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3. 早すぎてボールが可哀想
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「始まったぁ?」
昼休みが始まってすぐにベランダに出た。穂積の声に頷く。佐伯が買ってきたコーヒー牛乳を飲みながら校庭を見下ろした。理人とは同学年だが時間割が違う。進学クラスは独立で体育を行うため一緒に授業を受けることはない。そして昼休みに入ってすぐの、この時間。
不思議なことに上下階から、ーーー悲鳴が上がるのである。
「おぉ、今日もすごいな…」
思わず圧倒されてしまう。女子たちの声援を尻目に視線を向けた。急いだ様子で生徒たちがテニスコートへ向かう。どこぞのスーパースターが来校したのかと思うが、違う。その先には理人と姫野がいる。
「すーちゃんの旦那さんは人気者だねぇ」
穂積が愉快そうに笑う。すぐに肘を喰らわせて黙らせた。いっせーの!と上の階から送られる声援を聞いていた。彼らは体育の後にテニスの自主練をする。白熱した試合展開と女子の様子から『デスマッチ』と名付けた。その日以来この時間を勝手にそう呼んでいる。
「なんで西園寺って帰宅部なの?」
「えー勉強があるからじゃん?知らんけど」
ストローに口付ける。たしかに、理人はなんで帰宅部なんだろう。中学の頃は無理やり勧誘されて生徒会に入っていた。高校は選挙制で立候補を頼まれたが断ったらしい。今は自由なんだから好きな部活に入ればいいのに。
「ふーん?帰宅部で姫ちゃん負かすとかやばすぎ」
頷いた。理人は趣味でテニスをやっている。姫野に負け続けるのが悔しくて密かに腕を磨きまくった。そして先日、とうとう姫野に勝った。学校中が雄叫びに包まれたのは記憶に新しい。ちなみに穂積は姫野のことを姫ちゃんと呼んでいる。
「おぉ、早すぎてボールが可哀想」
「そういう話ししないの?」
「……………しないな」
理人のことが好きなのに、帰宅部である理由は知らない。理人のことが好きだけど、実は知らないことの方が多いのかもしれない。思わずストローを齧る。理人は超負けず嫌いだ。テニスが強くなったのも、練習したのも、全部姫野のため。
ちなみに俺は運動神経が死んでいるのでテニスなんてできない。勉強も苦手だし、見た目の良さだって平凡の域を出ない。彼を負かせられるのはたぶん、…姫野だけ。
「あーあ、やめやめ!穂積、ごはん食べよ!」
俺はベランダを後にした。穂積もすぐ後に続く。カバンから乱暴に弁当を取り出して席に座った。
「今日も手作り?」
「一応。購買とかだと食費がかさむし」
俺は母子家庭だ。父親を早くに亡くしている。
今住んでいるマンションいわゆる超高級マンションだが、たまたま遺産が入ったから気前よく買っただけ。正直いうとお金にものすごく困っているという訳ではない。それに、大体学食にはあの二人がいる。なんとなく鉢合わせたくなかった。
「いつも思うけどすごいねぇ、俺が作ったら茶色一色だよぉ」
「はは、男子高校生って感じ」
穂積は本当は学食派だ。いつもコンビニか予め購買で買っておいたものを用意している。100%俺に遠慮しているのが分かるから何度も行って来なよ、と言うのに行こうとしない。
「今度俺にも作って?」
「めんどくさいからヤダ。女子に頼みな」
残念そうに笑った。穂積はチャラい見た目をしているけど見合う顔面がついている。理人が王子様なら穂積はあどけないイケメン。ちなみに姫野は中性的な美人系。
「ところであれ、何?」
穂積がすぐ後ろのロッカーを指差す。俺の席は窓際の一番後ろ。そしてベランダの窓とロッカーがすぐ後ろにある。机に入りきらないプリントを勝手にロッカーの上に置いていた。
「課題だよ赤点の」
「え、また赤点だったの?」
「…たまたまヤマが外れた」
「全教科ヤマ外すって才能だと思う」
「くそ…っなんで俺の周りには頭がいいヤツしかいないんだよ…!」
思わず穂積を蹴った。ちゃんと力加減はしている。穂積はよしよし、と頭を撫でてくれた。
ついでに顔も良いヤツしかいない。理人は言わずもがな、穂積も実はめちゃくちゃ頭が良い。なんで進学クラスに行かなかったの?と聞くとつまらなさうだから、だそうだ。頭がいいヤツの考えることは分からない。そして彼らには赤点の苦しみが、分からない。
「食べ終わったら教えて!俺だけの力じゃムリすぎる!」
「え~?からあげ2つ」
「2つしかないのに!?」
からあげを二つ奉納した。
昼休みが始まってすぐにベランダに出た。穂積の声に頷く。佐伯が買ってきたコーヒー牛乳を飲みながら校庭を見下ろした。理人とは同学年だが時間割が違う。進学クラスは独立で体育を行うため一緒に授業を受けることはない。そして昼休みに入ってすぐの、この時間。
不思議なことに上下階から、ーーー悲鳴が上がるのである。
「おぉ、今日もすごいな…」
思わず圧倒されてしまう。女子たちの声援を尻目に視線を向けた。急いだ様子で生徒たちがテニスコートへ向かう。どこぞのスーパースターが来校したのかと思うが、違う。その先には理人と姫野がいる。
「すーちゃんの旦那さんは人気者だねぇ」
穂積が愉快そうに笑う。すぐに肘を喰らわせて黙らせた。いっせーの!と上の階から送られる声援を聞いていた。彼らは体育の後にテニスの自主練をする。白熱した試合展開と女子の様子から『デスマッチ』と名付けた。その日以来この時間を勝手にそう呼んでいる。
「なんで西園寺って帰宅部なの?」
「えー勉強があるからじゃん?知らんけど」
ストローに口付ける。たしかに、理人はなんで帰宅部なんだろう。中学の頃は無理やり勧誘されて生徒会に入っていた。高校は選挙制で立候補を頼まれたが断ったらしい。今は自由なんだから好きな部活に入ればいいのに。
「ふーん?帰宅部で姫ちゃん負かすとかやばすぎ」
頷いた。理人は趣味でテニスをやっている。姫野に負け続けるのが悔しくて密かに腕を磨きまくった。そして先日、とうとう姫野に勝った。学校中が雄叫びに包まれたのは記憶に新しい。ちなみに穂積は姫野のことを姫ちゃんと呼んでいる。
「おぉ、早すぎてボールが可哀想」
「そういう話ししないの?」
「……………しないな」
理人のことが好きなのに、帰宅部である理由は知らない。理人のことが好きだけど、実は知らないことの方が多いのかもしれない。思わずストローを齧る。理人は超負けず嫌いだ。テニスが強くなったのも、練習したのも、全部姫野のため。
ちなみに俺は運動神経が死んでいるのでテニスなんてできない。勉強も苦手だし、見た目の良さだって平凡の域を出ない。彼を負かせられるのはたぶん、…姫野だけ。
「あーあ、やめやめ!穂積、ごはん食べよ!」
俺はベランダを後にした。穂積もすぐ後に続く。カバンから乱暴に弁当を取り出して席に座った。
「今日も手作り?」
「一応。購買とかだと食費がかさむし」
俺は母子家庭だ。父親を早くに亡くしている。
今住んでいるマンションいわゆる超高級マンションだが、たまたま遺産が入ったから気前よく買っただけ。正直いうとお金にものすごく困っているという訳ではない。それに、大体学食にはあの二人がいる。なんとなく鉢合わせたくなかった。
「いつも思うけどすごいねぇ、俺が作ったら茶色一色だよぉ」
「はは、男子高校生って感じ」
穂積は本当は学食派だ。いつもコンビニか予め購買で買っておいたものを用意している。100%俺に遠慮しているのが分かるから何度も行って来なよ、と言うのに行こうとしない。
「今度俺にも作って?」
「めんどくさいからヤダ。女子に頼みな」
残念そうに笑った。穂積はチャラい見た目をしているけど見合う顔面がついている。理人が王子様なら穂積はあどけないイケメン。ちなみに姫野は中性的な美人系。
「ところであれ、何?」
穂積がすぐ後ろのロッカーを指差す。俺の席は窓際の一番後ろ。そしてベランダの窓とロッカーがすぐ後ろにある。机に入りきらないプリントを勝手にロッカーの上に置いていた。
「課題だよ赤点の」
「え、また赤点だったの?」
「…たまたまヤマが外れた」
「全教科ヤマ外すって才能だと思う」
「くそ…っなんで俺の周りには頭がいいヤツしかいないんだよ…!」
思わず穂積を蹴った。ちゃんと力加減はしている。穂積はよしよし、と頭を撫でてくれた。
ついでに顔も良いヤツしかいない。理人は言わずもがな、穂積も実はめちゃくちゃ頭が良い。なんで進学クラスに行かなかったの?と聞くとつまらなさうだから、だそうだ。頭がいいヤツの考えることは分からない。そして彼らには赤点の苦しみが、分からない。
「食べ終わったら教えて!俺だけの力じゃムリすぎる!」
「え~?からあげ2つ」
「2つしかないのに!?」
からあげを二つ奉納した。
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