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15 救いの手 2
しおりを挟む「医者と薬を送りましょう」
「えっ…」
ミハイルは驚いた。
この国では神聖力が主な治療方法である。しかし万人が神聖力で治療することも出来ず、医者という存在も必要だった。
しかし医者になるためには、かなりの能力と莫大なお金が必要であり、結果として希少で貴重な存在となったのだ。
それ故に医者を抱えられる者は限られた。
この男…ルキが医者を手配できるということ、つまりそれだけの権力を持っているということーーー。
医者だけではない。
ルキは『薬草』ではなく『薬』と言ったのだ。
薬草は民間人でも調合できるが、薬となれば専門機関が作ったものとなる…。
「貴方は一体誰なんだ…」
「フフ…それはまだ秘密です。ですがタダではありませんよ」
「支払えるものなど…」
ミハイルがそう言いかけると、ルキはソファから立ってミハイルへと近付いた。
「…それ、わざと言ってます?」
「は、」
「あるでしょう、支払えるものが」
その言葉にミハイルはギクリとした。
ルキはミハイルの耳元に顔を近付けた。
「貴方の身体一つで街が救えるんです」
「身体なら、散々好きにしたではないですか…!」
ミハイルはカッなり答えた。
「いいえ、今度は貴方から誘われてみたいですね」
ミハイルは戸惑いが隠せず、思わずルキの顔を見た。
悪魔のような笑みをたたえる、美しい顔。赤く輝く、宝石のような瞳ーーー。
しかしその美しさはまるで獣に狙われた小鹿のように恐ろしく感じた。
(迷う事ではない。今にも消えそうな命がかかっているんだ。
それに…どちらにせよ私はもう純潔ではない…)
そして恐ろしく感じている筈のその瞳に、あの夜の熱を思い出す。
(私は…こんな時に何を思い出しているんだ…!)
ルキは無言となったミハイルを見て、フフ…と笑った。
「楽しみにしていますよ」
そう言うと、窓を開け窓辺で手を掲げた。
すると、どこからともなく空を舞って一匹の大きな鷲がルキの手に止まったのだ。
ルキは机で何かを急いで書くと、鷲の脚に結びつけ空へと放した。
ミハイルは驚きながらその様子を眺めていた。
(やはり、普通の貴族じゃない…)
「今日の夕方には人が集まるでしょう」
窓から入ってくる風で、ルキの髪がふわりと揺れる。
そしてルキは再び驚く事を口にした。
「司祭様、それまで手伝いましょう。ですから少しお休みください」
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