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2章
王都到着
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それから2日後の朝。東の紫色の空に、かすかな赤みが差して、ゆっくりと昇った太陽の光が、ミッテルスラムトの大地を舐めるようにゆっくりと広がっていく。
アルネリアたち3名が乗った馬車には、相変わらずガリマーロが付き添って行った。
「うーむ……」
馬車の中では、アルネリアが小型の本を開いて、ぶつぶつと口の中でつぶやいている。
「こんな揺れる馬車の中で、なんの勉強を?」
パウラがそっと囁くと、アルネリアはちらりと開いた本を目の前にかざした。
「あまり大きな声では言えないが、シャテーニエ家、つまりソレイヤールの歴代の王様のあだ名がすごいんだ」
アルネリアの指が示した行には、3代前の王『ネカテリス』の名が印刷され、その横に、カッコつきで『怠慢王』と注釈がついていた。その前の『ライテリス』王には『豚王』とある。
「よっぽど人望がない王様だったとか?」
「それにしても、よく怒らないな、今の王族たちが。ノルデスラムトは、美男の誉れ高い先王が『端麗王』、武勲の誉れ高いその前の王が『獅子王』……と、こっちが恥ずかしくなるくらい持ち上げているというのに」
「それ、ユシドーラさまのお耳に入ったら、食事抜きどころじゃ済まないかも」
「あはは、もっともだ」
口やかましい姉ユシドーラの監視下から解き放たれ、アルネリアの表情も、口ぶりも話の内容も、日に日にのびやかになっていた。
そのアルネリアは唐突に本を膝に置くと、馬車が揺れるのも構わず、ぐっと窓に顔を近づけた。
道の端に、大きなモニュメントがある。黒くすすけたその大きな建造物は、ブドウの粒を円錐形に重ねた形をしており、さらによく見ると、その粒だと思われたものが、実はしゃれこうべの形をしている。
それが判別できた瞬間、アルネリアは、ひゅう、と息を飲み込んだ。
一度気になると、調べずにはいられないアルネリアは、乗合馬車が駅に停まったとき、窓から身を乗り出して、ガリマーロになにかと尋ねた。
「あれか。あれは、悪魔を祓うまじないだそうだ」
ガリマーロは答えにくそうに口を開く。
「なるほど。昔の人は迷信深いですからね」
「いや、あれは10年前くらいにつくられたらしい」
10年前。アルネリアが思い描いていた時代よりもはるかに最近だ。
「最近じゃないですか。この時代に悪魔なんてものがいると信じてるんですか、この国の人は?」
「おまえにとっては『そんなもの』かもしれないことが、人々を支えていることもあるんだ」
ああ……アルネリアは、短く息を洩らすと目を閉じ、眉間にしわを寄せた。
「そうですね。今のは失言でした。10年前といえば、戦もありましたから、鎮魂の意味を含めているのかもしれませんね」
ガリマーロはそれには答えず、す、と手袋をはめた指で、遠くを差した。
「……見えるか? 塔が見えるだろう。あれが砦で、その向こうが、ソレイヤールだ」
アルネリアは、するっと首をひっこめると、パウラの肩をポンポンと叩いた。
「ねえ! 見てほら。もうすぐソレイヤールだって!」
ガリマーロは、そんなふたりに隠れるように、曇らせた顔をそっと伏せた。
◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆
乗合馬車は、ミッテルスラムト最後の駅に到着した。目の前には左右に伸びる塀を備えた砦があり、建物の中に隧道のように穿たれた道がある。
ミッテルスラムトと半島の国ソレイヤールを分かつ国境には、ノルデスラムトとミッテルスラムトを分ける川のような、自然の地形による国境が存在しない。
しかも、事前に話は聞いていたものの、ソレイヤールへの入国は思った以上に厳しい。通行税が課せられるうえに、身分証明も提出しなければならない。この身分の証になるものがなければ、門前払いを食わされる仕組みになっている。
アルネリアたちには王直々の紹介状が用意されているのだが、審査の厳しさに祭りの前という時期も重なって、長蛇の列の中で並ばされることになってしまった。
「ここで厳しくしても意味がないだろう。半島なのだから、敵軍に船で上陸されたら……」
待たされる不満をビルギッタが口にすると、ガリマーロは自分の唇に人差し指を当てた。
「そういう話が似合う場所じゃない。不満はわかるが、子供たちのほうが肝が据わっているではないか」
ビルギッタは、ハッとして子供たちを見た。ふたりはつま先立ちをして列の先を眺めたり、顔を寄せて、クスクス笑い声を立てたりしていた。こんなことすら楽しめる若さをもう失ってしまったのだなと、ビルギッタは自嘲気味に笑った。
40分ほど並んだあと、窓口に国王からの紹介状を示す。係員が鋭い目つきで、アルネリアたち一行を、上から下まで睨めつけた。
「ノルデスラムトの毛皮商人トロヤの妻ビルギッタ。およびその息子パウハルト。アルベルト。従者ガリマーロ。これに相違ないな? 入国の目的はなんだ?」
「御前試合の観戦と、武具の調達です」
「よろしい。顔を見せなさい」
係員は、手元の壺に指を差し込むと、ビルギッタの額の上で十字を描くように人差し指を滑らせた。
「な、なにを」
驚いて腰を引きそうになったビルギッタだが、
「入国の証だ」
係員の言葉で口を結んだ。パウラとアルネリア、そしてガリマーロも同じ扱いを受けたが、彼らの額には何の痕跡も残らなかった。
「解せぬ」
ビルギッタは、周りに聞こえないような声でつぶやきながら、アルネリアを守るように傍らに寄り添った。
砦から一歩外に踏み出した瞬間、遮るものがない陽光がアルネリアを照らした。
「すごい……」
雲ひとつない青空、色濃い木々の緑、赤い屋根瓦。街路樹を彩る黄色の花。ソレイヤールはあらゆるものが原色で彩られた世界だ。
「楽園のようなところだね」
パウラも思わずアルネリアの手を握った。
「母様、いろいろ見て回ってもいい? あとお腹すいた、おいしいお店ないかな」
ねだるような眼で見つめられ、ビルギッタは思わず苦笑した。
「まず、逗留先の商館を目指しましょう。ゆっくり食事してる暇はありません」
再び馬車に乗り、見たこともない明るい景色に目を奪われながら王都にあるノルデスラムト貿易商会を目指す。
「あれっぽっちじゃ足りない。もっと食べたい……」
国境では簡単な携帯食しか食べさせてもらえなかったアルネリアは、その間、魂が抜けたような表情で窓に頭を預けていた。
◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆
さらに馬車に揺られること半日。日暮れ近くなって、馬車は王都ボレムに到着した。ノルデスラムト商館には、国王と商会からの伝達も正しく送られており、到着時には3つの部屋が用意されていた。アルネリアとパウラが同室、ビルギッタとガリマーロは個室という部屋わけである。
「お腹すいた! 早くごはんにしよう」
アルネリアに促された一行は、旅の荷物をほどくのもほどほどに、夕暮れのボレムの町へと繰り出した。
ボレムは新しい都で、町は城壁で囲まれていない。石畳の破損も少ない。町の中を歩いていると、ソレイヤール語が細かい渦になってアルネリアを取りまいた。
ノルデスラムトとミッテルスラムトの言語は、多少の発音とアクセントの違いがあるくらいで、かなり似ている。それに比べてソレイヤール語は、同じ祖語から分化した言語であるが、ノルデスラムトの固い響きとは違う、柔和な発音が特色になっている。教養の一環として、アルネリアもパウラも幼いころから学んでいる言語で、音楽のようで耳にやさしく、ついつい会話に聞き耳を立てたくなる。が……
「もうすぐ御前試合だなあ。うちの王さん、また居眠りこくかね」
「ほんっとに、のんきで凡庸で王様やってられるんだから、いいご身分だねえ」
響きが美しくても、会話の内容まで美しいわけではないことがわかった。それにしても、街の中で堂々と国王批判ができるとは。
気づけばいつの間にか、ガリマーロが先頭に立ち、一行を先導して歩くような形になっていた。
「ガリマーロさん、いいお店知ってるの?」
「あ? ああ。まあ、いろいろと旅して歩いているからな」
「僕、キジの丸焼きが食べたいな。あと鴨肉の包み焼き!」
アルネリアの声のトーンが一気に高くなり、隣にいたパウラが吹きだした。
「なんだそれは。王侯貴族じゃあるまいし。そんな豪勢なものを庶民が気軽に食べられるわけがないだろう」
「ええっほんとう……?」
アルネリアの顔から表情が消え、ガリマーロは苦笑した。
「まあ、でも庶民には庶民の味がある。川魚は好きか? ここでは『川の剣士』と呼ばれている魚が名物なんだ」
「面白い名前だね」
「川の中で剣のように光るからそう呼ばれている」
「いいね、それ。かっこいい。食べたい」
とたんに顔つきがパアっと輝くアルネリア。横で腹を抱えているパウラのことは、完全に無視することにした。
ボレムの町は不思議な場所である。治安の悪いミッテルスラムトはもちろん、地元ノルデスラムトですら、町の中でこんなふうにはしゃぎながら歩くことはできない。しかし、ボレムの繁華街の解放された空気の中では、半分踊りながらでも通行できそうな気がしてくる。
ところが。
浮かれすぎたのか、キョロキョロしすぎたのか……アルネリアの肩が、ドスンと音を立てて通行人にぶつかった。30代くらいの、中肉中背の男である。
「ごめんなさい……」
アルネリアが謝ったと同時に、ガリマーロは相手の前に立ちふさがった。
「すまない。子供のしたことだ。許してやってほしい」
しかし、男は何も言わず、その場でガリマーロの顔を、ぶしつけなくらいじっと見つめ、おもむろに口を開いた。
「フィラーロさん。フィラーロさんだろ? 無事だったのですか?」
男は、やにわにガリマーロの腕をつかみ、唾がかかりそうなくらい顔を寄せてきた。
「悪いが、人違いだ」
ガリマーロはさっと顔を背けて男の手を払うと、すでに初夏だというのにシャツの襟を立てた。男は、納得できないとばかりにガリマーロの顔を執拗にのぞき続けたが……。
「うーん、言われてみれば、フィラーロさんにしちゃ老けすぎてるかもしれませんな。すまん、俺の勘違いだったようだ」
納得がいったのか、男はぺこりと頭を下げてから、人の波にまぎれて去って行った。
「大丈夫ですか、ガリマーロさん」
パウラがそっと尋ねると、ガリマーロは静かに頷く。
「心配するな。酔っ払いに絡まれることはよくあることだ。それより飯にしよう。アルが待ちきれないだろうからな」
ガリマーロが「ここにしよう」と指さしたのは、木組み家屋の壁に、蔓バラを這わせていた小さな店だった。軒に下がっている吊り看板もバラと皿が組み合わさっている意匠である。
木の扉をくぐって入ると、中は意外に奥行きがあり、すでに大勢の人が、テーブルを囲んで、酒や料理を楽しんでいた。
「4人だ。空いているか?」
ガリマーロが店員と話をしている間、アルネリアは、店の中を見回した。気さくな雰囲気の食堂でありながら、入っている人は皆、華やかな色遣いの服を着こなしている。よく見れば、服の素材は木綿らしいが、首にスカーフやリボンなどをあしらうことで、男も女も独自のセンスを競っていることがわかる。
さらにアルネリアの気分を盛り上げたのは、運ばれてきた川魚である。
「こちらが『川の剣士』バター焼きでございます」
大人の男性が掌を広げたくらいの長さがある川魚に粉と香辛料をまぶしてから、バターで焼いたという、素朴ながら香りも味わいも深い料理であった。
「どうです? 酒も頼みましょうか」
ビルギッタの提案を、ガリマーロは断らなかった。
「ネクタル酒の甘くないやつを頼もう」
「僕たちも飲んでみたい。甘いのがいいな」
ついでにアルネリアが上目遣いでビルギッタを見つめてみたものの、
「ダメです」
あっさりと却下されてしまった。
しょんぼリしながら、他においしそうなものはないかと、店内を見渡すアルネリアの視野の中に、漆喰の壁を背にしてテーブルについている2人の男性の姿が入った。
ふたりとも長身で、いかにも仕立てが良さそうな、つやの良い紺色のチュニックを着ている。明るい栗色の髪の男と、金髪の男。それだけなら特に目を引くこともなかっただろう。しかしアルネリアの視線は、右側の、金髪の男にくぎ付けになっていた。なぜなら彼は、気さくな店に似つかわしくない黒い仮面をつけていたからである。それは目から鼻にかける顔の上半分を隠すもので、珍しいことに鼻の部分が弧を描いて、猛禽のクチバシよりも長く伸びていた。
アルネリアは、隣のパウラを肘でそっとつついた。
「いやー、それにしてもすごいね。個性的というか、奇抜な装いの人がいるんだね」
ノルデスラムト語話者が周りにいないことで気が大きくなったアルネリア。その声量は、すでに内緒話の域を軽く超えていた。
「見える? 右手の奥のテーブル。こっち向いて座っている2人の男いるでしょ。あの人凄いね。仮面だよ仮面! 鳥みたいだね」
「仮面?」
パウラがそちらに顔を向けた、そのとき。
「そこの少年!」
仮面の男とその連れが、いきなり立ち上がった。顔は、まっすぐこちらに向けられている。
「え? なんで」
「話がある!」
男たちは、勢い込んだ様子でテーブルを回り、ごった返した人々をよけながら、アルネリアを目指して歩いてこようとしている。
そのときだった。
「このバカども。いいから来い! 親父、勘定は置いておく。釣りはいらない」
ガリマーロはテーブルの上に硬貨を叩きつけるように置くと、パウラとアルネリアの襟首を掴んで表に連れ出した。
「調子に乗って大声でしゃべるからだ! ノルデスラムト語ができるやつだっているかもしれないだろう」
「ご、ごめんなさーい」
涼しい風が心地よい、初夏の夜。
ボレムの町の通りには、そぞろ歩き、酒場に流れるたくさんの人々が繰り出していた。アルネリアとパウラを抱えたガリマーロは、その人の流れの中に滑り込み、あっという間に溶け込んでいった。
◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆
「いくらなんでも浮かれすぎです! 私たちは物見遊山に来たわけではないのですよ!」
その夜。商館の一室で、アルネリアは涙目になるほどビルギッタから叱られた。
相手が王女でも、元乳母はこういうときには容赦がない。
「もう、ノルデスラムトに帰ります!」
「それだけは。おとなしくしますから、それだけは」
アルネリアは、ビルギッタの前に膝をついて、顔の前で祈るように手を組んだ。
「母上。わたくしからも、お願いいたします。アル……姫様には悪気はなかったのです。ただ初めての経験で、舞い上がってしまっただけなのです」
パウラがアルネリアの背後から、庇うように肩を抱いた。
「お前がついていながら……と言いたいところだけれど」
真剣なまなざしにビルギッタは苦笑し、ふたりの少女の頭を撫でた。
「まったくその慎みがなく、軽率な行い。誰が見ても王女には見えませんね。まあいいでしょう。今回ばかりは許します。ただし、決して気を許してはいけませんよ。御前試合は2日後です。それまでは、この商館から出ることを禁じます!」
えええー。
不満の声がこぼれそうになるのを、アルネリアはかろうじて堪えた。ここでビルギッタを再び怒らせては、元も子もない。王太子の真実を知るまでは帰るわけにはいかないのだ。
それから、キジの丸焼きと鴨肉の包み焼きだって、諦めたわけではないのだから!
アルネリアたち3名が乗った馬車には、相変わらずガリマーロが付き添って行った。
「うーむ……」
馬車の中では、アルネリアが小型の本を開いて、ぶつぶつと口の中でつぶやいている。
「こんな揺れる馬車の中で、なんの勉強を?」
パウラがそっと囁くと、アルネリアはちらりと開いた本を目の前にかざした。
「あまり大きな声では言えないが、シャテーニエ家、つまりソレイヤールの歴代の王様のあだ名がすごいんだ」
アルネリアの指が示した行には、3代前の王『ネカテリス』の名が印刷され、その横に、カッコつきで『怠慢王』と注釈がついていた。その前の『ライテリス』王には『豚王』とある。
「よっぽど人望がない王様だったとか?」
「それにしても、よく怒らないな、今の王族たちが。ノルデスラムトは、美男の誉れ高い先王が『端麗王』、武勲の誉れ高いその前の王が『獅子王』……と、こっちが恥ずかしくなるくらい持ち上げているというのに」
「それ、ユシドーラさまのお耳に入ったら、食事抜きどころじゃ済まないかも」
「あはは、もっともだ」
口やかましい姉ユシドーラの監視下から解き放たれ、アルネリアの表情も、口ぶりも話の内容も、日に日にのびやかになっていた。
そのアルネリアは唐突に本を膝に置くと、馬車が揺れるのも構わず、ぐっと窓に顔を近づけた。
道の端に、大きなモニュメントがある。黒くすすけたその大きな建造物は、ブドウの粒を円錐形に重ねた形をしており、さらによく見ると、その粒だと思われたものが、実はしゃれこうべの形をしている。
それが判別できた瞬間、アルネリアは、ひゅう、と息を飲み込んだ。
一度気になると、調べずにはいられないアルネリアは、乗合馬車が駅に停まったとき、窓から身を乗り出して、ガリマーロになにかと尋ねた。
「あれか。あれは、悪魔を祓うまじないだそうだ」
ガリマーロは答えにくそうに口を開く。
「なるほど。昔の人は迷信深いですからね」
「いや、あれは10年前くらいにつくられたらしい」
10年前。アルネリアが思い描いていた時代よりもはるかに最近だ。
「最近じゃないですか。この時代に悪魔なんてものがいると信じてるんですか、この国の人は?」
「おまえにとっては『そんなもの』かもしれないことが、人々を支えていることもあるんだ」
ああ……アルネリアは、短く息を洩らすと目を閉じ、眉間にしわを寄せた。
「そうですね。今のは失言でした。10年前といえば、戦もありましたから、鎮魂の意味を含めているのかもしれませんね」
ガリマーロはそれには答えず、す、と手袋をはめた指で、遠くを差した。
「……見えるか? 塔が見えるだろう。あれが砦で、その向こうが、ソレイヤールだ」
アルネリアは、するっと首をひっこめると、パウラの肩をポンポンと叩いた。
「ねえ! 見てほら。もうすぐソレイヤールだって!」
ガリマーロは、そんなふたりに隠れるように、曇らせた顔をそっと伏せた。
◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆
乗合馬車は、ミッテルスラムト最後の駅に到着した。目の前には左右に伸びる塀を備えた砦があり、建物の中に隧道のように穿たれた道がある。
ミッテルスラムトと半島の国ソレイヤールを分かつ国境には、ノルデスラムトとミッテルスラムトを分ける川のような、自然の地形による国境が存在しない。
しかも、事前に話は聞いていたものの、ソレイヤールへの入国は思った以上に厳しい。通行税が課せられるうえに、身分証明も提出しなければならない。この身分の証になるものがなければ、門前払いを食わされる仕組みになっている。
アルネリアたちには王直々の紹介状が用意されているのだが、審査の厳しさに祭りの前という時期も重なって、長蛇の列の中で並ばされることになってしまった。
