27 / 38
23-1.考えごと
しおりを挟む
時刻が夕方を迎える頃。
エンキのことを考えていた。あの日、キスイに堕とされた。教育係にはコウヤを指名していた。つまり自らキスイを望んだ訳ではない。
ーーー愛が通じなくても、堕とされれば寵姫にされる。
きっかけは命令で、王に逆らうと殺されてしまうらしい。つまり彼らは従うしかなかった。そしてエンキは堕とされた時に抵抗していた。
キスイとの関係性は分からないけど直前で脱走する位だ、…きっと本意ではなかったのだろう。それでも堕ちた事実は変えられない。
季節は春に近づいている。この部屋は常に暖かいけれど心なしか寒く感じた。
「また外を見ているの?」
コウヤが戻ってきた。時計を見ると思ったよりも時間が経っている。どうやら王様からの呼び出しは一筋縄ではいかないらしい。呆れた表情の中に些かの疲れを感じさせた。
「ハクヒも飽きないね」
「…ただの暇つぶしだよ」
この部屋には娯楽がない。訓練に関する道具以外はあの写真たちだけ。それもカショウが来た日から封印している。
結局習字以外の勉強は全然していない。暇つぶしになるものをお願いしたけどやんわりと躱されてしまった。聖宮の方がよっぽど欲しいものが手に入る。
「コウヤは会いたい人いないの?」
「今はいない」
「でも好きな人はいるんでしょ?」
この前そんな口ぶりだった。好きな人は外に出さない…とかなんとか。詳細は覚えてないけど怖いくらい好きなことは伝わってきた。
「好きな人はいる。でも、今は会いに行く必要がない」
少しだけ胸が痛んだ、気がした。やっぱり好きな人がいるんだ…いるとは思っていたけど想像と本人の口から聞くのでは威力が違う。
しかし、会いにいく必要がないとはどういうことだろう。…もしかして、振られたのかな。
「他人に興味がないのに好きな人はいるの?」
「正確には好きな人以外の他人に興味がない、かな」
エンキたちを見ても感情が動く様子はなかった。キスイやカショウにも友人のようには接しない。やはり他人との関係が希薄で、気になるもの以外に興味がないのだろう。
「なんで会いに行かないの」
視線が合う。形の良い唇が薄く微笑んだ。
「ハクヒには関係ないよ」
少し意地悪な質問をした自覚はある。見事にカウンターを喰らった。体はすごく、心はちょっと…距離が縮まったと思った。残念ながら思っていたのは自分だけだったようだ。
「コウヤって家族いるの?」
「いない」
やっぱりコウヤの感情は動かない。悲しみも見受けられない。でもこちらは申し訳ない気持ちになる。
「…なんか、ごめん」
「謝る必要はない。事実だから」
「あのさ、…コウヤ、えらい人なの?」
ずっと気になっていた。コウヤは何者なのだろう?王様に呼ばれる位だから教育係だけが仕事ではないはず。ピンポイントに聞くのは躊躇われたのでふわっと聞いた。
「すごくえらい」
すごく、…偉いのか。強調すると言うことは俺の予想以上に偉いのだろう。急に緊張し始めてしまう。コウヤは気にも止めずにずカーテンを閉めていく。まるで景色から隔離するように。
「そんなにえらい人なの?なんでそんな人が…」
こんなえっちな訓練を、…間違えた。聖妃選抜の担当をしているのだろうか。
「偉いけど、それだけだと欲しいものが手に入らない」
「欲しいもの?」
「そ。だからハクヒを教育している」
「俺?」
何でも手に入りそうなのに、コウヤでも手に入らないものがあるのか。ところで、どうしてそこで俺の名前が上がるのだろう。首を傾げる。
「ハクヒが聖妃になれば私の夢が叶うんだ」
「ゆ、ゆめって?」
「……それはヒミツ。聖妃になれたら教えてあげる」
この話は終わり、と言いながら頭を撫でてくる。急に夢という期待を背負わされた。偉い人が時間を割いて教育するほど叶えたい夢とはなんだろうか。
ふと現実に戻る。急にコウヤと離れてしまったみたいで寂しい。やっぱり聖妃になんて、なりたくない。
「さすがにハクヒも退屈だろうから、プレゼントを用意した。いる?」
「プレゼント?」
もしかして何か娯楽を持ってきてくれたのだろうか。大きく頷く。
「訓練を頑張れたらあげるね」
微笑まれた。
