鉄騎の破城槌 麗しき工兵は戦場に橋を架ける

米ちゃん

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第三章:アイゼン・ガルドの平穏な日々

ハーフエルフ、ロランドの懸念を一蹴する

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「この街の成り立ちは分かったけど、丸太とかの資材は、どっから調達したん? ヴェリア辺境領って、鉄は採れるけど、材木に使える緑は生い茂ってないで。資材調達の資金は、税金として納めさせた、ダンジョンから採れた宝物でも売って稼げるやろうけど」
「それは……立ち話も何だ。あの店で話そう」
 ロランドが顎でしゃくって促した先に『剣の芸術亭』と書かれた看板が掲げられた店があった。
 酒場兼宿屋といった風の大きな店だ。
「お? なんや余り大っぴらに喋られへん話みたいやな」
 ロランドの案内で、ランスローネたちは『剣の芸術亭』出入り口の蝶板戸を開いて店内に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
 料理を乗せた盆を持った給仕の少年が愛想良く出迎える。
「麦酒を一つと水を三つ、芋の煮転がしと、腸詰め肉を四人前注文する」
「分かりました~。こちらの席へどうぞ~」
 ロランドが言うと、給仕の少年は一同を空いている席に案内する。
(冒険者が集う酒場っちゅうのは、どの街でも変わらへんな)
 ロランドが注文した品物を待つ間、ランスローネは店内を見渡す。
 何人かの男の酔客が、ランスローネの美貌と胸の膨らみに、獣欲に満ちた眼差しを向けていた。
 自分の外見を時には武器として使う彼女は、さして気に留めない素振りをする。
(都会派の冒険者やったら、魔法で皮膚防御してビキニアーマー着た露出狂な巨乳美女なんか見慣れてるやろうけど……アイゼン・ガルドの冒険者は田舎派っちゅうこっちゃな)
 ランスローネは都会派と田舎派の冒険者の違いについて考察するが、それはあくまで彼女個人の経験から来る考えだ。
「お待たせしました~。先に飲み物をどうぞ~」
 給仕の少年が、麦酒と飲料水を入れた硝子製取っ手付容器を持って来た。
 言うに及ばず、麦酒はシュミットが飲むのだ。
「……で、丸太の出処やけど」
​ 運ばれてきた水に口をつけ、ランスローネがロランドに先を促す。
「うむ、実はな……」
​ ロランドは声を潜め、苦渋に満ちた表情で語り始めた。
​「……ヴェリア辺境領の隣には、国王直轄地があるのだが……シャルマーニ殿下は其処の森から伐採したのだ。本来なら数ヶ月の審議が必要な案件を、シャルマーニ殿下は王都キヨスからの許諾を待たず行われたのだ」
​「ほんまかいな? 見た目もごっつい胸してるけど、ほんまええ度胸した姫さんやなー」
​ ランスローネは、シャルマーニの豪胆さに呆れ混じりの感想を漏らす。
 王女とはいえ、国王直轄地の森林から無断で木を伐採するのは法を犯す行為なのである。
「実際に木を切り倒したのは、国王直轄地に住む樵夫たちだ。彼らは王家から正式に許諾を得ているしな。そして王女であるシャルマーニ殿下の命令は、樵夫たちにとっては王家からの正式な命令に等しい」
「まあ、上から命令されたら下のもんは素直に従うのが普通やしな」
「あまり大声で言うなよ。王都からの密偵が、聞き耳を立てているかもしれんからな。些細な事でも、シャルマーニ殿下を陥れる口実になるやもしれんのだ」
 ロランドは生真面目な懸念を口にする。
 彼が常に鎧を脱がない常在戦場精神でいるのは、見えない敵への警戒があるからだ。
「そんなん今さらやで。知られて困るんやったら、最初からすんなっちゅう話や」
 だが、ランスローネに一蹴されてしまう。
 旅を経て多くの修羅場をくぐってきた彼女ならではの図太さである。
「ガハハハ! そうだぜロランドの小僧」
 シュミットは笑い、麦酒を掲げてから飲む。
「……ローネさん、さっきからあの人たちがこっちをジロジロ見て気味が悪いです」
 エーリカはローブのフードを目深く被り直す。
 元々人見知りな性格もあるが、ランスローネほど世慣れていないのだ。
「お目当ては、うちやろうな。うちは美人で胸も大っきい方やから当然やけど、エーリカも隠れ巨乳やしなー」
 そう言うと、ランスローネは席を立ち、酔客たちの方へと向かう。
「──おい?」
「ローネさん?」
「お?」
 ロランドとエーリカとシュミットはランスローネの行動を訝しむ。
「なあなあ、あんたらちょっと話を聞きたいんやけど」
 ランスローネは気さくに酔客たちに話しかけた。
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