「ここで厳しくしても意味がないだろう。半島なのだから、敵軍に船で上陸されたら……」
待たされる不満をビルギッタが口にすると、ガリマーロは自分の唇に人差し指を当てた。
「そういう話が似合う場所じゃない。不満はわかるが、子供たちのほうが肝が据わっているではないか」
ビルギッタは、ハッとして子供たちを見た。ふたりはつま先立ちをして列の先を眺めたり、顔を寄せて、クスクス笑い声を立てたりしていた。こんなことすら楽しめる若さをもう失ってしまったのだなと、ビルギッタは自嘲気味に笑った。
40分ほど並んだあと、窓口に国王からの紹介状を示す。係員が鋭い目つきで、アルネリアたち一行を、上から下まで睨めつけた。
「ノルデスラムトの毛皮商人トロヤの妻ビルギッタ。およびその息子パウハルト。アルベルト。従者ガリマーロ。これに相違ないな? 入国の目的はなんだ?」
「御前試合の観戦と、武具の調達です」
「よろしい。顔を見せなさい」
係員は、手元の壺に指を差し込むと、ビルギッタの額の上で十字を描くように人差し指を滑らせた。
「な、なにを」
驚いて腰を引きそうになったビルギッタだが、
「入国の証だ」
係員の言葉で口を結んだ。パウラとアルネリア、そしてガリマーロも同じ扱いを受けたが、彼らの額には何の痕跡も残らなかった。
「解せぬ」
ビルギッタは、周りに聞こえないような声でつぶやきながら、アルネリアを守るように傍らに寄り添った。
砦から一歩外に踏み出した瞬間、遮るものがない陽光がアルネリアを照らした。
「すごい……」
雲ひとつない青空、色濃い木々の緑、赤い屋根瓦。街路樹を彩る黄色の花。ソレイヤールはあらゆるものが原色で彩られた世界だ。
「楽園のようなところだね」
パウラも思わずアルネリアの手を握った。
「母様、いろいろ見て回ってもいい? あとお腹すいた、おいしいお店ないかな」
ねだるような眼で見つめられ、ビルギッタは思わず苦笑した。
「まず、逗留先の商館を目指しましょう。ゆっくり食事してる暇はありません」
再び馬車に乗り、見たこともない明るい景色に目を奪われながら王都にあるノルデスラムト貿易商会を目指す。
「あれっぽっちじゃ足りない。もっと食べたい……」
国境では簡単な携帯食しか食べさせてもらえなかったアルネリアは、その間、魂が抜けたような表情で窓に頭を預けていた。
◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆
さらに馬車に揺られること半日。日暮れ近くなって、馬車は王都ボレムに到着した。ノルデスラムト商館には、国王と商会からの伝達も正しく送られており、到着時には3つの部屋が用意されていた。アルネリアとパウラが同室、ビルギッタとガリマーロは個室という部屋わけである。
「お腹すいた! 早くごはんにしよう」
アルネリアに促された一行は、旅の荷物をほどくのもほどほどに、夕暮れのボレムの町へと繰り出した。
ボレムは新しい都で、町は城壁で囲まれていない。石畳の破損も少ない。町の中を歩いていると、ソレイヤール語が細かい渦になってアルネリアを取りまいた。
ノルデスラムトとミッテルスラムトの言語は、多少の発音とアクセントの違いがあるくらいで、かなり似ている。それに比べてソレイヤール語は、同じ祖語から分化した言語であるが、ノルデスラムトの固い響きとは違う、柔和な発音が特色になっている。教養の一環として、アルネリアもパウラも幼いころから学んでいる言語で、音楽のようで耳にやさしく、ついつい会話に聞き耳を立てたくなる。が……
「もうすぐ御前試合だなあ。うちの王さん、また居眠りこくかね」
「ほんっとに、のんきで凡庸で王様やってられるんだから、いいご身分だねえ」
響きが美しくても、会話の内容まで美しいわけではないことがわかった。それにしても、街の中で堂々と国王批判ができるとは。