エンキのことを考えていた。あの日、キスイに堕とされた。教育係にはコウヤを指名していた。つまり自らキスイを望んだ訳ではない。
ーーー愛が通じなくても、堕とされれば寵姫にされる。
きっかけは命令で、王に逆らうと殺されてしまうらしい。つまり彼らは従うしかなかった。そしてエンキは堕とされた時に抵抗していた。
キスイとの関係性は分からないけど直前で脱走する位だ、…きっと本意ではなかったのだろう。それでも堕ちた事実は変えられない。
季節は春に近づいている。この部屋は常に暖かいけれど心なしか寒く感じた。
「また外を見ているの?」
コウヤが戻ってきた。時計を見ると思ったよりも時間が経っている。どうやら王様からの呼び出しは一筋縄ではいかないらしい。呆れた表情の中に些かの疲れを感じさせた。
「ハクヒも飽きないね」
「…ただの暇つぶしだよ」
この部屋には娯楽がない。訓練に関する道具以外はあの写真たちだけ。それもカショウが来た日から封印している。
結局習字以外の勉強は全然していない。暇つぶしになるものをお願いしたけどやんわりと躱されてしまった。聖宮の方がよっぽど欲しいものが手に入る。
「コウヤは会いたい人いないの?」
「今はいない」
「でも好きな人はいるんでしょ?」
この前そんな口ぶりだった。好きな人は外に出さない…とかなんとか。詳細は覚えてないけど怖いくらい好きなことは伝わってきた。
「好きな人はいる。でも、今は会いに行く必要がない」
少しだけ胸が痛んだ、気がした。やっぱり好きな人がいるんだ…いるとは思っていたけど想像と本人の口から聞くのでは威力が違う。
しかし、会いにいく必要がないとはどういうことだろう。…もしかして、振られたのかな。
「他人に興味がないのに好きな人はいるの?」
「正確には好きな人以外の他人に興味がない、かな」
エンキたちを見ても感情が動く様子はなかった。キスイやカショウにも友人のようには接しない。やはり他人との関係が希薄で、気になるもの以外に興味がないのだろう。
「なんで会いに行かないの」
視線が合う。形の良い唇が薄く微笑んだ。
「ハクヒには関係ないよ」
少し意地悪な質問をした自覚はある。見事にカウンターを喰らった。体はすごく、心はちょっと…距離が縮まったと思った。残念ながら思っていたのは自分だけだったようだ。
「コウヤって家族いるの?」
「いない」
やっぱりコウヤの感情は動かない。悲しみも見受けられない。でもこちらは申し訳ない気持ちになる。
「…なんか、ごめん」
「謝る必要はない。事実だから」
「あのさ、…コウヤ、えらい人なの?」
ずっと気になっていた。コウヤは何者なのだろう?王様に呼ばれる位だから教育係だけが仕事ではないはず。ピンポイントに聞くのは躊躇われたのでふわっと聞いた。
「すごくえらい」
すごく、…偉いのか。強調すると言うことは俺の予想以上に偉いのだろう。急に緊張し始めてしまう。コウヤは気にも止めずにずカーテンを閉めていく。まるで景色から隔離するように。
「そんなにえらい人なの?なんでそんな人が…」
こんなえっちな訓練を、…間違えた。聖妃選抜の担当をしているのだろうか。
「偉いけど、それだけだと欲しいものが手に入らない」
「欲しいもの?」
「そ。だからハクヒを教育している」
「俺?」
何でも手に入りそうなのに、コウヤでも手に入らないものがあるのか。ところで、どうしてそこで俺の名前が上がるのだろう。首を傾げる。
「ハクヒが聖妃になれば私の夢が叶うんだ」
「ゆ、ゆめって?」
「……それはヒミツ。聖妃になれたら教えてあげる」
この話は終わり、と言いながら頭を撫でてくる。急に夢という期待を背負わされた。偉い人が時間を割いて教育するほど叶えたい夢とはなんだろうか。
ふと現実に戻る。急にコウヤと離れてしまったみたいで寂しい。やっぱり聖妃になんて、なりたくない。
「さすがにハクヒも退屈だろうから、プレゼントを用意した。いる?」
「プレゼント?」
もしかして何か娯楽を持ってきてくれたのだろうか。大きく頷く。
「訓練を頑張れたらあげるね」
微笑まれた。
43
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる