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14 救いの手 1
しおりを挟む翌朝ーーー。
良く晴れた空だった。
一晩中神聖力をかけ続けたお陰か、死亡者は出ずに夜を越せたのだ。
しかし、未だ安心できる状況ではなかった。
重症の者たちも峠を越せたわけではない。さらに新たな患者も運ばれてきたのだ。
ーーーミハイルは限界だった。
(まず、神殿に手紙を書かねば。この状況の報告と司祭を送って貰わねば)
ミハイルは自室に戻り、そして手紙を書くために机の方へ向かおうとした。
するとーーー。
「何が起きたのです?」
その声に思わず声をあげそうなほどに驚いた。
声の方に視線をやると、驚くことにルキが立っていたのだ。
恐らく診療所に行っていた間に訪れて来たのだろう。
(全く気配がなかった…)
「ルキ…?」
こんな明るい部屋でルキを見たのは初めてだった。
太陽の陽射しに髪や肌は透けそうな程に美しく、まるで人ではないように感じた。
「今…疫病が蔓延してます。早くこの街を出た方が良いです」
「ああ、なるほど。それで司祭様はそんなにお疲れなのですね」
そう言いながらルキはソファに座った。
「それで、どんな病なのです?」
(この男に話したところで、どうにもできないが…。話せば早く帰ってくれるだろう)
「発熱、嘔吐や下痢、血便といった症状です」
「……」
するとルキは腕を組み、真剣な表情をして黙って考え込んだ。
(あんな顔してどうしたんだ、一体…。)
「…助けが必要ですか?」
「そうですね。今から神殿に助けを求める手紙を書くところです」
「神殿の助けを待っていては早くて5日はかかるでしょう」
「…分かってます。忙しいので出て行ってくれませんか」
(…この男は何が言いたいんだ?)
ミハイルは疲労と寝不足で内心苛立っていた。
そして、自分の無力さ故に人々を救えないことで心が張り裂けそうだった。
(早く手紙も書かなくてはならないのに…)
「ーーー司祭様、私がお助け致しましょう」
ふいに聞こえてきた言葉に耳を疑う。
「助け…?」
すると、男はいつもの不遜な笑みを浮かべた。
「もちろん、私は神聖力などはありません。しかしお金だけは持っています」
ーーーそれは身なりを見れば分かる事たった。
ここに来る為か、控えめな装いだが上質なシルクのブラウス、胸元のクラバットのブローチはルビー、耳飾りは金で出来ている。
しかしお金を持っていても平民の、しかもこのような田舎の平民にお金を落とす貴族などいる筈がない。
今まで見てきた貴族たちは、神殿と言う権力に媚びへつらうだけだった。
「…どういう意味です?」
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