気づけばいつの間にか、ガリマーロが先頭に立ち、一行を先導して歩くような形になっていた。
「ガリマーロさん、いいお店知ってるの?」
「あ? ああ。まあ、いろいろと旅して歩いているからな」
「僕、キジの丸焼きが食べたいな。あと鴨肉の包み焼き!」
アルネリアの声のトーンが一気に高くなり、隣にいたパウラが吹きだした。
「なんだそれは。王侯貴族じゃあるまいし。そんな豪勢なものを庶民が気軽に食べられるわけがないだろう」
「ええっほんとう……?」
アルネリアの顔から表情が消え、ガリマーロは苦笑した。
「まあ、でも庶民には庶民の味がある。川魚は好きか? ここでは『川の剣士』と呼ばれている魚が名物なんだ」
「面白い名前だね」
「川の中で剣のように光るからそう呼ばれている」
「いいね、それ。かっこいい。食べたい」
とたんに顔つきがパアっと輝くアルネリア。横で腹を抱えているパウラのことは、完全に無視することにした。
ボレムの町は不思議な場所である。治安の悪いミッテルスラムトはもちろん、地元ノルデスラムトですら、町の中でこんなふうにはしゃぎながら歩くことはできない。しかし、ボレムの繁華街の解放された空気の中では、半分踊りながらでも通行できそうな気がしてくる。
ところが。
浮かれすぎたのか、キョロキョロしすぎたのか……アルネリアの肩が、ドスンと音を立てて通行人にぶつかった。30代くらいの、中肉中背の男である。
「ごめんなさい……」
アルネリアが謝ったと同時に、ガリマーロは相手の前に立ちふさがった。
「すまない。子供のしたことだ。許してやってほしい」
しかし、男は何も言わず、その場でガリマーロの顔を、ぶしつけなくらいじっと見つめ、おもむろに口を開いた。
「フィラーロさん。フィラーロさんだろ? 無事だったのですか?」
男は、やにわにガリマーロの腕をつかみ、唾がかかりそうなくらい顔を寄せてきた。
「悪いが、人違いだ」
ガリマーロはさっと顔を背けて男の手を払うと、すでに初夏だというのにシャツの襟を立てた。男は、納得できないとばかりにガリマーロの顔を執拗にのぞき続けたが……。
「うーん、言われてみれば、フィラーロさんにしちゃ老けすぎてるかもしれませんな。すまん、俺の勘違いだったようだ」
納得がいったのか、男はぺこりと頭を下げてから、人の波にまぎれて去って行った。
「大丈夫ですか、ガリマーロさん」
パウラがそっと尋ねると、ガリマーロは静かに頷く。
「心配するな。酔っ払いに絡まれることはよくあることだ。それより飯にしよう。アルが待ちきれないだろうからな」
ガリマーロが「ここにしよう」と指さしたのは、木組み家屋の壁に、蔓バラを這わせていた小さな店だった。軒に下がっている吊り看板もバラと皿が組み合わさっている意匠である。
木の扉をくぐって入ると、中は意外に奥行きがあり、すでに大勢の人が、テーブルを囲んで、酒や料理を楽しんでいた。
「4人だ。空いているか?」
ガリマーロが店員と話をしている間、アルネリアは、店の中を見回した。気さくな雰囲気の食堂でありながら、入っている人は皆、華やかな色遣いの服を着こなしている。よく見れば、服の素材は木綿らしいが、首にスカーフやリボンなどをあしらうことで、男も女も独自のセンスを競っていることがわかる。
さらにアルネリアの気分を盛り上げたのは、運ばれてきた川魚である。
「こちらが『川の剣士』バター焼きでございます」
大人の男性が掌を広げたくらいの長さがある川魚に粉と香辛料をまぶしてから、バターで焼いたという、素朴ながら香りも味わいも深い料理であった。
「どうです? 酒も頼みましょうか」
ビルギッタの提案を、ガリマーロは断らなかった。
「ネクタル酒の甘くないやつを頼もう」
「僕たちも飲んでみたい。甘いのがいいな」
