聖姫調教物語

美絢

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19.焔姫 ※R18

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 勢いよく階段を駆け降りた。
 俺は背が低いから人の中に入ると埋もれてしまう。間をすり抜けながら広場の方を目指した。

「エンキー!!!」

 名前を叫びながら人を掻き分ける。周りが驚きながらこちらを見る。その調子でエンキも振り返ることを願った。

「……あ!エンキ!おーい、エンキ~~!!!」

 口元で手を丸める。誰よりも大きな声を出しているのに全然振り向かない。コウヤは戻らなければ殺すと言っていた。
 彼が言っていることが本当ならこのままでは殺されてしまう。なんとしてでも止めなければならない。

「…は!?あいつなにしてんの!?」

 エンキは人混みを抜けると、今度は人気の無い方向へと走り始めた。急いで角を曲がる。でも、

 ………………エンキは、消えてしまった。

「え!?なんで!?」

 慌てて辺りを見渡す。隠れられそうなところはない。その先はまっすぐ裏門へ繋がっていて人の気配は感じない。もしかして門の外に出たのだろうか。

「…さすがにまずいだろ…!」

 慌てて門まで走った。門を叩くがビクともしない。そもそも門が開く音も聞こえなかった。でも、外に出た可能性が一番高い。絶対に女御の話も聞いているはずだ。逃げたでは済まされない。
 落ち着いて辺りを見て回った。一箇所だけ、他の塀より低い場所がある。…登れるかもしれない。ジャンプをして手の引っ掛かりそうなところを探す。いい感じに指が引っかかった。

「うん、イケる!」

 着物の前を広げて反動をつける。塀に足をかけた、

「つかまえた」
「………え?コウヤ……………?」

 後ろから思い切り抱きしめられた。驚いて動きを止めてしまう。

「あ、エンキが……!」

 振り返ろうとして、急いで前を見る。塀の向こうを一生懸命指差した。

「今エンキがいたんだ!早く追わないと…!」
「大丈夫、さっきキスイが見つけたよ。今頃罰を受けてる頃じゃないかな」
「見つかったの!?でも、」

 …さっきの後ろ姿は絶対エンキだったのに。腹部に回る腕の力が強まる。前へ進もうとしても足を出すことができない。

「見間違えだよ、確かめてもいい」
「え…エンキに会えるの?」

「会えるよ。会いたいかはハクヒが決めて」

 どういう意味だろうか。振り向こうとして、その声音に動きを止めた。


「でもその前に。…………ハクヒ、私が言ったことを覚えているか」


 空気が、冷える。ここだけ空間が切り取られたみたいだ。他の音が聞こえない。

「言ったこと…エンキを見つけたら教えるって………」
「私の元に連絡はきていない」
「…あ!一生懸命ボタンを押したんだけど返事がなかったんだ!でもエンキを見つけたから、だから……!」

「言い訳をするな。私はあの場所から出るなと言ったはずだ」
「………ごめ、なさい……」

 耳元で聞こえる低音が怖くて謝ることしかできなかった。少し声が掠れてしまう。助けてほしくて周りを見渡すのに誰もいない。
 涙が滲んでくる。

「…………お仕置きは後でにしよう。おいで」

 腹部に回っていた腕が離れた。荒々しく手首を掴むと引きずるように元来た道を戻る。さっきはあんなに通りにくかったのに人が道を空けていく。
 彼と俺の何がそんなに違うのだろうか。また小さな部屋に押し込められる。コウヤは静かに9のボタンを押した。

「ハクヒ、君は本当に彼を助けたかった?」
「ど、ゆ…いみ?」

 体が浮上する感覚がする。

「彼と一緒に逃げようとは思わなかった?」
「お…っ思うわけない!!俺はエンキに戻ってほしかった!殺されてほしくないから!!」

「その気持ち以外に思ったことはない?」

 ドキリとして、無意識に目を見開く。コウヤはそれを見逃さない。

「ここから出られれば自由になれるんじゃないか、…って」

 思わず下を向いた。全く思わなかったわけではない。あのまま門を潜ったら聖宮に行けるんじゃないかとは思った。でも、それはほんの少しだ。
 エンキを助けたい気持ちの方が圧倒的に強かった。それだけは言い切れる。

「…まぁいいや。外に希望を抱かせるのは可哀想だから現実を教えてあげる」

 9階に着いた音がして、コウヤが肩を抱く。さっきは目隠しをされたのに今はされていない。
 キョロキョロと周りを見渡しながら廊下を進んでいく。どんどん明かりがなくなって、音が静かになっていく。ドアが木製のおしゃれなものから銀色の金属に変わった。胸元を握りしめる。

「さあ、入って。君が会いたがっていた焔姫だよ」

 コウヤはドアを開けると進むように促した。恐るおそる足を進める。


 ***


「い゙や゙!!ごめん゙なさ、ごめんな゙さい゙い゙イ゙イ゙イ゙!!!」

「……………えん、き?」

 ガラス越しに、エンキがいた。正確にはエンキとキスイがいた。スイヒの時とは違って声が聞こえる。思わずガラスに駆け寄る。

「ゔぁ゙!?♡は、はくひ!?♡♡イ゙や゙ぁ゙…!みなイ゙♡♡でぇ!!!♡」

 どうやらエンキにも俺の姿が見えているらしい。
 つい下肢の方に目を向ける。スイヒの時に俺がされたように、臀部を突き出すようにしながら座っている。キスイのモノが、エンキのーーーーーーー

「こ…コウヤ……?どうしてエンキのあそこに………」
「堕とされたんだよ。捕まったから」

「おとさ、れ、た………?」

 言葉がうまく紡げなかった。あの日ギョクヒが指を挿れた場所にキスイのモノが埋まっている。床には血と白濁が混ざったようなモノも見えた。遅れて感情がついてくる。

「え、エンキ!?やめて、堕ちないで!!エンキ!?」
「………あぁ、白姫様。お久しぶりです」

 ガラスを叩くとようやく気づいたようにキスイが目を向ける。すぐにエンキの口を手のひらで覆った。
 この間と同じ優しい喋り方なのに、この異様な光景の中で平然を保っている。狂っているとしか思えなかった。そして、エンキに打ち付ける腰は止めない。

「キスイ…!やめて!エンキを堕とさないで!!!」
「もう手遅れです。焔姫は堕とされました、……俺の手によって」

「どうして!?王様は…どうして王様は何も言わないの!!?」

「王が命令したからです。今すぐ焔姫を堕とせ、と」

 混乱した。言われている意味が分からなかった。怒りに呑まれる。

「ふざけんな!!!エンキはモノじゃない!!やめろ!!!」

 ガラスに拳を何度も叩きつける。

 どうして王がそんな命令をする?この選抜は王が自身の妃を選ぶためのものだ。候補者を減らすメリットが分からない。行動の真意を考える。
 打ち付ける拳に呼応するするようにエンキの喘ぎ声はひどくなっていく。キスイが呻くたびにエンキのソコから白いモノが溢れた。
 エンキの先っぽからは何も出なくて、…揺れているだけ。

「え、えんき?」

 泣き叫んでいたエンキの、様子が変わった。耐えるように眉根を寄せていた表情が和らぐ。喘ぎ声が苦しみを帯びたものから甲高いものへと変わっていく。次第に表情が変わっていった。
 ーーーあの日見たスイヒのように。

「男性器を挿れられたら、望まない相手でも寵姫にされる」
「…は?」

「愛が通じなくても自分のものにできるということ。彼らのように」

 どういうことだろう。愛が通じてないのに堕とされるなんてそれ以上に怖いものはない。下手をしたら姦通相手にずっと縛られることになる。ギョクヒのように相手を想って指で慰め続けるしかない。
 でも、…彼らのようにとはどういう意味だろうか。

「………もう少し見ていく?私は飽きてしまった」

「飽きたって…!エンキはあんなに苦しんでるのに!!!」
「そうかな?私には悦んでいるように見えるけど」

 コウヤの発言に目を見開く。目の前で苦しんでいる人がいるのに全く興味を示さそうとしない。キスイも取り乱すことなく腰を打ちつけている。見せつけるように自身の唇でエンキの唇を塞いだ。
 自分がおかしいのだろうか。
 エンキが切なげにこちらを見た。ハクヒ、ハクヒ…♡と言いながら、目を瞑ったりこっちを見つめたりする。すぐにキスイが目元を手で覆った。まるでこちらを見せないように。

「彼、…彼女か。見ないでと言ってるのにハクヒは意地悪だね」
「だって…っキスイをやめさせないと……!」

「やめないよ。私たちが見ている限りずっとやめない」
「………なんで」

「さぁ?次に会えたら聞いてみるといい。教えてくれるとは思えないけど」

 うんざりした様子でコウヤが呟いた。俺の下半身は不覚にもエンキたちに反応してしまう。でもコウヤのソコは全く反応していない。腹部に腕が回る。

「そろそろ部屋に戻りたいな。ハクヒが居たいなら別だけど」
「も、戻るよ…戻ればいいんだろ!!!」

 ガラスに大きく拳を打ちつけた。今までで一番大きな音がしてエンキがこちらに手を伸ばした。
 切なげに名前を何度も呼ぶ。振り返ろうとしては、足を進めるを繰り返した。何度も振り返ろうとした。しかし立ち止まればその分エンキの苦しみは増す。見捨てるみたいで心が苦しい。
 助けて欲しいのに、コウヤは黙ってこちらを見ているだけだった。

 逃げるようにドアの外に出た。
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