日は泊まりね。バスソルト入れる?」
「入れ……る」

 理人は俺が好きなバスソルトを常備していた。
 それだけではない。この男、俺を定住させる気かお泊まり道具を買い揃えていた。愛用のスウェットも歯磨き粉も把握されている。専用の枕に食器まであった。
 そして理人は俺の母親の信頼をもぎ取っている。彼が一言連絡を入れればオーケーのスタンプが送られてくる。信頼レベルは俺より上だ。

「そういえばエノキいいの?買いに行く?」
「エノキは今度でいいや。大根あるし」
「なら大丈夫だね」

 我ながらどうしてあの時エノキを出したのだろう。なにが大丈夫か分からないがとりあえず頷いた。ソファの片隅に目を向ける。

「なにこ、………れ」

 手を伸ばして、止まる。住宅情報誌の中に隠れるようにあった写真の表紙。CMでよく見る結婚情雑誌だった。

「みつかっちゃったね」
「…りひと、」

 後ろに回った理人が長い腕を伸ばす。すぐに振り返ると、パラパラとページをめくっていた。言葉が出てこない。いつの間に彼女を作ったのだろう。やっぱり、…姫野だろうか。困惑と戸惑いで頭が真っ白になる。しかもピンクの付箋が貼ってあった。

「あ、間違えた。こっちの雑誌だ」

 どうやら雑誌を間違えたらしい。でも結婚情報誌がここにある事実は間違えないようだ。間違えた雑誌には先ほどよりも更に付箋がびっっっしりだった。ちょっと気持ち悪い。

「これなんてどうかな、似合うと思うんだけど」
「えっ……っっっっちすぎない…?」
「そう?」
「…………さすがにかわいそうだろ…」

 言葉を選ぶ余裕なんてなくて心の声がそのまま漏れてしまった。スケスケな生地の、布面積が小さい水着みたいな洋服。ウェディングドレスというよりえっちな下着だ。こんな服で結婚式を挙げられるわけがない。そもそも姫野は男だ。いくら可愛くてもさすがにキツい。これではもはやえっちな動画撮影だ。

「スオはどれがいい?」
「は!?俺が選ぶの!?」

 なにが悲しくて好きな男の、好きな人の…ウェディングドレスを選ばないといけないのか。呆然としながらソファに座る。理人が目の前に雑誌を差し出した。

「………………これとか似合うんじゃない」

 知らんけど、という言葉は飲み込んだ。理人はへぇ、と声を出す。パラ見したけどこの雑誌、相当刺激的である。流し目で布面積が多めのものを選んだ。

「意外、こういうのが趣味なんだ」
「姫野は大人っぽいからあまり肌は出さない方がいいと思う」
「…なるほど、」

 俺は襟が首元まで詰まっているドレスを選んだ。姫野は顔は可愛いけど体は筋肉質だ。あまり露出するのはよくない気がする。顔を上げると、理人の声が低くなった気がしたが、様子は変わらない。頭を撫でられた。

「そろそろ課題やろうか。映画はまたあとで」

 テーブルの隅に雑誌を投げ置いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

処理中です...