ついでにアルネリアが上目遣いでビルギッタを見つめてみたものの、
「ダメです」
あっさりと却下されてしまった。
しょんぼリしながら、他においしそうなものはないかと、店内を見渡すアルネリアの視野の中に、漆喰の壁を背にしてテーブルについている2人の男性の姿が入った。
ふたりとも長身で、いかにも仕立てが良さそうな、つやの良い紺色のチュニックを着ている。明るい栗色の髪の男と、金髪の男。それだけなら特に目を引くこともなかっただろう。しかしアルネリアの視線は、右側の、金髪の男にくぎ付けになっていた。なぜなら彼は、気さくな店に似つかわしくない黒い仮面をつけていたからである。それは目から鼻にかける顔の上半分を隠すもので、珍しいことに鼻の部分が弧を描いて、猛禽のクチバシよりも長く伸びていた。
アルネリアは、隣のパウラを肘でそっとつついた。
「いやー、それにしてもすごいね。個性的というか、奇抜な装いの人がいるんだね」
ノルデスラムト語話者が周りにいないことで気が大きくなったアルネリア。その声量は、すでに内緒話の域を軽く超えていた。
「見える? 右手の奥のテーブル。こっち向いて座っている2人の男いるでしょ。あの人凄いね。仮面だよ仮面! 鳥みたいだね」
「仮面?」
パウラがそちらに顔を向けた、そのとき。
「そこの少年!」
仮面の男とその連れが、いきなり立ち上がった。顔は、まっすぐこちらに向けられている。
「え? なんで」
「話がある!」
男たちは、勢い込んだ様子でテーブルを回り、ごった返した人々をよけながら、アルネリアを目指して歩いてこようとしている。
そのときだった。
「このバカども。いいから来い! 親父、勘定は置いておく。釣りはいらない」
ガリマーロはテーブルの上に硬貨を叩きつけるように置くと、パウラとアルネリアの襟首を掴んで表に連れ出した。
「調子に乗って大声でしゃべるからだ! ノルデスラムト語ができるやつだっているかもしれないだろう」
「ご、ごめんなさーい」
涼しい風が心地よい、初夏の夜。
ボレムの町の通りには、そぞろ歩き、酒場に流れるたくさんの人々が繰り出していた。アルネリアとパウラを抱えたガリマーロは、その人の流れの中に滑り込み、あっという間に溶け込んでいった。
◆◆◆‡◆◆◆‡◆◆◆
「いくらなんでも浮かれすぎです! 私たちは物見遊山に来たわけではないのですよ!」
その夜。商館の一室で、アルネリアは涙目になるほどビルギッタから叱られた。
相手が王女でも、元乳母はこういうときには容赦がない。
「もう、ノルデスラムトに帰ります!」
「それだけは。おとなしくしますから、それだけは」
アルネリアは、ビルギッタの前に膝をついて、顔の前で祈るように手を組んだ。
「母上。わたくしからも、お願いいたします。アル……姫様には悪気はなかったのです。ただ初めての経験で、舞い上がってしまっただけなのです」
パウラがアルネリアの背後から、庇うように肩を抱いた。
「お前がついていながら……と言いたいところだけれど」
真剣なまなざしにビルギッタは苦笑し、ふたりの少女の頭を撫でた。
「まったくその慎みがなく、軽率な行い。誰が見ても王女には見えませんね。まあいいでしょう。今回ばかりは許します。ただし、決して気を許してはいけませんよ。御前試合は2日後です。それまでは、この商館から出ることを禁じます!」
えええー。
不満の声がこぼれそうになるのを、アルネリアはかろうじて堪えた。ここでビルギッタを再び怒らせては、元も子もない。王太子の真実を知るまでは帰るわけにはいかないのだ。
それから、キジの丸焼きと鴨肉の包み焼きだって、諦めたわけではないのだから!
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